第2話 陽子の秘密

「ただいま」

「遅かったわね」

「うん。ちょっとお友達と遊んでいたの」

「そう。自分で見つけたお友達なの?」

「それが向こうから声をかけてくれたんだ」

「そう」


 私はクーラーボックスを母に渡す。彼女は中身をちらりと見てふたを閉じた。


「今からします。大分時間がオーバーしてるから念入りにやりますよ」

「分かりました」


 私はその場で水着を脱いだ。

 そして円形の台座の上に立つ。


 その台座の周囲から透明な円筒状の壁が立ち上がって来て天井までせり上がっていく。


「呼吸を停止する事。約5分です」

「分かりました」


 私の周囲は水で満たされた。そしてその水は洗濯機のように渦を巻く。海水に浸かった私の体を洗浄するのだ。私の体は海水などの塩分に長時間晒されると故障してしまうらしい。しかし、敢えて海水浴をしつつその限界を探る実験をしているのだと説明されている。


 5分後、排水され温風が噴き出してくる。概ね80度の熱風だが1分ほどで髪まで乾燥した。透明な円筒形の壁が下側へと降りていく。


「それでは陽子。ベッドへ行きなさい」


 私はその傍にあるベッドに横たわった。母は私の延髄部分に数本のコードを接続していく。


「心を平静に保ちなさい。シャットダウンします」

「はい」


 私の意識が畳まれていく。領域が急速に狭まっていきそして何も感じない暗闇に覆われた。

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