第29話 裏切りの結末


俺は無事に任務を果たし帰り道を急いだ。


商店街を抜けマンションへと続く道を左折しようとした途端、

角のコンビニの前に沢山の人だかりが出来ていた。


パトカーも数台止まっている。



(何があったんだ?)



俺はエンジン付き2輪マシーンを側道に停め、

人だかりの最後列にいた商店街の魚屋のオッサンに、

「何があったんだ?」と尋ねた。



「強盗が女店員を人質に立てこもっているんだってよ!」



「それは本当か?」



「あぁコンビニ強盗らしいぜ」



「違う!女店員っていうのは本当か?」



「・・あっ・・そうだけど・・アンタに関係あるのか?」



「私には全く関係が無い!」



「・・・・・・・・・・・」



「これは私の出番だな!」



「はぁ?危ないから首を突っ込まない方がいいと思うが・・・」


俺は魚屋のオッサンを無視して人ゴミをかき分け最前列へと出た。



警察官が何やら集まって話をしている。


俺は立ち入り禁止の黄色いテープをまたぎ、

何の躊躇もなく誰かがそこに停めておいた、

ママチャリなるマシーンを担ぎ上げ、

コンビニの玄関に思いっきり投げつけた。



ガシャ~ン!!!


俺はあっけにとられている警察官達に、

俺に任せろと云わんばかりにピースサインだけを送り、

犯人が立てこもっている店内へと入って行った。



「オイ!なんだてめぇは!!」



「ターミネーターだ!と言いたいところだが今日はスーパーマンだ!

人質を解放しろ!事件は現場で起こっているんだ!室井くん!」



「は~ぁ?なにを訳の解らねぇ事をゴタゴタぬかしてやがるんだ!

この人質がどうなってもいいのか!」


そう云って犯人は刃物をちらつかせた。



「キミは歳はいくつだ!」



「はぁ?そんなことどうでもいいだろ!」



「アンタは黙っていろ!私はその清楚な女性に尋ねているのだ!」


清楚な女店員は怯えて声も出せないらしい。


その様子を見て犯人が唐突に口開いた・・・



「・・・・お前は頭がおかしいのか?」



「う~ん、いかんなぁ~、その刃物じゃ~、

いまいち凶器としてはスケールにかけるなぁ~

オイ!その刃物を私に渡してこれに持ち替えろ!」



そう云って俺は親分から貰った拳銃を犯人に差し出した。



「そんな手に誰がのると思うんだ!それオモチャだろ!」


「本当にそう思うのかね?」


俺は強盗にそう言って拳銃の安全装置を外し



バーン!!



俺は犯人の真横にあったガムが並んであるケースに向かって、見事に拳銃をぶっ放した。



「きゃぁぁぁぁ!!!!」


「ひえぇぇぇぇ!!!」


犯人と清楚な女店員の見事なハーモーニーが店内にこだました。



「早くこの拳銃に持ち替えろ!」



そう言った途端、犯人は「助けてぇ~」と言いながら、

人質の清楚な女店員ほったらかし、

店外に逃げていき警察官たちに取り押さえられた。


腰が抜けたらしくその場で震えて失禁している清楚な女店員に、

俺は優しく手を差し伸べたが、清楚な女店員は錯乱して、

床に落ちたガムを俺に投げつけてきた。


俺は仕方なく自分の履いていた、

真っ赤なマイクロビキニのブリーフを脱ぎ、

清楚な女店員の目の前に置き、


「キミが失禁した事は私との永遠の秘密にしておこう、

それに履き替えて帰るがいい・・」


とだけ言い残しコンビニの外に出た。



そして取り押さえられている犯人に「忘れものだ!」と云って、

親分から貰った拳銃を犯人の足元に投げた。


犯人は警察官に「違う!この拳銃は俺のじゃない!」

と何度も訴えていたが、俺がやると決めた時点で、

所有権が犯人に譲渡されたわけで、「アンタのものだ!」

ともう一度男気を見せて犯人にきっぱり拳銃を譲ってやった。


「コンビニ拳銃強盗犯確保」と警察官が無線で誰かに報告していた。


少しニュアンスは違うと思ったが、

俺は敢えてそんな重箱の隅をつつくような、

訂正をするような小さい男ではない。



さて・・ヒーローに長居は無用だ!


俺は何もなかったかのように遠くから聞こえる

「ちょっと待ちなさい!」警察官の制止を振り切り、

エンジン付き2輪マシーンに乗りマンションへの帰路を急いだ・・・





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