第2話

ウォルバート家当主暗殺さる。僕の命令で父親は愛人宅で暗殺された。失火によって火事が発生、そのまま2人は焼死した。そのまま男爵位は僕が継承。立会人は叔父上が務めて下さった。今は屋敷の離れに置いた自称国王離宮。大陸各国からすれば王位僭称者の一人ってとこだろう。


「殿下。お疲れでしたね。」


「さっきはありがとう。申し訳なかったわ。」


王家の特徴。高貴な白銀の髪に焼けるような赤の目。対してウォルバート家は灼熱の赤髪に深い海のような蒼眼と称される。一応我が家は美貌でも有名なのだ。


「臣の務めです。」


言いながらも、彼女の目に宿る疑心を悟る。無垢で可憐で人を疑う事を知らない少女は既に子供では無かった。


「僕が貴女に仕える証左は何が良いでしょう」


「……何が出来るのかしら?」


「先ずは、近隣の反王室派を叩きましょうか?殿下の名で叔父上を僕の指揮下と言う形になりますが。ウォルバート家とニコライエン家は殿下に不変の忠誠を抱いております。」


少し揺れたのが見える。そう、僕に依存してもらわなければ困るのだ。全ては僕の栄達の為。


「先ずは近隣の反王室派を叩きましょうか?殿下の名で叔父上を僕の指揮下と言う形になりますが。ウォルバート家とニコライエン家は殿下に不変の忠誠を抱いております。」


先ずは男爵が何を言うのかと言う思い。それも彼の放ついや、漏れ出す覇気からはそれを言わせない気迫を感じる。

私は16になる。もう成人の歳だ。14の少年に何を怯える必要があると思わなくも無い。けれど、本能が怯える。内乱より既に3年。私は手を汚した。父や長兄を失い、次兄には裏切られ。王家に連なる公爵の元に身を寄せたら独立派の軍勢八万に襲われ、命からがら敵の居ない方向に逃げたまたま、このウォルバート男爵領に着いたと言うのは出来過ぎの気もする。


「…反王室派とは?」


「勿論。隣接してきた、ソナリエーテですよ。」


爵位は未だ伯爵。慣れど勢力は大貴族、大公家すら匹敵するだろう。


「ローゼリア・フォン・ケー二ヒス・ハルベルツの名に於いて命じます。逆賊ソナリエーテ討伐をウォルバート男爵に命じます。」


その表情に浮かぶ喜悦の様相は何なのだろう。恭しく一礼すると、私には分からない言語で執事長に一、二命じるとこちらへと向き直る。


「乙女の部屋に夜分失礼しました。殿下良い、夜を。」


王家の紋章を与えられた僕は即時全軍展開を命令、騎兵800、歩兵2000が領地の境に展開を完遂。近衛150は殿下の護衛に残し数日後のニコライエン子爵軍1000の騎兵、2000の歩兵の合流を待つ。とある伝手により森林を通り、敵に知られず展開を完了していた。兼ねて寄りの合図でニコライエン軍全軍が突撃。現在は収穫期。徴募兵のほぼ全てを解散させていたソナリエーテ軍は完全に奇襲を受ける事になる。たが、ソナリエーテ伯バローネは愚ぶつではない。


「全軍、征くぞ!」


つまり、野戦で戦闘しなければ良い。立て直しに成功したバローネは5000の騎兵と1万8000の歩兵を展開しニコライエン軍に相対する。

つまり、ニコライエン軍全てを囮に我が手勢のみで旧サルベートン辺境伯領領都ナンシーを陥落させバローネの妻と3人の子供全てを確保した。


「お会いしたいと思っていました、バローネ殿。」


「貴様がかの麒麟児か。」


馬車の中から見守る。怒りを露わにするバローネ伯爵と目を細め、口角を僅かに上げた胡散臭い笑みを浮かべたアーサー。


「ええ。僕が麒麟児アーサーですよ。」


大袈裟な歌劇の様な身振りで答える。

彼にはバローネ伯爵の怒りが見えないのだろうか?


「我妻と子は何処だ。」


「こちらです。」


止めてある2台の馬車、その内の私の乗っていない方を指さし、兵士に丁重に連れて来るように命じる。


「貴方!」


「父上!」


幼い、末子と妻が叫ぶ。嫡男の長子と娘は黙ったままだ。


「アリスさん、さようなら。」


途端に顔を赤らめアーサーの方へ振り返る。その瞬間伯爵に青筋が出る。


「貴様ァ娘に何をした!」


「その前に見て頂きたいものが。」


一転し真剣な面持ちになったアーサーに切り替えた伯爵は騎士を1人書状を受け取りにやった。


内容は知らされていないが伯爵の表情に溢れる怒りから酷い内容とは理解させられた。


「真なのか?」


「ええもちろん。使者はこいつです。」


兵士に連れてこさせていた使者を突き出すと握手を交しこちらへと歩いてきた。

少々予定と異なるのだけれど。

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