海が太陽のきらり☆改稿版

第1話 二人が出会うとき

 青い空。

 輝く太陽。


 夏真っ盛りの午後。

 私は一人で海に来ていた。


 お母さんには「なるべく人が多い所で遊びなさい」と言われているんだけどやっぱり恥ずかしい。恥ずかしいから人気のないこの海岸に来てしまった。

 ここは少しの砂浜と沢山の岩場がある場所だから海水浴には向かない。だから結構いるんだよ。アレが。


 アレって言うのはお母さんの大好物でウニとサザエ。


 うふふ。


 ここはそう言う意味で穴場なんだ。


 私は早速Tシャツと短パンを脱いで海に飛び込む。少し沖へと泳いで潜る。海底の岩場に……いた。バフンウニ。結構大きい。私は右手でそいつを捕まえて海面へと上がる。そして大きく息を吸い込んでまた海底へと潜っていく。海藻の影にいた。今度は紫ウニ。そいつを左手で捕まえてから海岸へと戻る。戦利品のバフンウニと紫ウニをクーラーボックスに入れて、海を眺める。次はどのスポットを狙うか。真剣に考える。


「一人で何してるの?」


 急に声をかけられた。男の子の声。

 私はぎこちなく振り向いた。


 そこには高校生くらいの男の子がいた。

 JKの私とは同年代って事かな。


 ああ、これはダメだ。恥ずかしくて返事ができない。


 私はもじもじしながら俯いていた。

 すると彼は照れくさそうに頭を掻きながら話し始めた。


「邪魔しちゃったみたいだね。ごめんね」

「そんな事……ありません……」

「それならよかった。僕は海斗かいと。さっきこの街に着いたばかりなんだ」


 明るい笑顔で握手を求めてくる。

 何だか都会の人って感じで垢抜けてて、しかもちょっとイケメンで、私はいったいどうしたらいいのか分からなくて、でも、勇気を振り絞って彼の右手を握った。


「私は陽子。よろしくね」


 彼の顔を見ながら言う事ができた。でも恥ずかしくてまた下を向いてしまう。


「もう一度聞くけど、一人で何やってたの?」

「一人で泳いでた」

「潜ったりしてたの」

「うん」

「何か見つけたの」

「うん」

「見せてもらってもいいかな?」

「うん」


 私はクーラーボックスの中にあるウニを見せた。


「へえ。これがウニなんだ。実物は初めて見たよ」

「そうなの」

「ああそうさ」


 都会の男の子。この辺じゃあ当たり前なんだけど彼は初めてだと言う。私は海の事をもっと知ってほしくて彼に提案した。


「一緒に探そうか? 潜ったら結構見つかるんだ。サザエやアワビも見つかるよ」

「へえ。そうなんだ。でもね。僕は泳ぎが苦手なんだ。潜水なんてとてもできないよ」


 また照れくさそうに頭を掻く。ああ、これは彼の癖なんだ。

 イケメンさんの可愛らしい癖を見つけた事で、私は緊張から解放された。


「苦手なんだ。そうなんだ。じゃあ、私と練習する?」

「え? いいの?」

「うん」


 私は彼の手を引き波打ち際へと向かう。彼はTシャツを着たままで海に入りバシャバシャと泳ぐのだけど、水しぶきを上げるだけで全然泳げていなかった。


「これが僕の実力さ」

「うふ。教えがいがあるわ」


 まずは海水に顔を浸ける事から。そしてバタ足。彼は私の言う通りに、一生懸命練習してくれた。


 彼と過ごす時間は楽しくて、私はついつい時間が経つのを忘れてしまった。海に入ってから4時間が経過していた。を1時間以上オーバーしてた。


「ごめんなさい。私、そろそろ帰らなくちゃ」

「分かった。もう日が傾いてきゃったしね。明日も会えるかな?」

「多分大丈夫だよ」

「じゃあ僕も水中眼鏡を用意して、ウニやサザエを狙ってみようかな?」

「うん。頑張ろうね」

「じゃあ」

 

 彼とはそこで別れた。

 私は自宅まで走って帰った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る