第26話 大きな代償


「鍵?鍵なら海の中に沈んだ覆面パトカーに付いてると思うが・・」



「海に沈んだ?どういう事だ?」



「詳しくは知らんが私は少なくとも鍵は付けっぱなしにしておいた」



「まさか!お前、あの車を乗り回していたのか?」



「まさかではない!!

私が乗り回していて緊急事態に巻き込まれ、

海に落ちて犯人の変態警官は今頃取調室の中で、

かつ丼を食っている頃である!」



「はぁ?車は海に落ちたままか?」



「そんなことは知らん!同僚にでも聞きたまえ!」



「あのなぁ~

あの車の中には吉野家の50円割引券がまだ2枚残っていたんだぞ!

お前どう責任を取るつもりだ!」



「私はそんなこと知らん!

きっとケメコと二人で私に悪戯をした天罰である!」



「馬鹿やろ~お前逆の立場だったらどうする?50円の割引券2枚だぞ!」



「それは耐えられない苦痛だ!」



「だろ?だったら責任を少しは感じて何とかしろよ!」



「何を私にしろというのだ?」



「超極秘任務だ!」



俺は極秘任務と云う言葉の響きに弱い。


しかも超極秘なのである!


断る理由はそこに存在しない。



俺は奴に、はやる気持ちを悟られぬ様


「案件は何だ?」と低い声で尋ねた。



「これをお前に渡すから俺の代わりに黒猫組の事務所に行って、

拳銃を2、3丁押収してきて欲しいのだ!」


そう云って俺を崇拝してやまぬ刑事は自分の警察手帳を俺に手渡した。



「わかった私が引き受けよう!

しかしこれで割引券の件は恨みっこだしだ!いいな!」



「おぅ~恨みっこなしだ!今日の昼過ぎまでには頼むぜ!」



「昼過ぎ?それは無理だ!

私は彼女のオペで自転車屋に行かなければならないのだ!」


「パンク修理か?いや、オペは俺がちゃんとやっておくから、

心配せずにとにかく行ってきてくれ!」



「わかった!その代わり口が聞けないからと云って、

彼女に変なことをしたら許さないからな!」



「あ~了解だ!あっ!それとヘルメットに全裸じゃ危険だからよ~

フライパンぐらい持って行けよ!」



「私に心配は御無用!

こんな日のために用意しておいたスーパーマンTシャツがあるのだ!

ブリーフの下に履くタイツはそこに脱いであるケメコのパンストを代用させて頂こう」



「デビルマンじゃないのか?まぁ何でもいいから早く変身して出かけてくれ!」


奴はそう言い残し風呂場で静養させていた俺の彼女を小脇に抱え、マンションから出て行った。





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