第3話
予想外の襲撃があったが討伐隊は本来の目的を忘れてはいないようだった。
正直使い物になるとは思わなかったが、俺などが意見を行った所で、良い顔はされたいだろう。別にしてほしいわけではないが。
こいつらは平気なのだろうか。無駄死にするかもしれないのに。さっきだって無様に生き残るのがやっとだったというのに。
常世の大地を歩く事数分。
周囲には木々や草花などない。荒涼とした黒砂の大地のみだ。たまに見かける動物と言えば人間に牙をむく魔獣くらいで、他に生き物らしいかげはみあたらない。
それもそうだろう。ここは守護精霊の恩恵のない土地なのだから。
通常、このグランテーゼにある大地には、一つの大地につき一精霊?の守護が与えられている。大精霊とも呼ばれる彼らは人間のとりたてて精霊緑の大きい巫女、守護士と契約し、生命の住めるように環境調整の力をふるう。
しかし、この常世の大地にはその大精霊がいない。文献の記録ですら怪しい遥か昔に、失われたままなのだ。
足で踏みしめる大地の感触は固くざらついている。
黄の大地の砂漠のようにさらさらとして、足を捕らえないぶんましではあるが。
他の者はその違いになれていないのか、歩きなれない固い大地に疲れた様子を見せている。
「皆、ついたぞ。ここが氷の魔女の出現場所だ」
討伐隊のリーダーが声を張り上げる。
ようやく目的地に到着したようだ。
目の前には、夜空の様に黒い湖がある。魚など一匹たりともすんではいないだろう色だ。
ここに探していた人物がいるかもしれない。
そう思えば自然と鼓動が高まっていく。
いや、期待しないほうがいいだろう。
今まで散々、スカを引いてきたのだ。
今回もその可能性がある、というかその可能性の方が高い。
討伐隊の面々が湖へと近づいていく。
それぞれが武器を構えて警戒しながら。
十数メートルほどの距離を残して、誰かが声を出した。
「来るぞ……」
湖面が隆起する。
黒いしぶきが辺りにまき散らされ、、周囲に盛大に雨としてまき散らし。
しかし、振りつける雨は途中で雪へと変わる。
冷気。
肌を刺すような冷気が湖の方から吹き付けてくる。
吐く息が白い。
降りしきる雪の向こう。
凍った湖で作ったステージの上に、一人の女性が立っていた。
「我の眠りを妨げるとは、無礼者め」
妖艶な雰囲気を纏った美しい女性だった。
長い紫紺の髪に、絹の様に滑らかな肌は白い、紫の瞳は水晶のように怪しい輝きをたたえていて、唇は血の様に赤く酷薄な笑みを形作る。
誰もが圧倒され動けないでいる、フェイクスは彼女へと近づいていく。
こんな状況で、彼女に見とれていたのだ。
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