第3話 そのとき

母が泣き暮らし、私が罪悪感に苛まれていた時。


私には、年子の姉がいる。

近所でも評判の可愛い子だった。

名前を『寧々』という。

優しく、可愛い寧々ちゃん。

特にリーダーシップを取る訳でもなく

だが、お友達には人気があるようだった。

授業態度も良く、成績も良く、先生受けも良かった。

出来の悪い妹の面倒をよく見て、良いお姉さん。


母が泣き暮らしていた時も、私達は変わらずに学校へは行かされていた。

姉は、いつも通りの優等生で可愛い寧々ちゃんだった。


それ以外、この時の姉の事は記憶にない。

たぶん、何もしなかったのだろう。

『悪いのは雨月だ。雨月がどうにかすればいい』

たぶん、そんな感じだろう。

いつも通り学校の宿題をして、お友達と遊んでいたのだろう。


泣き暮らす母を見て

『雨月は、本当に勝手だ。雨月のせいだ』

ぐらいは思っていたかもしれないが

姉がした事は、きっと母を慰めただけだろうと思う。

放り出された家事は、姉の目には映らないのだ。

そして、『悪い子の雨月』が、それをやるのが当然なのだ。

自分は、何も悪い事はしていないのだから、

それらは、自分がやる事ではないのだ。

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