第6話 それならば
家事を押し付けられ、やらなければ怒られて。
家から逃げ出すと連れ戻された。
そこに座りなさい。
と、言われる場所は、決まって襖の敷居の上にだった。
説教が始まるのだ。
長くて退屈だが、時々物が飛んでくるので危険だった。
母は、いつも姉と2人で
姉が怒ると、母と一緒に
それは、まるでもう決まり事のように
『お父さんにそっくりで自分勝手』という呪文を繰り返すのだ。
4回目に家を出た時は、もう連れ戻される事はなかった。
19になっていたからか、それとも、その頃にはもうあまり家に居なかったからか。
理由は判らないが、とにかく『解放された』と思った。
何年かは連絡を取らずにいた。
その後、結婚する時連絡をした。
母は、こちらがビックリするぐらい喜んでいた。
今までが、嘘のように友好的だった。
離婚したいと相談に行った時、
母は、また、元の母に戻っていた。
そして『お父さんにそっくりで自分勝手』と切り捨てた。
元の母に戻ってしまった理由は、すぐに判った。
結婚した時には、姉が留学していたのだ。
淋しかったのだろう。
離婚の相談に行った時は、もう姉は帰国していた。
たぶん、そういう事なのだろう。
仕方がないので、また連絡をたち
私は、東京からも旦那からも逃げ出したのだ。
困ったら逃げる。
それが、私が唯一できる防衛手段だったからだ。
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