第21話 死へのピットイン
俺は海へと続く国道をサイレンを鳴らしながら車をひたすらぶっ飛ばした
速度計の針は時速40キロを超え50キロに達しようとしている。
俺愛用の2人乗りマシンを遥かに凌ぐスピードである。
窓を開けた彼女の頬を風がパタパタと音を立て、彼女も気持ちよさそうである。
道は片側一車線に変わったため俺の後ろを、
応援要請のパトカーが何台か追っかけてきている。
奴らも俺のマシンのスピードに少し恐れをいだいているのであろう。
やたらと後ろからパッシングをして合図をしているが、
俺は決してスピードを落とさなかった。
これは緊急事態なのだ!
その時である!
左前方のコンビニから20台ほどの暴走族と敬称されている、
エンジン付き2輪マシーンに乗った若者たちが、
俺の目の前に出てかなり遅いスピードで蛇行運転をしながら、
俺の行く手をふさいだのである。
俺はクラクションを鳴らしたがいっこうに道をあける気配がない。
(仕方がない!これは緊急事態なのだ!)
俺は一番後ろで何やら棒を振り回している、
二人乗りの若者の真後ろにピタリと車を着け、
「でび~~~~る~あたっ~~くぅ~~」
の掛け声とともに一気にアクセルをふかし車ごと突撃を食らわせた。
二人乗りの若者たちはぶつかった勢いでハンドルを切り損ね、
ガードレールを飛び越え、横を流れる川に突っ込んでいった。
(許せ!これは緊急事態なのだ!)
俺の前を走る若者たちも、その気配に気が付いた様である。
信じられないという表情で若者たちが俺の車を取り囲んで、
何かを叫んでいたがきっと緊迫した俺の状況を察したのであろう。
俺の姿を直視した途端に若者たちの顔は驚きの顔に変わり、
反対車線に出て方向を次々と変え、
Uターンをして逃げて行ってしまったのである。
さらに15分ほど走ったであろうか?
海はもう目の前である。
しかし追跡者は結局見当たらなかった。
(ガセネタだったのか?)
まぁいい・・とにかく俺の任務は終わった。
そう思いながら彼女との会話を楽しもうと、
防波堤に車を停めようとしたその瞬間、
目の前を一匹の白猫がいきなり飛び出してきた。
(イカン!)
俺は慌ててハンドルをきり間一髪猫を避けブレーキを踏んだ。
きききき~~~ぶお~~~~~ん~~ぶばお~~ん~~~
(な、な、なんだ?ひぇ~ぇぇぇ~~~~)
何とブレーキと思い、おもいっきり踏んだのはアクセルであった・・・
車は防波堤の輪留めを遥かに乗り越え、
漆黒の深夜の海の中に真っ逆さまに堕ちて行ったのである。
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