第4話 海斗と陽子

 去年の休暇中にとある田舎を訪れた。

 戦場でのストレスを解消するために、定期的な保養が必要とされているからだ。


 そこで出会った少女の事が胸の中を独占した。


 こんな状況で戦えるのか。

 そもそも、戦闘用人造人間に恋心など芽生えるのか。


 そんな疑問が頭の中をよぎる。


 しかし、その解答など得られるわけがない。そして、自分の機体は撃破されAIのパートナーを失った。


 そして今年もこの場所へと訪れた。

 陽子と会えるかもしれないと、淡い期待を抱きながら。


 三日間滞在したが陽子に会う事は無かった。

 そして僕は再び戦場へと戻る。



「敵機動部隊展開中。早急に対応されたし」

人型機動兵器グリフォン部隊は順次発艦。早急に展開せよ」


 着任早々実戦とはついていない。

 僕は先の戦闘で失った有機AIコンピューターの補充を受けることができた。


「僕は海斗。君とは初実戦になるがよろしく」

「私は陽子。よろしくお願いします」


 陽子?

 

 陽子だって?


「陽子って。あの陽子ちゃん?」

「……はい。陽子です。あの海斗さんなんですね」

「ああ、そうだよ。海斗だ」

「もう会えないと思ってた」

「僕もだ。でも君と一緒なら生き残れる気がするよ」

「私もです」


 こんな偶然があって良いのか。あの夏の日に出会った少女と一緒に戦場にいる。

 

人型機動兵器グリフォン025発艦します!」


 僕の機体は宇宙空間に放り投げられた。

 今から敵の機動部隊と交戦するんだ。地球を守る為に。



 人類がクローンを戦場に送り始めて数百年が経過した時代。その時は既に多種多様な機能を持つ人造人間が生産されていた。陽子と海斗もその人造人間の一人だった。

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