第27話 脅しの切り札


午前7時である!


今日の俺はスーパーマン気分なのである!


俺はシャワーを浴び超極秘任務を遂行するが如く着々と準備を進めた。


全身を映す鏡の前でポーズをとってみる。



青のスーパーマンTシャツ



真っ赤な超マイクロビキニパンツ



肌色のケメコのパンスト



黒いナイロン靴下



先のとがった白のエナメルの革靴



首には黄色のスカーフ



頭にはピンクのシャンプーハット・・・




これ以上ない完璧さである!



オッとイケない!


相手は人間社会のクズとは云えども強敵である!


一応股間には風呂場で彼女を洗う時に使っている、

緑の水鉄砲だけは忍ばせておこう。


足の痛みは若干残っているが、これぐらいのハンデは相手に与えてやろう。



準備に手を費やし午前9時を少しまわっている。



(そろそろいくか・・)



俺は玄関を出て階段で下まで降りた。



いくら超特殊任務とはいえ超ストイックな俺は、

決してエレベーターは使わない。



それが男の美学と云うものだ!



俺は朝方乗ってきたエンジン付き2輪マシーンに乗り込んだ。



「ぶる~~んぶろろろ~~ん~~」



おっと!イケナイ!


これはエンジンの音を口で発しなくてもよいタイプであった!



俺は一回エンジン付き2輪マシーンから降り、

24階の部屋まで階段で戻り玄関を出るところからやり直した。



(時間が無い!急ごう!)



俺はエンジン付き2輪マシーンに再度乗り込み、

ここから10キロ程離れた繁華街のど真ん中にある、

黒猫組の事務所を目指した。



途中、行き交う人達が振り返ってまで俺の事を注目している。



一緒に写メでも撮ってやりたいが、なんせ今日は超特殊任務である!


熱いまなざしを振り切って、俺はエンジン2輪マシーンを黒猫組まで走らせた。



そして俺は遂に黒猫組の事務所に辿り着いたのである!



鍵の掛かっていた鉄格子の門を乗り越えると、

監視カメラが作動したせいか、

事務所の玄関からツルッパゲの頭に蛇の刺青をした、

子分らしき若者が俺の前に飛び出て来た。



「なんだ!てめぇ~は!」



「見て解らぬか!私はスーパーマンである!」



「はぁ~?てめぇ~そんな恰好してキチガイか?

さっさと帰らねぇ~と痛い目に合わせるぞ!」



「ところで質問だがキミは何故黒猫組なのに、

頭に書いてある絵は蛇なのかね?」



「あのなぁ~オッサン!そんな事はどうでもいいんだよ!とっとと帰れや!」



「帰ってもいいがキミに吉野家の50円割引券2枚が弁償出来るのかね?」



「牛丼??オッサンなんなんだ?俺に因縁をつけているのか?」



「べつに牛丼にインゲンを付けて欲しいとは言っていない、

私は割引券の事を言っているのだ!」



「はぁ~?インゲンもヘチマもある訳ないだろ!

割引券か何だか知らねぇ~がくだらねぇ事ばかり云ってるとタダですまねぇ~ぞ!」



「ヘチマは嫌いだ!それに私はタダで牛丼を食べたいと云っているわけではない!

たとえ割引券があったとしても残金はちゃんと支払う所存である!」



「あのさぁ~オッサン結局何が言いたい訳?いい加減にしてくれよ!」



「じゃあ超特殊任務の概略を簡潔に述べよう。

取り敢えず拳銃を2、3丁出したまえ!

そうしたら割引券の件はチャラにしてやる!」



そう伝え終えると玄関の向こうから

「オイ!何をやってるんだ!」

と親分らしき人のドスのきいた渋い声が聞こえてきた。


「はい、カシラ!スミマセン!

こいついきなり表の門を乗り越えて入ってきて、

訳のわからない事ばかり云ってくるんですよぉ~」



するとその男が俺に向かって口を開いた。



「お前さん、ここが何処なのか解っていて乗り込んで来たのか?」



「ここがゴミにもならないクズばかりが生息している、

小汚いところだって云う事は知っているが・・

私が入って来て何か問題でもあるのかね?」


するとさっきまで俺の相手をしていた、

子分らしき男がいきなり怒鳴り声をあげた。



「なにぃ!!てめぇ~!!」



俺はとっさに右手を前に出し、



「キミは黙っていたまえ、

私はキミのカツラの人と話がしたいのだ!」


「カツラ??・・・・

てめぇ~カシラにむかって何言いやがるんだ!もう許せねぇ!」


現場は一気に緊迫した空気に包まれた。


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