第37話 パーフェクト童貞
再度の沈黙の中カラスが啼いた
そして女学生はまた口を開いた
「オジサン人間嫌いなの?」
「嫌いではないが興味もない。」
「死にたいと思った事は?」
「残念ながら私にはそんな事を考える、
心の強さを持ち合わせていない。」
「死にたいって考えてる人って強いの?」
「キミは死にたいって誰かに言っているんだろ?」
「うん。」
「人間は死にたいって誰かに口に出した時点で、
心の中では必死に生きようとする強さを蓄えているのだ。」
「ふ~ん。なんだか難しくて、よくわかんないんだけど・・・」
「別に解らなくてもよい事だ。」
「ふ~ん。そうなんだぁ~」
暫くの無言の後、女学生は目先を少し上にあげてさらに俺に
「オジサンって援助交際とかするの?」
「しない。」
「ワタシとする?」
「馬鹿者!私は援助されてまで、
交際してもらうほど落ちぶれてはおらん。」
「はぁ?オジサン、、逆よ!
オジサンがワタシに援助するんだよ!」
「つまりキミを私がお金で助けて、
その代わりに友達になると云う事かね?
そんな面倒な取引なら断る。」
「あのね~オジサン原始人?
エッチよ!エッチ・・・
でもワタシがもし援助はいらないって言ったらするでしょ?」
「エッチとは生殖行為の事かね?
私にはまだ早すぎるから遠慮しておこう。」
「えっ?まだ?早すぎる?オジサン童貞なの?」
「私の前に道は無し・・・」
「なにそれ?」
「道程だ!」
「マジなの?一回もした事無いんだぁ~」
「読んだ事はある。」
「ふ~ん。結局、経験はない訳ね!」
「経験なんて関係ないのだ!道程とは私の生きてきた証なのだ!」
「はぁ?」
「私こそがパーフェクト道程なのである!」
「パーフェクト童貞って・・・
オジサンそんなこと威張れる事でもないと思うんだけど・・・」
「まぁいい。キミにも私の凄さが、
理解できる時がそのうち来るだろう。」
「あのぅ~理解したくないんですけど・・・」
そう云って女学生は初めて俺の方を向き、
俺に向かって悪戯っぽい笑顔で微笑んだ。
そして俺も女学生にピースサインだけを送った。
「あ~あ。何だかオジサンといたら、
悩んでいる事が馬鹿らしくなってきたよ~
じゃぁワタシそろそろ帰るねぇ~」
「あぁ~気をつけて帰りなさい。
それと今度死にたくなったら、
援助珈琲を出してあげるから、ここを訪ねるがよい。」
そう云って俺は女学生にチラシを一枚手渡した。
「は~い。でもこのチラシそこら辺でオジサン拾ってきたんでしょ!」
そう云い残し女学生はバイバイをしながら自転車に乗って去って行った。
もう夕暮れである。
俺も帰ろう・・・
しかしここは何処なんだ?
そう思い周りを見ていると、
俺の事を崇拝してやまぬ元刑事が、
公園の向こう側を歩いている。
これぞまさしく天の助けである。
俺は俺の事を崇拝してやまぬ元刑事に
「お~い~」と声をかけ、
奴の所にマシーンを押し足早に駆け寄っていった。
「お前こんな所で何をやってるんだ?」
「実は迷子になった・・・」
「迷子?迷子ってここはお前のマンションの裏にある公園だぜ!」
「なぬ!!!」
驚いた
心底驚いた・・・
狐につままれるとはこの事である。
俺は九九を数えながら何度も道をまわっているうちに、
結局自分のマンションの裏の公園に辿りついていたのである。
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