第11話 天敵ケメコ


ケメコは病室に入るなり、いきなり甲高い声で笑いだした。



「ぎゃははは~哀れね!」



「私の事かね?それとも彼女の事かね?」



「アンタに決まってるでしょ!」



「あっそうか!

仕事とはいえアンタの様な粗チンの、

下の世話をする看護婦さんの方が哀れかもね!

ぎゃははは~」



なんという下劣な女であろうか?


看護婦とやらもケメコの発言に体を拭く手を止めて固まっている。



「で、私に何の用かね?」


と云うと


「鍵、貸しなさいよ!アンタ全治3カ月と云う事は、

少なくとも今から1カ月以上は部屋が空くでしょ!」



何と理不尽な要求であろうか・・


俺は怒りが沸々と沸いて来たが、

ここで変身をするわけにもいかない。



すると横から看護婦とやらがおもむろに口を挟んできた。


「彼女さんですか?」


「馬鹿ねぇ~こんな偏屈でビニール人形と一緒に暮らしている様な変人男に、

私の様なイイ女が彼女になんてなるわけないでしょ!」



「ビニール人形???」


「そうよ!口のポッカリ開いたアレよ!変態でしょ?ぎゃははは~」


「・・・・・」



看護婦とやらもケメコの強烈な言動に言葉を失っている。



しかし僕の大切な彼女をここまで侮辱するなんて・・・



もう限界である!



こうなったら変身するしかない!



俺は即座に上半身を起こし顔の前で両手をクロスさせた。



「ケメコ~~~お前は~この誇り高き~私の事を~~~

ゆぅ・るぅ・さぁ・んんん~~~うをぉぉぉ~~~でびぃ~~るぅ~~~!!!」



「バッカじゃないの!まだ変身ごっこなんてしているの?

つべこべ言わず早く鍵を出しなさいよ!」


変身の決まり文句の途中に口出しするとは何と掟破りな・・・



天敵ケメコ!


この女だけは許さない・・


俺は今日こそこの女と決着をつける覚悟を決めたのである。


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