第18話 怒りの代価
小学校1年生・・
遡ること30年ほど前の事である。
俺達3人は同級生であると共に同じ養護施設で、15歳までの少年時代を過ごした。
いつも一緒に遊んでそしていつも一緒に叱られた。
子供の頃からやけに大人びて活発だったケメコに対し、
俺達二人は金魚のフンのようにケメコの後ばかりを追っかけていた。
記憶を辿ればその頃の俺はケメコの事が好きだった、
という微かな覚えもあるが、たとえプロポーズをしたとしても、
それは子供の戯言である。
30年近くたった今頃になって履行されても、
戸惑うのは当然の事なのである。
現にケメコにしたってあれから数えきれない恋や失恋を繰り返し、
俺はその度に散々トバッチリを受けてきたのである。
それが今頃になって・・
ケメコと俺のことを崇拝してやまぬ刑事は、
放心している俺の事をほったらかし、
リビングのソファーで何やらゲラゲラと笑いながら雑談をしている。
(はぁ?こいつら何なんだいったい・・でももうどうでもいい・・関わらないでおこう)
慣れてしまったのか股間の痛みはすっかりなくなっている。
俺はバスルームへと入り、股間からシャワーを浴びた。
そしてシャワーを浴び終えた俺は、
バスローブを羽織り二人のいるリビングへと顔を出した。
俺の事を崇拝してやまぬ刑事は、
勤務中だから一本なんて言っていたのにも関わらず、
すでに3本目の缶ビールに手を付け、
押収してきたであろうと思われる熟女モノの、
裏DVDをテレビにかぶり付いて見ている。
バーボンをラッパ飲みしていたケメコに至っては、
ピンクの壁に下半身丸出しで股を開き逆立ちをして
「犬神家のいちぞくぅ~~」
とか訳のわからないことを云って1人で笑っている。
俺は半ばあきらめ状態で冷蔵庫の中にあったコーラを喉に流し込んだ。
(ん?ぬぬぬぬぅ~?おえぇぇぇ~~!!!)
なんとコーラの容器に入っていたのは、
ケメコが悪戯したであろう麺つゆの原液だったのである!
その時である!
「はい!アタイの勝ちね!」
とケメコが手を差し出すと
「ケッ!マジかよ!」
と云って俺を崇拝してやまぬ刑事が、
財布から千円を抜き出しケメコに渡したのである。
二人は俺が麺つゆを気が付かずに、
飲むかどうかを賭けていたのである。
俺はその光景を嗚咽をしながら茫然と見ていたが、
徐々に怒りの炎がメラメラと燃えあがり、
冷蔵庫からマヨネーズを取り出し、
両手に力を入れ二人に向かって発射した。
「きゃぁぁ~~なにすんのよ!」
「やめろぉ~~~~~」
(ざま~みやがれ~~にゃははは~)
形勢逆転である!
俺は目を押さえ重なった二人にむかって、
ドロップキックを喰らわしてやろうと思い、
ダイニングテーブルの上に飛び乗り
「とぉォォォォぉォォ!!!!!!」
の掛け声と共に二人に向かってジャンプしようとした
その時!!!
俺は怒りで痛みこそ忘れていたが、
実際完治してない両足で飛べるわけもなく、
あっけなくイナバウアーの態勢で落下した。
「ぎゃあぁぁぁぁ~~~~~~~~~」
俺は股間を見事にソファーのテーブルの角にぶつけ、
奇声と共に意識が遠のき気絶をしてしまったのである。
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