第24話 影武者


俺は大丈夫だというのに酸素マスクを被せられ、

訳の解らぬ器具を体中に付けられた。


すると頭の向こうの方から

「あの覆面パトカーで海に落ちた刑事さん行方不明らしいわよ」

という声が聞こえてきた。



(なるほど!そういうことか・・)


あの変態警官達やこの車の救急隊員達は、

俺の事を崇拝してやまぬ刑事が、

覆面パトカーに乗っていたと勘違いしているのだ。



(これは俺に悪戯をした天罰だ!ザマーみやがれ!)


そう思いしばらくはニタニタしていた俺だが、

ふとある疑問が頭を横切った。


アイツが死んだ事になって刑事を殉職したらどうなるのだろう?



イカン!


これは非常にイカン!


ただでさえケメコと云う恐ろしい悪魔が部屋に棲みついているのである。


これで職を無くしたアイツまで棲みついたら・・



きょえぇ~~~~~


これは大至急誤解を解かなければ大変な事になる!


俺は酸素マスクを外し救急隊員に、



「オイ!その刑事は私だ!」


そう訴えた。


「えっ!本当ですか?」


驚いた顔で俺に問いかけた救急隊員に、

俺は事の経緯を事細かに説明した。


「本当だ!全裸のダッチワイフ略奪犯人を追跡していて、

海からサメに乗って逃げた犯人を追っかけている途中で、

彼女が犠牲になりそうだったので取り敢えず彼女を救出して、

変態警官に唇を強引に奪われたのだ!

ひょっとしたら犯人はあの変態警官かも知れない!」



「・・・・・・・」


救急隊員は正義感あふれる俺のハードボイルドな行動と推測に、

かなり感動して言葉を無くしている。



「オイ!私はここでいいから、海に戻りあの変態警官を逮捕するのだ!」



「・・・・・・・」



「何をグズグズしている!私を降ろし早く戻れ!」




「は、はい!でも一応確認のため刑事さんのお名前だけお聞かせ下さい」


俺は俺の事を崇拝してやまぬ刑事のフルネームを即座に答えた。


その後、救急隊員は無線で誰かとやり取りをしていたが、


俺に向かって


「大変失礼しました!」


「解ればいいのだ!早く私をここで降ろせ!そして変態警官を逮捕しろ!」


「しかし我々は職務が違うので・・」


「馬鹿者!これは緊急事態なのだ!」


「は、はい!でも刑事さんは・・」


「私はその彼女をいち早く処置しなくてはならぬ!後はキミたちに任せたぞ!」


「えっ!彼女?」


「そうだ!彼女だ!オトコならわかるだろ!」


「は、い!でも刑事さん裸同然ですし、

身につけるものは?その恰好では・・」


「よし!ではそのヘルメットを貸せ!」


「えっ!・・・・・・」


「ヘルメットだ!緊急事態だ!早く貸せ!」


「は、はい!」



救急隊員は不思議そうな顔をしていたが俺の気迫に押され、

俺はヘルメットを頭にかぶり彼女を小脇に抱え救急車から飛び降りた。



「イタタター!」



「大丈夫ですか?」



「私の事はいいから早く行け!」



「は、はい!」


やっとの事で救急車は俺を降ろし今来た道を、

海に向かって引き返して走って行った。


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