第23話 噛み合わない歯車


あぁ~なんて温かくて、なんて柔らかい唇だろうか・・・


イカン!


俺には彼女がいる!



しかし・・


しかしぃ・・・


あぁ~


気持ちいいぃ~~


俺はあまりのスーパーテクニックKISSの誘惑に負け、

自らも相手の首に両手を巻き付け舌を入れレロレロしてしまった。


すると遠くの方から絶叫ともとれる声が聞こえてきた。



「やめろぉ~~オエぇ~~~はなれろぉ~~」



(なんだ?)


数秒後・・


誰かが俺を後ろから羽交い絞めにしようとしている気配を感じ、

それと共に俺は急激な嘔吐に見舞われた。



「げぼ~げこぉ~~~ぶはぁ~~~~」


目をあけると警察官の恰好をしたオッサンの顔がある。


そして俺の両手はその警察官の恰好をした、

オッサンの首元にしっかりと巻き付いている



(なんだ?なんなんだ?え~ぇ~~~)


俺の口づけの相手は、なんとこのオッサンだったのである!



何てことだ!


俺の怒りは、痛みや気持ち悪さを忘れさせ頂点に達した。


「オイ!お前!私に何をするんだ!

私が寝ているのをいいことに何て破廉恥な!

貴様のような変態は訴えてやる!ごほごほ~~おえぇ~~」



「お~~い~人工呼吸で意識を取り戻したぞ~~」


別の警官がなにやら大きな声で叫んでいる。



(ここは何処だ?何がどうなっているんだ?)



そうだ!俺は彼女と共に海へ落ちたのだ!


「オイ!私の彼女は何処だ?」


俺は俺の唇をどさくさに紛れて奪った変態警官に聞いた。


「彼女?あの縄に引っ掛かっていたシワクチャのビニール人形の事か?

それならそこのゴミ袋に縄と一緒に入ってるが・・」


俺はその言葉を聞き一気に顔から血の気が引いた。


足を引きずり変態警官の指差す方向に辿り着くと、

そこには無残な姿の彼女が瀕死の状態で乱雑に折りたたまれていた。



「オイ!大至急オペだ!自転車屋を呼んで来い!」


俺の緊迫感迫る大声に変態警官は俺を落ち着かせようとしたのか・・・


「はぁ?アンタ大丈夫か?

ところでアンタ舟から落ちたのか?

それとも釣り人か?」


と訳の解らぬ質問をしてきた。


すると横からまたさっきの警官が現れ



「捜索船を出しましたが未だ見つかりません!」


その言葉を聞き変態警官は俺になにやら尋ねてきた。



「アンタこの防波堤から車が落ちたのを見なかったか?」



「馬鹿者!私が落ちたのだ!」



「それは解ったが赤いサイレンが光った、

黒いセダンが落ちたのを見なかったか?」



「だから見たと云うより私が落ちたといっているだろ!」



「アンタが落ちたのはよ~く解った!

アンタ以外にうちの所轄の刑事が、

岸壁から海に落ちたのだ!」



「あ~あいつなら俺のマンションで酔っ払って寝ているぜ!」



「・・・もういい!もうすぐ救急車が来るから、

アンタは一応それに乗って行きなさい!」



「もちろん彼女も連れて帰るぜ!」



「好きにしなさい!」


そう言葉を吐き捨て変態警官は何処かに行ってしまった。



10分程して救急車が到着した。


俺は彼女を自分が羽織っていた毛布に大事にくるみ、

別の警官に促されるまま救急車に乗った。

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