第25話 ボロボロになりて候


(さてこれからどうする・・)


そう思いながらしばらく歩くと、

先ほど俺にぶつかって川に突っ込んでいった、

二人組の暴走族の乗っていたエンジン付き2輪マシーンが、

ガードレールの脇に横たわり倒れていた。



(あの二人は何処にいったんだ?)


周りを見渡したが気配が無い。



俺はエンジン付き2輪マシーンを起こした。



鍵が付いている・・



何とか操縦できそうである。



俺は彼女の手を首にくくり付け、

置き去りにされたエンジン付き2輪マシーンのエンジンをかけてみた。



ぶろろろ~~ん~~ぶろん~~ん~~



よし!エンジンは生きている!



足を使わなくても大丈夫な形のエンジン付き2輪マシーンである!



ヘルメットも被っている。



彼女も首にキツク手を巻き付けているので、

風に飛ばされる心配もないだろう。



もうすぐ夜明けだ!



これで帰るしかない!



そう決めた俺は一目散に来た道を走り出した。



彼女はまるで、俺のマントと同化したのではないのかと思うぐらいの喜びようで、風にその身を任せバタバタと音を立て舞っている。



素っ裸の俺に当たる風も心地よい。



途中ですれ違った車が2台ほど急ブレーキをかけたが、

それは俺の走る姿があまりにも決まり過ぎていて、

映画のロケか何かと勘違いしたのであろう。



モテる男はどこにいても注目されてしまう・・



全く困ったものだ!



そして俺は夜明け前寸前に、ようやくケメコと俺を崇拝してやまない刑事が滞在している俺のマンションに辿りつくことが出来た。



俺はエンジン付き2輪マシーンを降り、

ヘロヘロになりながらも俺は24階までの階段を上り、

マンションの玄関で鍵を開けようとした。



その時である!



イカン!



俺は決してしてはならぬ重要な過ちを犯した事に気がついた。



(玄関の鍵がない!)



きょえぇ~~~~~



すべてやり直しである!



そう思い海に引き返そうとしたその時・・・



ガチャガチャ



眠たそうな顔をしたケメコが俺の部屋から出てきたのである。



「アンタ裸にヘルメット被って何やてるのよ!

アタイ配達に今から行って来るから邪魔なの!

そこどきなさいよ!このイカレポンチの変態男!」



「なにがイカのポテチの変身オタクだ!」



「はぁ?2、3回死になさいよ!」



そう吐き捨てケメコはエレベーターに乗り込み行ってしまった。



それにしてもこの様な場合どうすればよいのだろう?



すべてが完璧な俺は、朦朧とする意識の中しばし考えた。



(俺はやり直さなくて、このまま部屋に入ってもいいのだろうか?)


一瞬そう考えたが背中に背負っている彼女を、

これ以上風にあたらせては危険だと判断し、

俺は仕方なく玄関の中に入る決意をした。



玄関の中に入ると俺の事を崇拝してやまぬ刑事が、

リビングをウロウロとしていた。


俺は彼女を風呂場に置き、

リビングへと行き「どうしたんだ?」と尋ねた。


すると俺の事を崇拝してやまぬ刑事は、

俺には視線は送らず絨毯に視線を落としながらおもむろに口を開いた。



「おう!朝帰りか?俺の車の鍵を見なかったか?」





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