第3話 止められない力 


マンションに辿りつき階段を上ろうとすると、

いきなりお巡りさんが近づいて来た。


「キミかな?ベランダから卑猥なビニール人形を落として大騒ぎを巻き起こしたのは・・」


(卑猥なビニール人形?)


「ひょっとして私の彼女の事を云っているのかね?」


とお巡りさん尋ねると


「キミねぇ~いい大人が何をいっているんだ!

そういうモノは家の中から出してはダメなんだ!」


(そういうモノ・・モノ?俺の愛する彼女が・・そういうモノ?)


「お巡りさん!いくらなんでも怒りますよ!

これ以上の暴言を吐くなら私もデビルマンに変身するしかありませんよ!」


と俺が憤慨の意を伝えると


「まぁいいから!とにかく署まで同行して貰います」


「お巡りさん!彼女は今オペが終わったばかりなんですよ!

同行なんか出来るわけありませんよ!」


「人形じゃなくてキミが同行するの!その人形は部屋に置いてきなさい!」


何と理不尽な!


これが腐り果てた国家権力か!


もう我慢の限界である!


俺は即座に全ての衣装を脱ぎ捨て全裸になりしゃがみこみ、

脱いだばかりの真っ黒なマイクロビキニを頭に被った。


「でび~~るま~~~~んに~~~変~~~~しぃ~~~ん~~とぉぉ!!」


お巡りさんは華麗かつ完璧な俺の変身に、

口をポカンとあけ言葉も出ないようである。


「ふふふのふ・・また逢おうお巡りさん!」


俺はそう言い残し一気に彼女を背負い階段を駆け上がった。


そして玄関の前に立ったその瞬間


イカン!


変身して脱ぎ捨てたズボンの中に玄関の鍵を忘れた。


俺はまだ傷の癒えぬ彼女を玄関にもたれて座らせ、

猛ダッシュでもう一度階段を下まで降りた。


お巡りさんは遠目で俺に視線を送りながら無線で誰かと話をしていた。


俺はズボンのポケットに手を入れ、

鍵をしっかりと手の中に握りしめ、

また階段を猛ダッシュで駆け上がった。



玄関まで辿りついた時にパトカーのサイレンの音が近づいて来たが、


何処かで事件でも起きたのであろうか?

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