第38話 無償の愛
「お前チラシ全然減ってないじゃないかよ!」
「もちろんだ!寝てたのにどうやって配れと云うのだ!」
「そう云う問題じゃないだろ!ケメコに叱られるぜ!」
「なんで私を巻き込むのだ!
私は人間相手の仕事なんかしたくないのだ!」
「だって、、、ケメコがよぉ~」
「だってもへったくれもないだろう~
ケメコ、ケメコって弱みでも握られているのか?」
「弱みなんてないけどよぉ~」
「だったら惚れているのか?」
「バカ言ってるんじゃねぇ~よ!
俺はこう見えても一途なんだ!」
「園長先生か?もうとっくに還暦を超えてるんじゃないのか?」
「あぁ~来月で68歳だ」
「そう云うのをママポンとか云うんだろ?」
「ははは~マザコンのことか?
ビニール人形しか愛せないお前に、
とやかく言われる筋合いはねぇ~よ!」
「下品な事を言うものではない!
私たちは不思議な力で通じ合っているのだ!」
「う~ん・・・
だったらケメコはどうするんだ?
アイツお前に惚れてるぜ!」
「ケメコが私に?
そんな事は天と地がドラえもんになっても有り得ない事だ!
だいたいアイツの男癖の悪さのおかげで、
私がどれだけの迷惑を被ってきたのかお前だって知ってるはずだ。」
「お前は本当に鈍感だなぁ~
アレはケメコのお前に対する愛情表現だよ!
あれだけのイイ女が今まで誰にも股を開かなかったんだぜ!」
「なんでそんなことがお前にわかるんだ?」
「ケメコがトラブルを起こした男どもは全員、
俺がとっちめて吐かせた情報だから嘘じゃないと思うぜ。」
「なんでお前ケメコにそこまで肩入れするんだ?」
「だからよぉ~養護施設を出る時に園長先生からケメコと俺は、
とても社会に適応出来無さそうもないお前の事を頼まれたんだよ!
だから俺はお前を守る為に刑事になったんだ!
そうじゃなけりゃお前5~6回はブタ箱の中に入ってたと思うぜ!」
「どういう事だ!なんなんだ!
だいたいケメコだってあの頃からハチャメチャしてたじゃないか!」
「ケメコは人間の枠の中でのハチャメチャだろ?
お前のイカレっぷりとは種類が違うんだよ!」
「種類?なにが種類だ!恐喝元刑事のくせして偉そうに言うなよ!
ケメコだって男から金ばっかり巻き上げて、
挙げ句の果てにトラブル起こしてるんだろ?
私が一番マトモじゃないのか?」
「俺はともかく、ケメコは違う。」
「どこが違うんだ?」
「ケメコはお前のマンションの家賃を払う為にやってたんだ・・・」
「なに?家賃?あれはケメコが宝くじに当たって買ったけど、
気にいらないから私に住めって言ったんだぞ!」
「お前さぁ~そんなオイシイ話を信じていたのか?
あのマンションは公園に寝泊まりして、
子供たちから石を投げつけられていた、
お前の為にケメコが無理して頼み込んで借りたんだよ!」
「・・・・・・・・」
「今日俺がお前に話した話は、
絶対にケメコには内緒だぜ!」
俺はそんなこと・・・・
そんなこと・・・
・・・・・・・
「なんだよ!!!お前もケメコも・・
俺・・・じゃない・・・私の事をいつまでも子供扱いしやがって!!
カッコつけてるんじゃねぇ~~よ!おおばかやろぉ~~~」
俺は居た堪れない気持ちになり、
マシーンのカゴの中にあったチラシを、
俺の事を崇拝してやまぬ元刑事に向かって投げつけ、
すっかりと日の暮れた道をあても無く走り続けた。
ケメコが・・・
俺の事を・・・
辛辣な思いで胸がはちきれそうになった俺は、
さらに走り続け気が付いた時には幼年時代から少年、
そして青年に至るまでを過ごした養護施設の前に忽然と立っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます