第30話 飛べないスーパーマン


もう彼女のオペは終わっていることだろう・・・


俺を崇拝してやまぬ刑事が、

彼女が無口なことをいいことに、手を出さぬとも限らない。



早く帰らねば・・



そう思った矢先である!



プスプス・ぷすぅ~~



エンジン付き2輪マシーンがガソリンを全て使いこなし、

放屁して力尽きたのである!



イカン!



マンションまでは此処からまだ5キロ以上はある!



まてよ!



今日の俺はスーパーマンである!



飛ぼう!



いや!飛ぶしかないんだ!



そう固く心に決めた俺は、

大きく両手を天に向かってVの字にひろげ、

横断歩道の真ん中で



「とぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」



あれ?



おかしい?



信号待ちをしていた車の中のカップルが、

信号が青になったのにもかかわらず笑い転げている。



何故なんだ?どうしたんだ?



俺は取り敢えずエンジン付き2輪マシーンを、

引きながら歩道へと渡り、何がいけなかったのか考えた。



すると俺の横をチラチラ見ながら通り過ぎようとした、

母親らしき女性に連れられた黄色い帽子をかぶった子供が、



「ママ!あのスーパーマンのおじちゃんパンツはいてないよ!」


と云ったのである!



あっ!そうか!



そうだったのか!



俺は失禁したコンビニの清楚な女店員に、自分の履いていた

赤いマイクロビキニのブリーフをあげてしまったのである!


母親らしき女性は子供を抱えるように、

小走りに去っていこうとしている!



緊急事態だ!



「オイ!ちょっと待ってくれ!」


俺はその母親らしき女性に声をかけた。



するともの凄い勢いで、



「なんですか!!警察呼びますよ!」


と俺を睨み付けたのである。



「違う!私はただ頼み事がしたいだけなのだ!」



「いったいなんなんですか!!」



「奥さん!アンタいま何色のパンティを履いているんだ?」


すると母親らしき女性に抱えられた子供が、



「ママは真っ赤なおひものおぱんちゅだよ!」と即答した。


俺はその言葉を聞き、即座に母親らしき女性に、



「私に今履いている奥さんのパンティを貸して欲しいのだが・・」



すると真っ赤な顔をしていた母親らしき女性の顔は、

さらに鬼の形相に変わり


俺のまだ治りきってない足を突然蹴り上げた。



「ぎゃあぁぁぁ~~」



俺はバランスを崩しエンジン付き2輪マシーンと共に道路に転がった。



「なによ!この変態!!!あ~キモチワル!」


そう言い残し小走りに子供を抱えるように引きずり去って行ってしまった。



照れているとは云え、酷い言葉使いである。



仕方ない!



こうなったら赤いブリーフを買おう!



俺は痛む足を引きずりながら交差点角にあった

「本・CD・DVD高価買取」と云う看板の店に入っていった。



「いらっ・・・しゃ・・・・・きゃあぁぁ!!!」



レジにいた若い女はスーパーマンが突然入ってきた事に興奮し、

黄色い奇声をあげた。



すると嫉妬でもしたのであろうか、

奥の方から店長らしき男が俺と彼女の方に走ってやってきた。



「どうしたんですか!!」



「店長・・このお客さん・・」



そうレジにいた若い女がそう云うと、

店長らしき男は俺を上から下まで舐めまわすように見て、



「お客さん困ります!」


俺は意味が解らず、



「困っているのは私だ!これを買い取ってくれ!」


と云って親分から預かった【おかあさんとバナナごっこ】

の名目のDVDを店長らしき男に差し出した。



「お客さんいい加減にして下さいよ!

だいたい当店では裏モノのDVDなんて買い取れません!帰って下さい!」



「そうか・・ダメか・・

じゃあこの辺で赤いパンツを売っている店は何処にあるのだ?」



「赤いパンツ?知りませんよ!そんなもの・・」



「じゃあいい!そこにある赤いガムテープを譲ってくれ!」



「いいですが・・すぐに店から出て行ってくれますか?」



「あ~約束しよう!」


俺の言葉を聞き店長らしき男は、

渋々俺に赤いガムテープを手渡してくれた。



(よし!これで大丈夫なはずだ!)


俺は店から出てすぐに赤いガムテープを相撲取りがまわしをするように、

下半身にグルグルと巻き付け再び両手をVの字にひろげ、


「トぉォォォぉ!!!!!ト・とぉォォぉ!!!!!!!」



(何故だ!なぜなんだ!)


何度やっても飛ぶことが出来ない!


俺は愕然として膝をついた。



その時である!



前方から俺のマシーンに乗ったケメコが凄いスピードで走ってきたのである。






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