第8話 それなのに

特に母からは連絡もなく

私の『安静に』は『絶対安静に』に変わっていた。

そうして、安定期に入る頃には

病院で入院していた。


子の父親が、簡単に言ってしまえばクズで、

私は、なぜこんな人と結婚したんだろうと日々、悶々と考えていた。

が、子が出来た事は嬉しかったようで

『生まれたら、俺が風呂に入れる』だの

『子育ては任せておけ』と言っていた。

けれど、入院している私の所に来るときは、

金の無心ばかりだった。

いつまで入院生活が続くか判らないし、

さすがにこれはマズイと思い、私は母に連絡した。

しばらく前から入院している事、

いつ退院できるか判らない事、

まさか入院するとは思わず、まだ子供の物を何も用意できていない事。

しかし反応は薄く、なにも期待はできないな、と思った。


血管が弱くなり、点滴が1日ももたずに

打つ場所を変えなければならなくなったのを機に医者に相談した。

点滴ではなく、投薬で様子を見て欲しい事、

できれば生まれる前に1度退院したい事。


投薬で、安定していたこともあり

『安静にしている事』『場合によっては即入院する事』を条件に

なんとか脱獄に成功した私は、母に連絡した。

『もう大丈夫ですよ』という意味だったのだが

なぜか、母は、こちらに来ると言い出した。

しかも1週間も滞在するらしかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る