第5話 藻の巻

 明空は〝播磨守〟とそこに入ってしまったので、預流はその二組挟んだ後に社に入った。

 藻の社は手狭で、妻戸を開けて土間を上がると畳が敷いてあり、奥の敷物に藻が座り、客人は向かいに座る。それだけの部屋だった。中に楽人がくじんがいるのかと思えばいないが、笛や篳篥ひちりきの楽の音は聞こえた。壁代タペストリーの後ろに扉があって他に部屋があるのだろうか。

 中は塗籠物置のように暗く、昼なのに灯台あかりを点している。少女は御簾も下ろさず几帳も立てず、頭に花を編んだ輪を載せ、白っぽい袿に古風な紫の領巾ひれをかけて紅の袴を穿いていた。


「……あれ。播磨守さまの」


 そう言われてどきっとしたが。――どっちの播磨守だ。いや待て。行列ではずっと明空と一緒にいた。ホット・リーディングにしては半端な。


「そちらにお座りください」


 と勧められたので履き物を脱いで畳に座った。


「五位の尼御前、預流の前よ。預ける流れると書いて預流の――」

「お名前は結構です」

「占いに名前を使わないの?」

「必要ありません。――失恋したようなそうでもないような、未練がましくつきまとっていたらワンチャンあると期待していらっしゃる」

「……恋愛運を見てもらいに来たわけじゃないんだけど」

「播磨守さまはいい方ですよ。そうだ」


 少女はたもとを探り、料紙を引っ張り出した。


「お文を預かっているのです。あなたにお見せするようにと」

「あら? 播磨守さまから?」


 何かと思って見てみると。

 ――それは靖晶が藻を心配して、式部卿宮邸で雇ってやってくれと書いている手紙だった。


「……これ、あなたが食い詰めてわたしの家に来たらよくしてやれって書いてあるんだけど?」

「そうなんですか?」


 首を傾げるものだから。


「今渡しちゃ駄目よ。式部卿宮邸に来たときに門番に見せるのよ、門番はあなたが誰かわからなかったら追い返しちゃうんだから。式部卿宮邸の東のたいでは〝結婚が嫌〟〝夫のDV・モラハラが嫌〟という個人的事情から〝仏道の五障三従ごしょうさんじゅうが思想的に無理〟〝漠然とこの世が生きづらい〟まで、悩める女を幅広く受け容れています。わたしも一筆書いてあげるわ。筆とすずりある?」

「いえ。そちらにうかがうことはないと思いますので、そのままお持ちになってください」

「そう? ここで占いでやって行くことに決めたの?」

「はい、そんなところです。別に嫌なことはありません」

「いざとなったら助けてもらえる、なんて逃げ道はない方が頑張れるのかしら。なら受け取っておくわ」


 預流はそれを畳んで自分の法衣の袂に入れた。となると気になるのは肝心の占いだ。


「……わたし、将来は菩薩ぼさつになるつもりなのだけれどわたしの未来を見てあまりの神々しさに目がくらんだりしないの?」

「しませんねえ」


 にじり寄ってみたが、少女は全く動じずまっすぐに目を見つめ返してくる。


「お坊さまにふらふらしているようですけどそれ、いいこと全然ありませんよ。生かさず殺さず生殺しのまま既に釣られた魚として餌ももらえずキープされ続けます」

「あああ自分でもうっすら思っていたことを! ……その〝キープ〟って脈があるときに使う言葉?」

「そうやって期待するから振り回されますよ」

「わたし、今何で期待しちゃったのかしら。仏道、そう、わたしの本分は仏道よ! 究められるかしら!」

「京の都を出て日の本全国を行脚あんぎゃすればいずれ究めると思いますがあまりオススメできません」

「うーん、兄さまが心配するから都を出て修行するのはちょっとねー。都の外は人の住むところではない、受領でも賊などに殺されて女はさらわれると大騒ぎよ。……結構年下なのにあなた、何だかすごく話しやすいわね」


 普通に盛り上がってしまった。何をしに来たんだか。少女もぎこちなく笑った。


「わたしもとても面白……楽しいです」

「この仕事、楽しいの? 賢木中将に言い寄られて嫌な目に遭ったりしてない?」


 そう、これが本題だった。


「中将さまには会ったことがないけれど、いい人ですよ。――女君に人気のお方なせいか、いつの間にか失礼な噂が流れていて。藻は言い寄られてなどいませんしお断りもしていません」

「よかったー! 靖晶さん、心配ごとが一個消えたわよ! 児童への性的虐待ナシ、ばんざーい! 健全な連載小説! 猥褻わいせつが一切ない! 会ったことないんなら流石に何にもないわよね!」


 預流は少女の手を握って思いきり上下に振った。ちょっと馴れ馴れしかったかと思ったが、少女もにこにこしていて特に嫌がるでもない。


「藻の占いは当たっても気味悪がられるばかりなのに、きっと世の中の役に立つ、舞台が悪いのだと励ましてくださいました。それで法師さまを紹介してくださって、このようなやり方を」

「法師さま?」

験者げんじゃさまです。大変霊験のある方で、藻のような者は見慣れていると。その方が神人の皆をとりまとめて、占いを商いにする方法を教えてくださいました。藻一人ではなく皆で商いをするやり方です」

「あの賢木中将が慈善事業をするとも思えないけど、結果オーライなのかしら……一日中こき使われてたり休憩が制限されてたりサービス残業当たり前だったりしない? 最低賃金は?」

「よくわかりませんけどこの占いは毎日、日暮れまで、雨の日はお休みですよ。ときどき休憩もしていますし藻の取り分もちゃんとあります」

「ホワイト!」


 ということでこれは成人済みの呪われた男が出てくるばかりで未成年女子は平和な話だった! 安心、安全の倫理観です!


「安心したところで、他に聞いとくことないかしら。そうだ、うちの妹が臨月でそろそろお産なんだけど男の子? 女の子?」

「あ、そういうのはちょっと」

「NGとかあるの? わたしじゃなくて妹のことだから?」


 少女は深々と頭を下げた。


「お名残惜しゅうございますが、このくらいでお許しを。他にもお客が待っておりますので」

「あらそういうこと。そうね、後ろにも並んでるんだものね」

「播磨守さまによろしくお伝えください、藻は元気にやっております。――ほしいものは一度失いますが、必ず戻ってきます。信じてお待ちなさい」


 それまでするすると話していたが、最後の言葉にだけ不思議な違和感があった。



 社を出るとすぐそばに靖晶が座り込んでいて、預流を見ると慌てて立ち上がった。


「安心して、悪いことは何も――」


 預流が言いかけたとき。

 何かぶつかってよろめいた――またぶつかってくるタイプの痴漢か、と思ったが小さな子供だった。気をつけなさい、と声をかけようとしたが。

 左手にかけた真新しい数珠が、ぶつっと千切れて小さな白檀の珠をばら撒いてしまった。新品なのでふんわりといい匂いがする。

 ああ新品なのに、と嘆く暇も預流にはなかった。


「何ということだ、尼御前さまの数珠が!」

「皆、拾え!」


 他に大声を上げる者がいたからだ。

 途端、どこかからわっと三、四人も人が出てきて皆で屈んで一生懸命、白檀の数珠玉を拾い集め始めた。


「申しわけない、尼御前さま、子供が無礼を!」


 と誰かも知らない直垂ひたたれの中年男が頭を下げ始めた。ほおのほくろが妙に目につく。


「い、いえ、子供のしたことだし……そんな恐縮しなくても」

「御仏に仕えるお方に何たる無礼、取り返しがつきません!」

「いえ、形ある物はいずれ壊れる運命ですから……」

「そんなことをおっしゃらず。我々で数珠をつづり直してお返しいたします。そうだ。椿餅つばきもちなどいかがですか。お急ぎでなければ綴っている間、お召し上がりください」

「え。数珠玉を拾ってくれれば邸に持ち帰って自分で直すけど……」

「そんな申しわけない、わたくしどもに直させてください! お連れ様の分もご用意いたしますから!」


 と、気づいたら靖晶ともども、三軒隣の店に引っ張り込まれ、畳に座らされていた。ものすごい展開の速さだった。


「……これって椿餅の販促?」

「流石に預流さまも善意百パーとはお思いにならないんですね」

「流石にね」


 というのも。


「しーっ、静かに」


 なぜだかそこには先客がいて。

 既に高貴の御方が座って椿餅を食べていた。椿餅は甘い餅菓子を二枚の椿の葉で挟んだものなので自分の手で食べた方が早い。それはわかる。

 その肩にしなだれかかってうとうとしている坊主が一人。顔が近い。そこそこに広くてそんなに近づく必要はないのに、お前ら、一定以上遠ざかると存在が消えるのか。


「源四郎が疲れておるゆえ、静かにな。行列で長いこと立たせてしまったから」


 高貴の御方がささやくと、明空は一瞬目を開けて


「お召しですか」

「いやまだよい、数珠が仕上がるまで寝ていろ」

「ではそのように」


 また目をつむってすうすう寝息を立てるのだった。普段は猛禽のようなのに今は雨の日の猫だ。


「……何でわたし、ちょっとショック受けたのかしら? もうこいつのこと気にするのやめようって思ったのに」

「ぼくこれ羨ましいとか言っていい状況なんでしょうか」

「播磨守さまの肩で寝たいの?」


断袖だんしゅう〟という言葉がある。その昔、古代中国の皇帝が愛人(男)と昼寝していて一人だけ起きてしまったが、袖の上で寝ている愛人を起こさないように自ら衣を断って寝床を出たという。――これ断袖級の寵愛エピソード来てない? さっき預流が聞いた言いわけ、何? と思っている場合ではない。


「……明空さまも数珠がないのは御仏の宿縁なんですか?」


 靖晶は半笑いだったが。


「もしやそなたらも数珠が切れてしまったのか? 奇遇だな」

「いやそんな偶然ないと思いますが」


 高貴の御方は何も気づいておられない様子だった。そもそも、この四人を相席にするこの謎の空間は一体。衝立とかないのか。預流は男女混成でも気にしないとはいえ普通、「仕切りましょう」「いえいえおかまいなく」くらいのやり取りはあるものでは。全然知らない人同士だったらどうするんだよ。椿餅自体は甘くておいしいのだが。


「お坊さま、尼御前さま、数珠にございます!」


 しばらくして二連の数珠が綴り直され、それぞれの手に戻ってきたが。


「いかがでしょうか尼御前さま。何せ素人の修繕ですから至らぬところなどございましょうが」


 ほくろの目立つ店主は頭を下げながら、畳に置けばいいのになぜかわざわざ預流の左手を握って数珠をかけるのだった。いきなり手を握られて預流は鳥肌が立ったが――うっかり声を上げるのを我慢してしまった。


「どうかしばらくこちらでお休みになってください。椿餅のお代わりはいかがですか? 酒もご用意できますが」

「いや、酒はいい」


 そのくせ靖晶に声をかけてから出ていった。手を握ったのは彼からも見えていたらしい。少し声が呆れ気味だった。


「……大丈夫ですか? あれ、ぼくがキレた方がよかったんですか?」

「いえ……きょ、距離感がおかしい人だったのよ。ええ。手くらいでいちいち騒いじゃ駄目よ」


 と預流は自分に言い聞かせようと思ったが。

 改めて数珠を見ると。


「……ねえ、これ、不動明王は忿怒しないの?」

「しっ、源四郎を起こすな」


 預流の白檀の数珠は新品同様に新たな紐で綴ってあったが――白檀ではない紫水晶の珠が一粒、ど真ん中に入っていた。明空が寝ているので代わりに高貴の御方が受け取った紫水晶の数珠には、白檀の珠が入っている様子はない。多分一粒少ない。高貴の御方も預流のを見て気づいた。


「その数珠玉は、源四郎のものだな? そそっかしい連中だ」

「何で先に来た明空さまのと後に来た預流さまのが同時に直って返ってくるんでしょうねー……」

「器用な仕事のできる者を探していたのではないか」

「流石、上品な方はポジティブシンキングですね!」

「それは源四郎が出家したときに予がたまわったものだが」

「ちょっと自分で怒ってよ源四郎! わたしが畏れ多いじゃないの! あんた怒るの得意でしょ、大日如来の忿怒の相なんでしょ! わたしのためなら何でもするってさっき言ったじゃない!」


 預流としては揺さぶって叩き起こしたいところだったが、高貴の御方に庇われると手が出せない。


「起こすな、起こすな尼御前。源四郎には毎晩遅くまで無理をさせているから仕方がないのだ」

「それただの宿直とのいよね! わざと!? わざと言ってるの!?」


 ……この男があの白の可憐な宿直装束で寝所のそばに侍って一晩中勤行しているの、全然〝ただの〟ではないが。煩悩を増やしている。何が清い友情だ、何が一生不犯だ。信じるものか。嘘つき村の嘘つき男め。


「わたしは気を悪くしているわよ! 手を握ったのはうっかりとして数珠玉もケアレスミスとして、そもそもこの椿餅屋、何!? 藻さんの占いと関係あるの!?」

「え。大事なものをくすけどすぐに返ってくるから心配するな的なことを言われたんじゃないんですか?」


 預流は憤慨していたのに、かえって平然と靖晶が聞き返した。


「外で神楽だけ聞いてましたけど、あれは太鼓の音で中の占い師と数珠を切る子供と椿餅屋に合図を送ってるのに笛の音を添えてごまかしていましたね。〝播磨守さま〟と預流さまのときだけ終わりの方が違いました」

「……あなた、絶対音感もあるの?」

「ないですけど仕掛けるならそこかな、とヤマを張って気をつけていたので。まさか全く同じ展開をカブセてくるとは思ってなかったけど。数珠持ってる人には全員そうしろってテンプレなのかな。京の都では聞かない曲でしたね。地方の祭りで奏でるものかな。藻さんと身内は京の人っぽかったから都の外からやって来てこのやり方を教えた者が他にいる?」


 何やら一人でぶつぶつ言い出したので正直ちょっと気味が悪かった。――陰陽寮はいつもどうやって占いを当てているのか。


「太鼓なら予も気づいていたぞ。そなたらがここに入ってから打ち手が変わった。少し調子が速くなって打ち損じが増えたぞ、前の者の方が上手かった」


 しれっと高貴の御方も断言したので、預流は動揺して社を振り返った。蔀戸しとみどが開いているがその向こうに相変わらず社の前に行列ができているのが見える。塀や生け垣がなく開放的すぎるのが落ち着かない。太鼓も少しは聞こえるが。


「笛と篳篥は、音曲おんぎょくを楽しみに来たのではないしこんなものかと思っていたが、太鼓だけは耳馴染みがよい。誰が叩いても同じと思ったら大間違いだぞ。聞いたことがあるような気がしたが雅楽寮ががくりょうの風情とも違ったな」

「……そちらは耳がよくていらっしゃるのね」

「聞き慣れておるからな。都中の楽人を知っているのではないか。逆に予を知らぬなどモグリだぞ」


 ……ロイヤルジョーク、笑いにくい。「兄と大差ない」と言い聞かせて必要以上に恐縮しないようにしているが。


「藻さん一人の商売ではないですね。元々、彼女はんですよ。一人でやる方が身軽で楽なのに無理矢理仲間とつるんでいるからやり方が噛み合ってないんじゃないかな」


 靖晶は後から椿餅を食べ始めたはずなのにもう一個食べ終えて葉だけ器に戻し、二個目に手を伸ばしていた。


「それって、彼女は占いだけでやっていけるのに椿餅屋の宣伝もする羽目になってるってこと?」

「それだけならマシなんですけど。預流さま、社の中と行列に並んでいる間とで同じ話をしましたか?」

「ええっと……」


 ……行列に並んでいる間、ずっと明空の身の上話という名の言いわけを聞いていたが藻とそんな話はしていない。「坊主はやめとけ」と言われた憶えならある。何を話したっけ?


「今のショックで忘れちゃってあんまり憶えてないわ。賢木中将が児童虐待してないか確認するのに必死で。会ったことないらしいわよ」

「会ったことはないのに社は建ててやったんですね。中に入らなければ何とも言えないけれど外から見る限り、急ごしらえにしては普請がよかった。スポンサーがいます」

「彼女自身は感じのいい娘だったわよ。もう一度占ってもらいたいくらい。行列に並ぶのは勘弁してほしいから邸に来てくれるといいんだけど」

「それですよ」

「それって?」


 言っている間に靖晶はもうつるっと三個目の椿餅を食べている。素早い。葉っぱを一枚取ってもう片方から餅をかじり取る。流れるよう。待たされてお腹が空いてるのか。


「占いをするなら貴族の邸を訪ねて歩く方が断然効率がいい。それはいきなり貴族の邸に行ったら門前払いですが、賢木中将が噛んでるんですよ。友達でも親戚でも紹介してもらえばいいじゃないですか、よく当たる占い師がいるって。その方が楽なんですよ、ホット・リーディングは。半日でも時間を空ければその間に情報を集められるし、こんなところでちまちま椿餅売るより吹っかけて稼げます。それでお抱え占い師にでもなれたら一生安泰。在野の法師陰陽師ほっしおんみょうじは皆そこをゴールに設定してるんですから」

「でも児童虐待されそうよ、それ。賢木中将オススメの十四歳少女って絶対変な解釈するやつが現れるのに決まってるわ。浮かれ女と白拍子と巫女の区別がついてない男はたくさんいるし、わたしは尼だから不犯だって言っててすら変なやつに絡まれるし。付き添いも小綺麗な若い女にしろってなるのに決まってるし。あの社なら昼のみ営業で、悲鳴を上げて外の人を呼べば解決する。自分で言っといて何だけど貴族の邸なんか行っちゃいけないわよ。あなた自分が男の占い師だからそういうリスク、考えたことないだけよ」


 預流がまくし立てると靖晶は返事に詰まってしまったが。


「藻さんが賢木中将にコマされてないか心配になったんじゃなかったの? しっかりしてよ」

「……実際に並ぶとあの行列の意味がわからないんですよ。どうしてぼくらこんなところで椿餅食べてるんでしょう」


 と四個目に手を伸ばしながら難しい顔をしているので、何かたちの悪い冗談かと思う。


「どうしてって。……どうして?」

泰仁寺たいにんじの明空さまとか絶対、社に入れちゃいけませんよ。淫祠邪教いんしじゃきょうのまじないとか占いとか怒りそうじゃないですか」


 怒るどころか明空はまだ寝ている。並んでいて疲れたというよりは、普段遣わない気遣いをして疲れたの間違いではないか。代わりに高貴の御方が答えた。


「別にこれが怒る筋合いのことは何もなかったが。予は楽しく蹴鞠けまりの話などしていたぞ」

「え。何ですか蹴鞠って」

「下品だからやめろと言われてここ数年やっていなかったのだが、我慢しすぎではないかと。言われてみればそうかと思った。他愛ない話ばかりで気楽でよかったな。普段厳粛で大袈裟な連中とばかり話しているから」

「……蹴鞠って下品なんですか?」

「そういえばうちの兄さまもあんまり蹴鞠はなさらないわ。下品だからなの?」


 高貴の御方はため息をついた。


「大体のことは下品だから衛府えふの下官などにさせて自分は見ていろという話になる、蹴鞠でも鷹狩りでも。自分でするのと人がするのを見るのは全然違うのに。予を姫君のように御簾の中に閉じ込めたいのだ」

「よくないとは思うけどそもそも姫君も御簾の中に閉じ込めるなって話よ」

「本当に、世の中はなぜこんなことになっているのだ? 飛鳥の頃は妃も帝も手ずから野の草を摘み、狩りに出ていたのに」

「となるとやっぱり行列でなさっていた話はしていないんですね。――ホット・リーディングの材料集めをすべきなのにしていない。ぼくや明空さまのような、いかにも占いに文句をつけそうな危険人物を認識しながら放置。何を考えているんでしょう」


 何を考えているかわからないのは靖晶だ。食べた後は鉢で水をぐいぐい飲んで。陰陽師は代謝がいいのだろうか。


「自分で自分を危険人物呼ばわりってどういうこと」

「向こうはぼくの名前を出して陰陽寮に喧嘩を売っているのだから、列に姿など見つけたら何か騒ぎ出す前につまみ出さなきゃ。明空さまも顔が目立つのだから〝明空さまのようなお方にはこんなものより特別にこちらに一席設けます〟とか言ってこの店に案内して、酒と精進料理とでおもてなしして肝心の占いはごまかすんですよ。これ、明らかにそのためのハコです。順番が逆ですよ」

「……あなたならそうするのね」

「こんな目立つことをしてるんです、淫祠邪教とか風紀紊乱ふうきびんらんとか言われたら困るじゃないですか! その辺、律令りつりょうで明文化されてないんだから出る杭が打たれないように空気を読まないと。検非違使けびいしと僧綱と陰陽寮の官を見かけたら酒を飲ませるなり賄賂わいろを渡すなりして心証をよくする、これですよ」


「あなた役人のくせに賄賂って」

「藻さんの占いがいくら当たるって言ったってそういう立ち回りは大人が考えてやらないと。列整理は列で喧嘩なんか起きないよう治安を守る、とか二の次で、見当たりとホット・リーディング用の情報集めをする。いやなんですよ、本来は。並ばせておいて名前も控えないなんて意味がわからない。ぼくは並んでる間、いつ名前を聞かれるかひやひやしてましたよ。ぼくも〝播磨守さま〟も」


 そういえば預流も占いには名前が必要なものと思い込んでいた。


「――ぼくらひと時二時間以上も突っ立って何してたんだと思いません? こんな店があるのだから行列など作らずこっちに誘導できるでしょうが。椿餅の宣伝、占いの前にすればいいでしょう。ここで話す情報をホット・リーディングの材料にもできる。全員入らないなら、並んでる中から格別に身なりのいい客を選ぶんですよ。そのためにも名前や身分を聞き出さないと」

「そこまで手練手管に長けてないだけなんじゃないかしら。あなた曲がりなりにもプロだから素人が甘く見えるんでしょう。単に手際が悪いだけじゃないの? ていうか陰陽寮ってそんな商売してるのね……」

「こすっからく立ち回って皆さまの精神的安定を守っています!」


 あまりに力強く断言しているものだから。


「こすっからいのか、播磨守は……賄賂も辞さないのか」


 高貴の御方がうつむいてしまった。


「れ、霊力を節約するためによそで工夫することも必要なんですよ! 何でもかんでもサイキックパワーで解決すると疲れるので、工夫で補うのです! いざというときのため、日常では節電モードなのです! 参謀役も魔法使いのロールプレイというものなので! ぼくが普段いただくのは目上の方からのチップなので賄賂とかじゃないので!」

「そういうことにしてあげて!」

「お、おう」


 力ずくで説き伏せてごまかした。


「藻さんは一人でやっていけるのに足手まといばかりこんなにくっつけて、何がしたいんでしょう」


 靖晶はごまかしたばかりなのだからもう少し神秘的に見える発言をしろ。もっと霞を食べて生きている風情をまとえ。藻は神秘的な占い師の雰囲気を作っていたぞ。椿餅をあんなに食べるべきではなかったのでは。


「足手まといってあなたね。藻さんは自分が占い師として大成したいだけじゃなくて、神人の皆さんにも仕事を作ってあげたいんでしょう?」

「それで藻さんが足を引っ張られるばっかりとか。大人なのに才能のある子におんぶに抱っこで食わせてもらうなんて情けない。してもらうばかりで手伝う気がないですよ」


 その技術に長じた結果、陰陽寮はサイキックなど一人も抱えていないのにサイキック商売ができてしまうとか逆にどうかと思うが――


「あなた、自分でプロデュースする気はないのに言いたい放題すぎない?」

「別に陰陽寮は占いが当たれば超能力でも何でもいいという部署ではないので、意義目的が他にあるので。言っちゃ何だけど彼女の占いが当たるとか当たらないとか陰陽道を究めるのに何も関係ないですよ。良彰が慌てすぎなんですよ」

「か、関係ないのか」


 ――おいおい、またドン引きされてるぞ。


「最初だから物珍しくて行列ができているだけで、そのうち貴族のお邸訪問に切り替えていくと思いますよ。話題作りのための牛歩戦術だったのかな。ひととき一刻いっこく待ちとか――」


 そこで靖晶の言葉が途切れた。餅がのどにでも詰まったのかと思ったが。

 口を手で押さえ、青ざめていたので本当に餅をのどに詰めたようだった。


「だ、大丈夫? 背中叩く? 吐かせるなら胸叩いた方がいいの?」

「……あのとき、前に九組待ってましたよね?」


 かすれた声でつぶやいた。声が出るということは窒息したわけではないのか。


「ええと……」

! 行列に九組、社の中に一組で十組。一組あたり半刻はんこくで、ひと時と一刻百五十分待ち! きっかり一組の持ち時間が半刻十五分です!」

「……ヒトトキとかハンコクとかイッコクとかって、何?」


 預流は何気なく言ったのだが、それで靖晶の声が一層かすれた。


「も、もしかしてぼくは今、家伝の秘を……」

「いや予も知っておるぞ、それくらいは」


 高貴の御方が少し得意げに言った。


「内裏にいるとひと時に一度、陰陽寮の楼の太鼓が鳴るのだ。昼間だけだから一日に六回かな。諸門しょもん開門かいもん大門だいもんの開門、閉門へいもんの三回も併せると九回。それに一刻に一度、ひと時に三度、鐘が鳴る。尼御前は聞いたことがないか。そなたの住まいでは聞こえんか」

「式部卿宮邸では聞こえないわ。……そういえば先日、清涼殿の儀式の折に鐘の音を聞いたような。ヒトトキに一度?」

「内裏では昼寝はできないぞ。夜は夜で近衛の舎人下位の武官弓弦ゆづるを鳴らして杭を差す、あれで結構起きることもある。陰陽師たちは真昼でも太鼓や鐘がしょっちゅう頭の上で鳴っていたのではさぞうるさかろうなと思っていたが。……そうか、あの太鼓の音は楽ではなく陰陽寮のだ」

「何にせよ使


 突然に明空が声を上げた。すっかり目が醒めたらしくいつの間にかしゃんと背を伸ばし、目を開いている。


「ひと時は一日の十二分の一だ。十二辰刻しんこく。十二支を当てはめて夜半の一刻いっこくから始まり、夜明けはとら。日が沈むのはいぬとりだ。夜居よいの僧は皆の眠っている時間が本業。時をそうする舎人とねりもすっかり顔見知りだ」

「敬語やめていいなんて言ってないわよ。――それは知ってるわ、兄さまが宴などで帰りが遅くて子の刻になるとか何とか。子の刻って夜中の中途半端な頃合いで誰がどうやって決めているのかと思ってたけど。十二支で子が最初なんだから、夜明けを子の一刻にするのが筋じゃないの?」

「夜明けは季節でずれるのでそうすると夏と冬とで一日の長さが変わって、暦がずれてしまいます」


 靖晶はどうやら預流以外皆知っていたので観念したらしい。ため息をついたのは諦めたようだった。


「夜半開始の定時法、一日は年中いつでもとおとふた時、子の刻は夜半と決まっています」


 預流はそれで鉢をひっくり返しそうになるほど驚いたが。


「決まってるって、まさかそれって陰陽師が決めてるの!?」

「最初に決めたのは天智の帝で大宝律令たいほうりつりょうの発布より前です、技術の進歩で陰陽寮から誤差を直す改善案など出したりはしていますが」

「律令って、法律なの?」

「法律ですよ」


 ――一日の長さが法律で決まっていたとか、預流は生まれて初めて知った。漠然と天の神さまがそのようにしろと言ったのかと。


漏刻ろうこくを見て鐘や太鼓を鳴らすのは時司ときつかさ守辰丁しゅしんちょう、漏刻全体の管理は漏刻博士で別部署ですが、陰陽寮です。鐘も太鼓もうるさくて耳を悪くする者もいるし、漏刻自体もかさばって場所を取るから嫌でも目に入りますが」

「ロウコク?」

「水時計です。尼御前さま、この間来たときに見てませんか、きざはしのようなところにいくつも銅張りの水槽が置かれている」

「……よく憶えてないわ」

「水音などしないから水が流れていると気づかなくても無理はないですが」


 靖晶は手首を曲げて階段のようなデコボコした形を作った。


「専用の水路から水をすくって一番上の漏壺ろうこに入れて、一番下の箭壺せんこに落ちた水の量を底に立てた矢の刻み目の長さで測って一日の時間がどれほど経過したか観測します。水が一気に流れ落ちないように決まった量だけ静かに流すために、大きさが同じ水槽を違う高さに置いて銅の管でつないであるのです。天智の帝が飛鳥の都に作って以来、都をうつすときに少し手間取りはしましたがずっと漏刻博士が管理して、時を刻んで時報を鳴らしています。夏も冬も正月も、年がら年中」

「何のために?」

「何でしょう。ぼくが知りたいですよ」

「官人はいくつの鐘が鳴るまでに身仕度してどこそこに集合、鐘が鳴ったら儀式を始める、とか言うためであろう?」


 流石に高貴の御方が呆れたようだった。


「陰陽師がわからんでは駄目だと思うぞ、しっかりせよ」

「そうでした。鳴らすからには何かの役に立っているんですよね」


 妙に落ち込んだ口調で言ってから、靖晶は親指と人さし指でつまむようにして何かの長さを示した。


「刻み目が三種類あって一番大きなものがひと時、一日の十二分の一。真ん中が一刻、一日の四十八分の一、ひと時の四分の一。一番小さなものは一分三分、一日の四百八十分の一、一刻の十分の一。一分いちぶは短いので時報で知らせません、日の出や日の入りの時刻を記すのに使うための単位です。半刻は五分ごぶで一日の九十六分の一ということになりますね」

「きゅうじゅう……何が何だかわからないわ。それでどうなるの?」

。多分、あの神楽が一曲一分で五回繰り返して半刻。他にも何か道具を使って測っていたのかもしれませんが」

「寺では時香盤じこうばんを使って時間になったら勤行ごんぎょうをする」


 少し寝たせいなのか明空は声が元気だ。途中から話に参加したわりにはやる気だった。


「型を使って抹香を灰の上に盛って火を点ける。香がどこまで燃えたかで時間がわかるように金串を打って目印にする。漏刻ほど精密でなくても他にも方法はあるぞ」

「時間を測ると何かいいことあるの?」

「行列の整理が楽になります。藻さんの休憩も入れて、日暮れまでに何組捌けるか計算すれば予想がつくので午後になるとここから先、並んでも無駄だと列を打ち切ることができる」

「何だ。藻さん、休憩が取れるんじゃないの。いいことじゃない」

「数を捌くなら確かに。……なぜ数を捌くのかがわからないだけで」

。何やらわざと怒らせようとする気配があるのでかかわりたくないと思っていたが。――あの列を仕切っていたのは陰陽寮の官なのではないか」


 明空が低く笑うと靖晶は唇を引き結んだ。明空の顔つきは妃のように優雅な笑みではなく、獲物を見つけた獣のようだった。


「ひと時、一刻は大内裏のそばで耳を澄ませて鐘や太鼓を聞いていればわかるが、半刻など漏刻を見たことがある者しか知らん。大内裏から遠いここではその時報も聞こえない。本当に半刻が測れているかどうかはともかく、その単位を知っているのは陰陽寮の陰陽師だけだ。――現役の官の小遣い稼ぎにしては大胆なことをしているな? 大内裏で使うべき才覚で巫女を売り出すとは、風紀紊乱ではないのか。あの占いは陰陽寮のやり方なのか」

「陰陽寮の官などではない! アリユキさんはもうずっと前にいなくなったんだ、ぼくらも知らないんだ!」


 靖晶は腰を浮かせて叫んで――冷静になったらしい。座って首を横に振った。


「……いや。わからない。及第できなくて消えてしまう学生は何人もいるし、よその役所に勤め始めて陰陽寮の者とはわからなくなってしまうやつもいる」

「では、そういうことにしておこうか?」


 それで預流にも挑発だったとわかった。


「陰陽寮の官ならぼくやあなたにバレたらまずいのはわかるはず――」

「ていうかあなた、同じ陰陽寮でも他部署のことをよく知っているわね?」


 預流はおかしな雰囲気を打ち消したくて話を逸らした。皆で社の前に並んで、中で藻の話を聞いたところまでは楽しかったはずなのに。

 ――この四人が「今」ここにいるのは何かものすごくよくないことの布石なのではないか?


「大きな設備の細かい管理が部署で別れているだけで、漏刻と天文と暦は全て同じものをあかすためにあります」


 靖晶は落ち着くために説明をしているのか。


「夜明けや日暮れの時刻を漏刻や日時計で測り、天文で計算して暦に記す三位一体。陰陽道は本来、この宇宙を証すための術です。どれか一つしか知らないのでは機能しない」

「宇宙?」

「陰陽師が証す宇宙は御仏の説く三千大千世界さんぜんだいせんせかいよりもっと狭いものです。今はまだ。七曜しちようと二十七宿しゅくくらい。――宇宙を証せば京にいながらにして天竺の月を見ることもできます」


 狭いと言いながら彼のその言葉には謙遜の含みはなかった。


「宇宙を証す術が何だか他のことにも使えるからついでにいろいろやっているだけで。時司が時報を打つとか正直何なのかよくわからないけどぼくが生まれてくるより前に定まっていたことなので」

「図に乗るなよ、陰陽師。代々の帝のために漏刻があって陰陽寮がある。お前が道楽で学問をするためではない」

「源四郎、言い方がきついぞ。播磨守はこの京を守るために陰陽道の技を究めているのだろうが。言われてみれば霊験がいかに優れていたとて、かの娘に時報の太鼓を打たせるわけにもゆくまい――」


 高貴の御方はどうやら、預流と同じくごまかして楽しく過ごしたい方だったのだろうが。

 どうやらいよいよ時間切れだった。夕日が傾きつつあるのは蔀戸からも見えていて。

 まず、野太い先触れの声があった。


検非違使庁けびいしちょうである! 道を空けろ!」


 それから長い影がいくつも伸びた。


「検非違使庁である! 検非違使佐けびいしのすけさまがお通りだ、道を空けろ!」


 葵祭でしか見たことがない光景だった。

 蔀戸の向こうを藍染めの変わった模様の水干を着た男たちが、長い棒を持ってぞろぞろと進む。胸や袖に着けている木の枝は作り物なのだそうだ。いずれも背が高くひげを伸ばし、いかにも屈強で。

 十人ほどの前駆ぜんくが道行く人々を追い払う後ろから、高い蹄の音を立てて葦毛あしげの馬が進み出る。すらりとした名馬に金覆輪きんぶくりんの鞍を置いて。

 冠においかけをした、緋色の闕腋袍けってきほうの公達が背筋を伸ばして大路を行く――黄金の太刀を帯びて弓と胡簶やなぐいを負い、形よく矢羽根を広げてそれは見事な出で立ちだが、まだ小柄で顔も小さくあどけない。声変わりもしていないのではないだろうか。男ぶりに感心するのに後五年ほどかかる。かさばる衣装と豪奢な武具と名馬ばかりが目立って中身がどこにいるのかと思うほど。


検非違使佐けびいしのすけ右衛門佐うえもんのすけ右近少将うこんのしょうしょうさまである! 道を空けろ!」


 隣で大声を上げるのは狩衣の大人の男で、祭りの稚児を先導しているようだ。そもそも検非違使放免ほうめんというものが葵祭の行列みたいで。

 市を歩いていた人々、並んでいた人たちは皆、脇によけてその異様な行列を通していた。店の中で座っている預流たちはただ呆気に取られて眺めていただけだったが。社の太鼓がぴたりと止まった。


「右近少将って、子供じゃないの。あれいくつよ」

「十三歳だな。おととし元服した。なぜこんなところに」


 高貴の御方が、驚いたのか目を丸くしたまま答えた。


「右衛門佐右近少将藤原幹忠ふじわらのもとただ、通称小野おの右衛門佐。関白の甥で賢木中将の従兄弟だ」

「摂関家の親馬鹿の産物ってこと?」

「あんなものだ。元服したての子供は毎年官位が変わるから憶えにくくて。前例と照らし合わせて任官しないわけにもいかぬ。一人だけ出世させなければ何か理由があるのかと問い詰められる」

「頑張って一張羅いっちょうらを着てきましたね、また」


 明空が皮肉げに笑った。


「そうか、最初から燃やすための護摩壇ごまだんだ!」


 中腰になっていた靖晶が畳を叩いた。


「巫女・藻女の社とはここか」


 衛門佐とやらが案の定、まだ高い子供の声でわざとらしく言った。


「捕らえてまいれ」

「衛門佐さまのご命令だ、巫女を捕らえよ!」


 横の男が言い直して、それから藍染めの水干の放免たちが社の妻戸を引き開け、押し入っていく。あっという間に藻が両腕を掴まれ、引きずり出されてきた。花冠と領巾はない。藻は衛門佐と大差ない子供なのに大人に押さえつけられ、怯えた顔で引き出されるのが痛々しい。


「巫女・藻女には厭魅呪詛えんみじゅその疑いがある」


 検非違使佐が馬から下りもせず、得意げに何か掲げた。


「この人形ヒトガタに見覚えはあるか」


 ――それは縦に長い木の板を人の形、頭と肩、手足に見えるように切ったものだった。


「畏れ多くも主上を呪詛した、大逆罪だ!」


 胴体に墨で文字が書かれている。

 人の名前だ。

 その二文字は書いても読んでもいけないことになっている。――兄は親戚だからかたまにぽろっと呼んでしまったりするが。

邇仁ちかひと

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る