第2話 それから
父が『単身赴任』で家を出てから。
母は、『家族なのだから』や『家族は協力しないと』と
頻繁に口にするようになった。
違和感を覚えつつも、母に従った。
小学校2年の時に、万引きをした。
当時は、軽い気持ち程度の感覚だったが、
今にして思えば、母に覚えた違和感への抵抗だったのかもしれない。
が、万引きがバレた時の、母の嘆き様はすごかった。
毎日毎日、泣いて暮らすのだ。
それは、もう絵に描いたように、それしかしないのだ。
食事・洗濯・掃除・・・すべて放りだして
ただ、泣いているのだ。
見かねた近所のおばさんが、母を慰め
家の事を手伝ってくれた。
私も、罪悪感から、それを手伝った。
半月以上も母が泣き暮らす生活は続いた。
私は、何度も母に謝罪し、そのたびに罪悪感が増した。
万引きをした事よりも、こんな状態の母にしてしまった事を
後悔し、罪の意識に苛まれ、家事を手伝った。
何かキッカケがあったのか、徐々にだったのかは
もう忘れてしまったが、母は1ヵ月ほどで元に戻った。
だが、私が少しでも聞き分けがないと母が泣くので
私は、私の思いつく限りの『子供らしい子供』を
演じるように心掛けた。
母や親戚、近所の大人、すべてに対して気を抜けなかった。
『子供へのからかい』『子供へのちょっかい』を
笑って真に受けて怒って抵抗して、やり返されて笑って。
正直、シンドイと何度も思ったが、
『母が毎日泣き暮らす』という拷問よりはマシだった。
大人が周りにいない時間は楽だった。
ただひたすら現実逃避を繰り返していた。
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