第28話 隠された取引
怒り狂った子分はいきなり俺に殴りかかろうとしてきた。
その時である!
「やめておけ!お前に勝てる相手では無い!」
と親分が子分に向かって一喝した。
「えっ!カシラ!なんでです?こんなキチガイ一発で倒せますぜ!」
「もういいからお前は事務所の掃除に戻れ!」
「へ、へぇ!でも・・」
「いいから行け!」
「へ、へぇ!じゃあアッシはこれで・・・・
オイ!キチガイ!カシラになんかしやがったらタダですまねぇ~からな!」
そう吐き捨て子分は俺を睨みつけて、トボトボと事務所の裏へと戻っていった。
黙って事の成り行きを見ていた俺に、親分はボソッと口を開いた・・・
「なんで解った?」
「なにがだね?」
俺は質問の意味が理解出来ず親分に尋ねた。
「カツラだ!なぜこの10数年間、
誰にもバレなかった俺の髪がカツラだと一瞬で見抜いたのだ?」
「それはアンタの子分が俺に教えたからだ!」
「そんな嘘はいい!何故解ったのだ?」
「だから耳で解ったのだ!」
「耳?耳元の生え際で解ったのか?凄い洞察力だ!」
「そんな事はどうでもよい!私は忙しいのだ!拳銃を早く出せ!」
「拳銃?お前は何者なんだ?」
「見て解るだろ!私はスーパーマンだ!」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「お前、誰に頼まれて来た?」
「こいつだ・・」
俺はそう云って、俺の事を崇拝してやまない刑事から預かってきた警察手帳を親分に提示した。
「なるほど・・あの恐喝刑事のまわし者か!お前も警察の者か?」
「私は超極秘任務にかかわっているだけで警察の者では無い!」
「こんな所に1人で来て怖く無かったのか?」
「私が怖いのはお化けとミミズだけだ!」
「ほぅ~度胸の据わったいい兄さんだ!
どうだいこの俺の顧問を引き受けてくれないかね?」
「アンタの肛門を引き受けろ?
私にはそんな趣味は無い!
それだけは勘弁してくれ!」
「顧問をすれば、食いっぱぐれは無くなるぞ!」
「私はアンタの肛門を世話してまで、食って生きたいとは思わぬ!」
「それは残念だ!またいつでも遊びに来たらいい」
「オイ!ごまかすな!拳銃を出せ!」
「あのなぁ~兄さん・・拳銃だせ!って云ったって、
はいどうぞ!って差し出す奴がいると思うのか?」
「私なら出せる!」
「なら出して見せてみろ!」
俺はその言葉と同時に股間をまさぐり緑の水鉄砲を出した。
「ほら出したぜ!アンタも出せよ!」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「はっはっはっ~まったく面白い兄さんだ!解ったちょっと待ってろ!」
そう云ってカツラの親分は事務所の奥へと入って行った。
数分後戻ってきた親分は何やらDVDらしきモノを持って現れた。
「何だそれは?」
「兄さん、あのロクデナシの恐喝刑事に頼まれて来たんだろ?」
「あ~そうだが・・それは拳銃では無い!」
「いいんだこれで・・あのろくでなしは拳銃なんて全く興味無いし、
何かとイチャモンをつけて結局これが欲しいだけなんだからよぉ~」
【おかあさんとバナナごっこ】
DVDのタイトルである。
「う~ん・・なまじっか嘘ではないみたいだな!」
「それを持っていけば兄さんの顔も立つだろう」
「わかった・・私は急ぐのでこれで失礼する」
「ちょっと待ちな!兄さんはこれを持っていきな!
その水鉄砲よりは役に立つと思うしな!」
そう云ってカツラの親分は茶色の紙に包まれた、
ズシリと重みのあるモノを俺に手渡した。
「じゃあ気を付けて帰りな!」
カツラの親分はそう言い残し、
俺に背を向け事務所の奥へと消えていった。
俺は鉄格子の門を再度よじ登り注意深く降り、
エンジン付き2輪マシーンに乗り込んだ。
(これはいったいなんなんだ?)
茶色の紙に包まれたズシリと重いモノの中身を見ると、
それは見事に黒光りした拳銃であった。
(あの親分粋な事をするではないか・・)
そう思いながら来た道を俺はまた戻っていった。
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