第7話 Yの芸術
微睡の中で俺は目を覚ました・・
真っ白な天井が見える。
かすかに消毒液の匂いがする。
そして俺のカラダは白いベットの上にいる・・・
ここはどこだ?
首を横にたむけると俺の事を崇拝してやまぬ刑事の顔が目に入った。
俺が目を覚ましたことに気付いた俺の事を崇拝してやまぬ刑事は
「おぅ~お目覚めか?
全くお前のようなキチガイは、
死ぬことも許されないんだな!」
そう云ってヘラヘラと失笑した。
「私は上手く飛べていたのか?着地は完璧だったのか?」
俺は即座に脳裏に浮かんだ質問を奴にぶつけた。
「あぁ~完璧すぎて笑っちまったぜ!
いきなり植込みの樹木の中に、
パンツを被ったケツの穴丸出しの、
フリチンの人間が突き刺さっていたんだからよぉ~」
俺はその言葉を聞き光景を思い浮かべ、
(樹木との融合そしてY字バランス)
という作品テーマがふさわしいと歴然と思った。
さすがに群衆もこの体を張った芸術に称賛したに違いない。
俺の鍛え抜かれた肉体美が群衆を魅了してしまった。
「それにしてもあれだけの高さから飛び降りて、
打撲傷とかすり傷しかしていないなんて、
さすがの医者もビックリしてたぜ!」
「オイ!飛び降りたのではない!飛んだのだ!イテテテ!!!」
俺は微妙なニュアンスの違いをしっかりと正した。
「ハハハ、しばらくはじっとしてるんだな!
俺は署に戻りまた来るからよぉ~
あと一応お前は俺の同級生なんだからよぉ~
あんまり俺に迷惑かけるなよ」
そう言い残し奴は病室から出て行った。
(俺の事を崇拝してやまぬとは言え、
同級生に向かってピストルを突きつけるなんて・・)
俺は若干の疑問も抱いたが、まぁいつもの洒落ということにしておこう。
奴をぼんやりと見送りながら窓の外に目をやった。
自由奔放な雲が風に身を任せるかのように流れている。
俺は知らぬ間にまた眠りについた。
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