第2話  愛しい君 (ジオ様視点)

俺には前世の記憶がある。



こんな事人に話すと笑われるかもしれないけど、今回で3度目の転生だ。





1度目は古代ギリシャの様でいてもっと文明が進んだ時代だと思う。魔法と言うものがあったし、生活にも困らないことから、文化は結構進んでいたと思う。

その辺は結構あやふやなんだ。

俺の中にある記憶は一人の女性が大半をしめている。


12歳の時に婚約をした。

政治的な理由だったと思う。

最初は不安で仕方なかった。

俺の中で女なんてものはロクなものではない印象だったから。

母はいつも濃い香水の匂いがした。

抱きしめられた記憶なんてないし、褒められた記憶もない。いつも優秀な年の離れた二人の兄たちと比べれられて、けなされていた。俺の体つきは騎士の父や兄たちと違ってヒョロくて身体も同じ年頃の子に比べると小さかった。

父はほとんど家に帰ってこなかったし、母は母でよそに男がいる様でほとんど家にいなかったので、ほとんど乳母に育てられた。

兄たちは出来損ないの俺をいないものとして見ていたが、時たま顔を合わせると憂さ晴らしにと殴られたり蹴られたりした。

たまに家族がみな揃う時も、ピリピリした空気が漂っていて食事もなかなかノドを通らなかった。

俺はいつも顔色を窺って生きてきた。

家族はみな短気な者ばかりなので、機嫌を損ねると何をされるか分からないから。


そんな家庭で育ったので自分が結婚してもいい家庭が作れるとは思えなかった。



ーそして12歳のあの日、彼女に出会った。



「これから会う子はお前の婚約者だ。婚約話が成立するまで絶対に機嫌を損ねるな!それくらいしかお前には使い道がないんだから」

と父に釘をさされながら連れてこられた庭園で、ビクビクしながら顔を合わせた少女は、


ーとても美しかった


「シーノ・サンダーです。よろしくお願いします」

そう言って綺麗なカーテシーを決めた次の瞬間、満面の笑顔で駆け寄って俺の手を握った。


その瞬間彼女に恋をしていた。

人に笑顔を向けて貰えたのはいつ以来だろう。

以前に誰かに手を握ってもらったことがあっただろうか?記憶にない。

人の手とはこんなにも暖かいのか、と思うとともにその温もりに何故だか涙が出そうになった。


その日からシーノは俺の全てになった。


シーノは俺に自信をつけさせてくれた。

俺は毎日の様にシーノの家に遊びに行って、一緒に家庭教師に学んだ。シーノは魔法が得意で将来魔術師になるんだととても頑張っていた。

残念ながら俺には魔法の適性がほとんどなかったので、体術を学んだ。そのうち剣術の適性があることが分かって一生懸命がむしゃらに訓練した。

シーノに置いていかれたくなかったから。

それに俺が騎士になって将来王城に勤められれば、魔術師になったシーノと少しでも長く一緒にいられるかと思って。


伸び悩んでる身長も、たくさん食べてたくさん寝ればすぐに伸びるよと、会うたびにお手製の軽食を持ってきてくれた。貴族の女性が料理を作るのは稀だ。料理人を雇う余裕がないのかと周りに揶揄されることもあっただろうに、シーノは全然気にした様子も見せなかった。

少食だったけれど、どんどん食べる量も増えてきてシーノの言った通り身長もどんどん伸びていった。


シーノは嬉しい時、俺が沈んでる時、いつも抱きしめてくれた。

人の温もりを知ったのも優しさを教えてくれたのも、全てシーノだった。



それから朝起きて、夜寝る時までシーノのことを考える様になった。


シーノはもう起きたかな?

シーノはご飯何食べたかな

シーノは僕のこと少しでも考えてくれるかな

シーノはもう寝たのかな


俺の中にはシーノだけだった。

それだけで満足だった。



それから数年経ち、俺の身長はものすごい勢いで伸びていった。鍛えているので筋肉も結構ついた。

それと共に俺の周りには女が色目を使ってくるようになった。

身長が伸び出してから俺がモテている!とシーノは不満をこぼしていた。

その時はいつも穏やかなシーノがヤキモチを焼いてくれたのが嬉しくてあまりフォローしていなかった。

それに、シーノは義理の弟を溺愛していたので正直どっか面白くないと感じていたから、同じようにヤチモチを焼いてくれたことが嬉しかったんだ。



ーこの時シーノの不安をちゃんと取り除いていれば......


次々やってくる女に最初は戸惑ったけど、少し優越感があった。

それと同時に、背の低い時は今まで見向きもしなかったくせにと、少しの嫌悪感も感じた。

男にしなだれかかる母の姿を思い出して、復讐心が湧いてきた。

期待させてこっぴどく振ったらどうなるかな。

なんて考えが湧いて出た。


ーこれが俺の二つ目の過ちだ


「ねぇ、ギーシュ様」

女が腕に絡みついてきた。

香水の匂いがキツくて気持ち悪い。

「なんだ?」

「私をあなたのモノにして下さいませ」

ぁあ、三男とはいえ公爵家だからな俺は。そっち狙いか。

「というと?」

「婚約者がいるのは分かっております。ですので愛人や妾でもいいので、側において下さいませ」

女は胸を押し付けてきた。

ぁあ、気持ちが悪い。

この不快な生き物をどうやったら地獄に落とせるだろうか。思案しながらそちらに顔を向ける。


カタン!


物音がしてそちらを振り向くとシーノがいた。

大きな目が溢れんばかりに見開かれていた。


「....なに、してるの?」


早く弁解しなければ!それなのに焦って言葉が出てこない。

すると、隣にいる女が口を開いた。

「ギーシュ様が私を第二夫人にして下さるそうで」

その時初めてまだ腕にしがみついている女に気がついた。


何を言っているんだこの女は!!


すぐに振り払って弁明する

「そんなことは一言も言っていない!!」


「....でもっ、こんな所で女の人と2人で何していたの?」

シーノの瞳からは涙がこぼれていた。


「この女が勝手に入ってきただけだっ!俺がいつも休憩中ここにいるのは知っているだろう?」

必死に言いつのる。


「でも私が触れても嫌がらなかったわ」

女が横から口を出す。


「っ!!」

いかにも何かしてましたと含ませた言葉に、シーノの顔が歪んだ。

「シーノ!!待ってくれ!!」

部屋を飛び出していくシーノを追いかけようとすると、ドンっと後ろから抱きしめられた。

「行かないでっ!」

殺意がわいた。

女を突き放して腰にさしてある剣を抜いて突きつけた。

「俺が愛してるのはシーノだけだ。金目当てなら他を当たれ。二度と俺とシーノの前に現れるな!」

そう言い捨てて部屋を出た。



シーノ

シーノ

シーノ


どこだ。

探している間に頭の中でシーノに嫌われたらどうしようと怖くなった。



君を失ったら、生きていけない。



生きていけないんだ。



やっと見つけて逃げようとするシーノを力ずくで抱きしめた。

何度も何度も誤解だと愛しているのは君だけだと伝えた。愛人も妾も第二夫人もいらない!君さえいてくれればいいんだ!と伝え続けて、やっと信じてくれた時は涙が出そうだった。いや、実際に少し泣いていたかもしれない。



シーノの中に不安を募らせていた所に、今回の出来事はとても尾を引いた。


その後俺にこっぴどく振られた女は腹いせに騒ぎ立てた。身体の関係を持ったのに婚約者にバレた途端捨てられた!と。

まわりの目が厳しいものになった。

と、同時に今まで様子見をしていた尻軽女たちが一夜の楽しみならいけるのではないかといい寄って来るようになった。

監視の守衛に金を握らせて夜中に部屋へ忍び込むものまで出てきた。



噂が出るたびにシーノの元へ弁解に行った。

シーノは苦しそうにしながらも信じてくれた。

いや、信じようとしてくれた。


俺自身も疲れ果てていた。


そのうち、シーノから俺に会いに来る事が減った。


作り笑いの仮面を貼り付けて、本当に笑いかけてくれる事もなくなってしまった。


どうしたらいいのか分からなくなった。


どうすれば前のようにこっちを向いてくれる?


どうしたら笑顔を見せてくれるんだ。


嫌われてしまったのだろか。


婚約解消の話は何度かでた。けれどその都度想いを伝えて止まってもらっていた。


君を失ってしまうかと、不安で仕方がない。



休憩中にシーノに会いに行く。


あまり嬉しくなさそうだ。


以前だったら喜んで受け取ってもらえた花束も、あまり興味がなさそうだ。


「花束ありがとうございます。ジオ様はお忙しいでしょう?もう戻らなくては........」


そんなに俺と一緒にいたくないのか?


その時、ドア越しにソファに腰掛けるシーノの弟のリュカの姿が見えた。

カッとなって叫んでしまった。

「リュカはよくて俺はダメなのか?!」

俺は休憩用の執務室の中にも入れてもらえず、扉先で追い払われるのに、リュカは君と昼食を食べるのか?

嫉妬が湧き上がる。落ち着け。落ち着くんだ。

余裕がなさすぎる。

ダメだ。これ以上ここにいたら酷い言葉を投げつけてしまうかもしれない。

困った顔をしているシーノに声をかける余裕もなくその場を去った。

その日から、シーノは本当はリュカの事が好きなのではないのか?と妄執に取り憑かれるようになった。


1つ良かったことは、凄みが増して周りに当たり散らす俺の元に女が寄り付かなくなった事だった。



それからしばらくして王城にスパイが入り込んで国王の命が狙われるという事件が起きた。

幸い王族の誰一人として怪我をすることはなかったが、騎士の一人が重傷を負った。


そして、他にも隣国のスパイらしき人物が入り込んでいるという事で証拠集めに走り回っていたためシーノと会う時間はほとんど持てなかった。


ある日、国王から直々に話があると呼び出しがあった。

なぜ俺が?と疑問に思ったのだが、第一王子も首をひねっていた。


そこで、手引きしたらしき人物が見つかったのだと聞かされた。その女は侍女として入り込んでいるらしい。

でも、何故その話を俺にするのかがわからない。


宰相のウーノは言った。

「君は沢山の浮名を流しているようだ。件の侍女を誘惑して情報を聞き出して欲しい。自白すれば捕らえられるのでな。」


ギョッとした。

噂は全て真実ではない。

口説くどころか、婚約者の誤解すらろくに解けない口下手な男だ。即座に「お断りします」と答えた。

不敬だ!と周りに言われたが、これ以上シーノに誤解されるような行動は絶対にしたくない。

だが、知ってしまった以上断ることは許されない。王命だと言われてしまえば、もうどうしょうもなかった。

自分からシーノ以外の女に触れる?

そんなの吐き気がしてくる。


「ギーシュ殿は見目がよいのでな。ただ笑って話しかけるだけで釣れるだろうよ」

と宰相が嫌味な笑顔を送ってくる。

ぶん殴りたくなる衝動を必死で我慢した。


侍女を呼び出す場所は今は使われていない古い資料室

に決まった。女はすぐに誘いに乗ってきた。

武器や毒物など持っていないか確かめておきたい。

気が進まないが誘惑をする事になった。

「でもギーシュ様には婚約者がいるではありませんか」

そう言いながらも俺の服に手をかけてボタンを外そうとしてくる。


そうだよ。愛しい婚約者以外に触られたくないんだ。


やんわりとその手を引き剥がしてこちらが脱がせるそぶりをする。実際は武器を隠し持っていないかの確認だ。

「我が婚約者は俺のことが大好きでね。浮気しても結局は許してしまうんだよ。だから一緒に楽しもうよ。」心にもない事を口にする。


その時


カタン


音がした方を振り向くと、シーノがいた。


何故シーノがここに?

何でいつもこんなタイミングなんだ!

それにここには人が来ないハズじゃなかったのか。



いや、そんなことよりも


俺は今何を言った?!



「あなたは何度私を裏切れば気がすむのですか」


近寄ろうとする俺に向かって雷の攻撃魔法を打たれて唖然とした。攻撃魔法は直接俺に向かってではなく、牽制込めて足元に打たれたんだが、シーノが俺・に・向・け・て・攻撃魔法を打ってきた事にショックを受けた。


そして涙を流しながら憤るシーノを見て血の気がひいた。


件の侍女が怯えて逃げ出したのも気が付かなかった。


「婚約は解消致しましょう。もう2度と私の前に現れないで下さい!」


ダメだ!

それだけはっ!


走り出しそうなシーノを引き止めようと伸ばした腕を振り払われた。


「触らないでっ!!」


本気の拒絶だった。

ショックで一瞬フリーズしてしまったが、何とかドアの前へ先回りする事が出来た。


「どきなさい!!今度は確実にあてますよ!」

シーノが雷の攻撃魔法を右手に纏う。


もう俺の話は聞いてくれないのか。

何を言っても耳を傾けてくれなさそうだ。


王命だろうが機密だろうが俺にはもう関係ない。

シーノを失うくらいなら全てを話して罰を受けよう。

それくらい俺にとってシーノは大事なのだ。


ー失ったら生きていけない。


「愛してるんだ」

俺の全てを込めた言葉も、目を閉じ、耳を塞いで拒絶された。

それは俺の全てに対する拒絶だった。


心の中では絶望が渦巻いていた。


シーノを失ってしまうのか

捨てられて一人で生きて行くくらいなら



ー君の手で、殺してくれないか。



どいてくださいと叫びながら、その腕に纏う雷の魔法を美しいとさえ思える。


俺はその腕を掴んだ。


シーノの魔法で死ねるなら本望だ。


全身をビリビリとした衝撃が駆け巡る。


「な、何をしているんですか!死にたいのですか?!死なずとも、あなたは騎士なのに利き手がダメになってしまうところでしたよ!」


シーノは優しいね。

憤って憎しみの目で俺を見てるくせに、俺が触れた瞬間慌てて魔法を打ち消した。あと一瞬でも遅かったら俺の心臓は止まっていたかもしれない。

右腕からは煙が上がっている。


「.......それでもいい。利き手が使えなくなったら君は優しいからずっと側にいてくれるだろう?」



本当にそうなったらいいのに。

愛してもらえなくったって、側にいて欲しいんだよ。



「なぜですの......何故そこまでするほど私をそばに置きたいと思っているのにどうして浮気するのですか?!!何度も何度も何度も!!私がどんな思いで側にいたとお思いですか?!私は人形ではないのですよ。心があるのです。傷付きます!!もう沢山です!!あなたなんて2度と女性を抱けなくなればいいんです!」


小さな魔法陣が浮かび上がる。

ボールを投げるように腹に打ち付けられた魔法が痛くて呻いてる間に、シーノはドアノブに手をかける。


何とかすがるように、手を伸ばすがまたしても振り払われる。胸がチクリと痛んだ。

ぁあ、でも君は触らないでと払いのけながらも俺の右手に癒し魔法をかけてから出て行くなんて。


本当に君は優しいな。


そして凄く残酷だよ。


利き手が治らなければ君が側にいてくれる未来への希望があったのに。


痛む胸を押さえながらうずくまる。


俺はずっとシーノを傷付けてたんだな。

君の叫びを初めて聞いた。

胸が張り裂けそうだ。

次から次へと湧いてくるくだらない噂話も、面白おかしく脚色されて大きくなっていって、

言葉足らずなために上手く弁解もできない。

信じようがないよな。

むしろこんな疑わしいやつのそばに今までよく居てくれたと思うよ。

最愛の人に安らぎすら与えてあげられないなんて。

俺はいつも自分の事ばかりだ。

自分の事でいっぱいいっぱいで、シーノの優しさに甘えてばかり。

俺が君をそんなに傷付けていたなんて......

「...ハハっ...自業自得だな」

涙が流れるに任せる。



ーそれでも、君を諦めきれないんだ




それから何度もシーノの元へ行ったがリュカや魔術師たちの妨害があって会って話すことは叶わなかった。



それからとうとう戦争が始まった。

戦力がこちらの方がやや不利な状態であることから、魔術師や騎士が国を出る者が多数出たため、少しでも戦力になる者を集めていた。

そんな中、シーノから婚約解消が認められ受理されたとの手紙が届いた。

俺は査問会へ直接出向いて事情を聞いた。

普通は双方の意見を聞いてから合意の印がなければ受理されないはずなのだ。

すると、宰相のウーノが出てきて信じられない事を口にした。国王が認めた、と。

少しでも戦力である魔術師を確保するために願いをきいたのだという。

ふざけるなっ!と叫びそうになるのをグッとこらえる。

シーノと俺がこじれた原因は王命で動いた件が原因であるのに、さらにあの後シーノの誤解を解くため真実を告げたいという俺の願いをすげなく却下したのだ。理由は、例の侍女を逃したためまだ証拠がつかめていないからだという。

さらに、シーノを前線に送り込むために俺との婚約解消を許可したのだという。

全てを知っていながら。黙って利益だけを優先したのだ。

頭が沸騰しそうだった。

俺たちの心はどうでも良いのか。

こんなヤツのためにシーノは前線で命をかけるのか。

ダメだ。

連れて逃げよう。

そう決めてシーノを探した。

もう前線へ赴いた後だという。


途端に激しくなる戦火。

急に攻め入られてパニックになる人々。

向かってくる敵と応戦しながらシーノを探した。

結局見つけることができたのは我が軍の勝利の声を聞いてからだった。

やっと見つけた!走り出すと同時にシーノの体が揺れた。



ー倒れたシーノは息をしていなかった。



魔術師は騎士より後ろで援護として応戦するのに、シーノの身体は血まみれだった。





シーノが死んだ。




俺は咆哮を上げた。

獣のように。

その声も、きっと周りの歓声にかき消されたのだろう。



しばらくして、誰かが肩を叩いた。

何か話しかけられていたが、何も分からなかった。



俺はシーノを抱いて離さなかった。

誰かが埋葬をと声をかけてきたけど、渡さなかった。



そこからどうなったのかしばらく記憶がない。

思い出したくないのかもしれない。



ただ分かるのは、俺の中にはもう何もない。



俺はからっぽだという事だ。



死ぬ気力も生きる気力もない。



少しだけ正気を取り戻したのは、腹にある魔法陣を見た時だ。ここにシーノが生きた証がある。


魔術師によると、半年から一年の間は男性の機能が停止するとの事だった。

その期間が過ぎれば自然と魔法は解けるが、すぐに解除するにはかけた本人しかその魔法は解けないとの事だった。

魔術師は気の毒そうな顔をしていたけれど、俺が

「この印を永遠にここにとどめるにはどうすれば良いのか?」と聞くとギョッとした顔をした。

「そんな事をしたら一生女を抱けなくなるぞ!それどころか子どもも望めなくなる」と猛反対した。



それでいい。



それがいいんだ。



むしろなぜもっと早くこういった魔術がある事に思い至らなかったのだろうか。

知っていれば間違いなくシーノにかけてもらっていた。俺がシーノのものだと証明できたのに。



唯一俺を愛してくれた優しい人はもういない。



ならば生涯、シーノの残した証とともに生きていこう。

君の怒りと嫉妬と独占欲を表した魔法陣をこの目で見ながら。



魔術師は俺の肉体ではなく魂にシーノの魔法陣を定着させる事で生涯そこに刻まれるようにしてくれた。


魔術師は最初は何度も俺を説得しようとしたが、最後には折れてくれた。

ありがたい。


これは俺が心から望んだ事。

君のくれたものだから愛おしいんだ。



その後国を出て旅をした。

放浪の旅をしながら無謀な事を沢山したから、俺はすぐシーノの元へ逝く事となった。



細かい事はあまり覚えていないが、事切れる瞬間まで腹にある魔法陣に執着していた事だけは覚えている。




ーこれだけは手放したくない!と。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




後書き

ジオ様.....不憫_:(´ཀ`」 ∠):


ジオは幼少期は僕っ子でした。

カッコいい人に憧れて俺と言うようになりそれが定着します。シーノの事をカッコつけて”おまえ”と言ってみたりしますが、素になるとやっぱり名前呼びや“君”になっしまいます。


ちょっと長くなってしまったのでキリのいいところで投稿します。


ここまで読んでくれた方へ感謝を!

少しでも楽しんでくれたら嬉しいです。

ありがとうございます〜!

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