第39話 帰郷
(なんだこれ?ちょっとオンボロになっただけで、
あの頃とほとんど変わっていない・・・)
施設と云うよりは老朽化した廃墟に近いその建物は、
国道から数キロ入った山道へと続く、
細い道の片隅にひっそりと建っていた。
俺はマシーンから降り施設の敷地へと、
マシーンを押しながら入っていった。
そして俺はマシーンを施設の小脇に停め、
切れかかった電灯の下に照らされた玄関の前に立ち
「失礼する!」と大きな声で云い放ち一気に引き戸を開けて中に入った。
するとその奥からズボンを腰の下まで下げ、
オウムみたいな頭をした若い男が現れ
「園長先生ならまだいねぇ~よ!」
と俺に投げつけるように無愛想に云い放った。
俺はその彼に向い
「私に何か用かね?」と尋ねてみた。
「はぁ~?おっさん誰かに呼ばれてきたのか?」
「いや、、誰にも呼ばれてはいない。」
「・・・・??おっさん頭が逝かれているのか?
ここには何にも無いぜ!気持ち悪いから帰れよ!」
「私の頭はイカでは無い!
気持ち悪いのはキミのズボンの履き方である。」
「はぁぁ?!
おっさん自分の格好見て言ってるのか?
早く帰んないとぶっ飛ばすぞ!!」
「若いと云う事は勢いがあって実に良い!
よかろう私をぶっ飛ばしてみたまえ!」
「・・・・なんだと!!!このやろう~~」
そう云ってズボンを上手く履く事の出来ない若者は俺に拳を振り上げてきた。
俺はとっさに自分の頭をその拳に合わせて頭頂部でその拳を受け止めた。
「痛ててててぇ~~」
うめき声の後、ズボンを上手く履く事の出来ない若者は、
右手を上下にプラプラとさせ、その場にうずくまった。
「これで私の頭がイカではない事がわかったかね?」
「うっ、うるせぇ~~」
すると廊下の奥の方から「どうしたの~?」
と云って聞いた事のある様な声の主が玄関の方に走ってきた。
「あっ!変態オジサンだ!」
「あっ!キミか!どうしたんだ?
援助交際なら断った筈であるのだが・・・」
それを聞いたズボンを上手く履く事の出来ない若者は、
「援助交際?お前がこのおっさんを呼んだのか?
この気持ちの悪いおっさんはいったい何なんだ?」
と先ほど公園で出会った女学生にくってかかった。
「違うわよ!でもなんでオジサンここに来たの?」
「なんでここに来たかはわからないが、無意識のうちに来てしまったのだ。」
「うそ!!本当はワタシに会いたくて後を追いかけて来たんでしょ?」
「それは断じてない!私は人間には全く興味が無いのだ!
だからキミを追いかける理由も無いのだ。」
「なんだぁ~ちょっとつまんないの~」
するとその会話を聞いていた、
ズボンを上手く履く事の出来ない若者が
「人間には興味が無い?おっさん宇宙人なのか?」
「そうだ!宇宙人ともいえよう。」
「やっぱりキチガイだな!」
「そうだ!ここは今となっては私にとっては基地外とも云えよう!」
「・・・・・やっぱり、このおっさんガチでキチガイだ・・・」
そう云い残しズボンを上手く履く事の出来ない若者は、
何やらブツブツと独り言を云いながら奥へと消えて行った。
女学生は俺の姿をマジマジと見つめながら
「ワタシの部屋に来る?」
「別に私は構わぬのだがよいのかね?」
「いいよ!さぁ上がって、
でもちょっとその格好じゃ、
気持ちの悪いものが目に入ってくるから、
ちょっと待ってて・・・」
そう云って女学生は奥へと消えていき、
数分後に戻ってくるなり「これに着替えて、、。」
とゴムの伸びきったピンクのショートパンツと、
ネズミの描いてあるTシャツを俺に手渡した。
「着替えたら入ってきて。この廊下の1番奥の右側の部屋ね。」
そう言い残し女学生は奥へとまた戻っていった。
かなり窮屈ではあったのだが、
俺は女学生から手渡された服に着替え、
女学生から云われたとおりの一番奥の部屋へと入っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます