何度生まれ変わっても

一ノ瀬双葉

第1話今世こそ愛されたい

「シーナ・オリビア嬢!私と踊って頂けませんか?」



ああ、またですの。



今世ではこの人と関わらず生きて行こうと思ってましたのに.......



けれど、私は学習しない大ばか者です。


だってこの手を取ったら辛い思いをするって分かっていながら、抗えないんですもの。



「ええ、喜んで。」

愛しい人の青い目を見つめながら手を差し出す。


きっと今世でもこの男を愛してボロボロになるのだと予感しながら。







ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




私、シーナは2つの前世の記憶を持っております。

今世で3度目の生ですの。


1度目の生は、古代ギリシャの様な雰囲気で全く異なる文化を持っていた国でした。

魔法技術が発達していて現代科学に負けないくらい便利だなと思います。

服装や食事の面においては古代そのもといいますか、今考えると良くあんな娯楽のないところでやっていけたなと考えてしまうのです。大体が一枚の布を身体に巻きつけるだけの質素なものでございます。オシャレも何もあったものではありません。

ある程度の年齢になると男女ともに狩りのノウハウを教わります。

ですが、建物に関してはこれでもかというほど細部まで施された彫刻の技術に、アルハンブラ宮殿を思い起こさせられます。

使っている素材のせいかと思いますが、建物のほとんどが真っ白で壮観でございます。

ただ単に、建物に色をつけるという発想を持っていなかったというだけなのでしょうけれど........




私の国の名をイルアニア王国と申しまして、とても情勢が不安定でございました。

隣国からいつ攻め込まれるか分からない状態の中、国内でも派閥が割れてごたついていたようです。

よくある事なのでしょう。


そして、わたしは12の時に婚約を致しました。


第一王子派と第二王子派とで分かれておりまして、

我がオリビア伯爵家は中立派だったのですが、第一王子派に取り込みたかったのだと思います。

この辺のところは少しおぼろげにしか記憶しておりません。

きっと女だったのでそういった話を聞かせないようにされていたのでしょうね。


その婚約相手が、ジオ・ギーシュ公爵様でございました。


この時、婚約のお相手がジオ様でなければ私はこんなにも苦しまずにすんだのに........


しかしながら、同時にこれほど人を愛せたことに感謝すらしているので、ほんと我ながらどうしようもないですね。

念のためですが、私はMではございませんよ?



ジオ様と初めてお会いした時は私は雷に打たれたように衝撃を受けました。

物理的に打たれたのではございませんよ?

それくらい急に恋に落ちたのです。


12歳のジオ様は私よりも身長がお小さくあられて、とっても可愛いのです!!

2度言いますが、とーっても可愛いのです!!


不安そうに揺れる青い目が可愛らしくて、思わず手を握って微笑んでおりました。

急に抱きしめたら怖がられますからね、少しずつです。



「シーノ・サンダーです。よろしくお願いします」


そう、これが最初の生での私の名前です。


警戒してビクビクしている小さな婚約者が徐々に私に懐いてくれるのが嬉しくてたまりません。


あ〜可愛いすぎます。


ジオ様は優秀なご兄弟の中でお育ちになったようで、ご自分はダメだと思いながら生きたおられたようで。

会うたびに褒めてあげました。

良いところをすかさず褒める!これ鉄則にございます。そのおかげか、だんだん活発になり青年期に差し掛かる頃には身長も伸びて周りにキャーキャー騒がれるようになりました。


ーーこれが私の一番最初の失敗です。


自信を持ったジオ様は寄ってくる女性と関係を持つようになりました。

おそらくですが、最初は私以外から認めてもらえるのが嬉しかったのだと思います。

そして寄ってくる女性をジオ様はお優しいので跳ね除けられなかったため、押しに押されてずるずる関係を持ってしまったのでしょう。



ショックでした。

本当に。

胸がえぐれるかと思ったくらいに....



両親や侍女たちにバレないように隠れて泣いていましたところ、弟のリュカが慰めてくれました。

リュカは養子なので血の繋がりはないのですが、私達は本当に仲良く育ちました。両親にも友人にも言えないこともリュカには話せました。

リュカがいたお陰で私は狂わずにすんだのでしょう。



ジオ様は私に頭を下げました。

「もう2度とこんなことは起こさないから」と。

その約束が守られることはありませんでした。


ジオ様の浮気の噂を聞くたびに、私の中で何かが壊れていくような無くなっていくようなそんな気持ちになりました。

何度か婚約解消を申し出ましたが

「愛しているのはおまえだけだ!」と一生懸命言われるとほだされてしまいます。

だってこの方本気で言っているんですもの。


あまりおおやけにされていませんが、私は【真実の目】を持っております。

真実の目は、そのまま相手の言っている嘘を見抜くことが出来るのです。

まさかその能力が仇になるとは思ってもおりませんでした。


ジオ様は嘘をつきません。


私だけを愛しているという言葉も、浮気はしないという言葉も全てその時は本・当・の・言・葉・を言っているのです。


だから私は今度こそ、今度こそと期待して裏切られるのです。


きっと迫られると断りきれないのでしょうね。



ーー怒るのも傷つくのも、もう疲れました。



その度にリュカが支えてくれました。

両親はジオ様の事を知っても、所詮は政治的な繋がりを持つための婚約なので諦めなさい、との事です。

私はただ抱きしめて欲しかっただけなのですが...

一言でもいたわりの言葉があれば、とその頃は二重の意味で傷ついておりました。

動揺する私をリュカが寝るまで手を握ってくれました。


そのうち私はジオ様が浮気をしても何も言わなくなりました。

最近では心が鈍っているように感じます。

驚いたり、泣いたりと言った動揺する事があまりないのです。

きっと私は自分の身を自分で守るために感情に蓋をしていたのだと思います。



私から会いに行かなくなると、今度はジオ様の方から会いに来るようになりました。

リュカは「どのツラ下げて!」と呟いておりますが、コラコラおやめなさい。不敬罪で捕まりますよ。

ジオ様は全く気づいていませんでしたが......

この方は頭はいいんですけど、自分の感情に素直すぎるのです。心がおもむくままに行動致しますので、その後のことを考えていません。

よく言えば無邪気とも申しますね。

でもそのフォローをするこちらの苦労を考えて頂きたいものです。


今回は終始リュカが私の側についていてくれました。ありがたいです。2人っきりにされたら、ジオ様に何を言ってしまうか分からないですからね。

ですが、ジオ様はリュカの方をチラチラ見ておりましたね。何か眉をひそめていましたが無視をしました。

上辺だけの笑顔を張り付けて対応いたしました。

疲れますね。


ここまでされても私はジオ様を手放す事が出来ずにいます。何度裏切られようとも、傷つけられようとも、愛しているのです。



18歳になり、魔力が高いこともあって王城で魔術師として働くことになりました。

ジオ様は第一王子の元で働いていますので、たまにすれ違いますが、お互いに忙しいので昔のように自分から会いに行くことはなくなりました。

何か焦っているように花束を持ってご機嫌を取りにきたりします。

本当は飛び上がるほど嬉しいのですが、長年のポーカフェイスのスキルを活かして穏やかに対応いたします。その時ちょうどリュカがお昼を忘れた私にランチを届けに来てくれていましたので、バチバチと穏やかでない空気が流れて居たたまれなくなってしまいました。


「花束ありがとうございます。ジオ様はお忙しいでしょう?もう戻らなくては......」


とやんわりお引き取り願おうと思ったのですが、すごい不機嫌になってしまわれました。

どうしたのでしょう?

ジオ様のお立場では仕事を抜けてくるのもマズイと思うのです。純粋に第二王子派に付け入る隙を作ってほしくないと思ったのですが、ジオ様はそうは思わなかったらしく、


「リュカはよくて俺はダメなのか?!」


と聞いてこられました。


困った顔をしていたら、もういいっ!と怒って帰ってしまいました。

この頃からでしょうか、ジオ様の浮気の頻度が下がった気がします。

単純に仕事が忙しくてそんな暇がないのでしょうけれど、私は嬉しくてしょうがないです。


ずっとそのままでいて欲しいです.....


ですが期待して裏切られた時にまた辛い想いをするのは私なのであまり考えないようにいたしましょう。


百面相をしている私の横でリュカが手を握ってくれます。リュカの方が泣きそうではないですか.......

私は可愛い弟にいつも心配ばかりかけています。

姉らしい事をなにも出来ていないどころか、いつも支えてもらってばかりで......と言うとリュカがバカっ!と言って優しく笑うのです。

本当にできた弟です。

リュカには是非幸せになって欲しいです。



とある日、王城を歩いておりましたら使ってない部屋から声が聞こえてきました。


「おかしいですね。この時間この資料室は誰も使っていないはずなんですが......」


最近王城にスパイが入り込んだと騒ぎがありました。

幸い王家の方々にお怪我はありませんでしたが、どこからか隣国の者が入り込んでいる可能性があるとの事で、私達魔術師にも厳重な注意を!とよびかけられました。私は魔術師においてこれでも優秀な方なので、もし戦になった場合前線に出る事が決まってしまいました。

本当に怖い事です。ですが、必要とされているのなら、国のために頑張りましょう。

そう決めて、家族に報告すると初めてお父様に褒めて頂きました。とても嬉しかったです。

ですがリュカは考え直して欲しいと何度も言ってきます。


ーああ、私はあなたを泣かせてばかりですね。



そんなこともあって、使っていない資料室へと気配を消して近づきます。

いつでも魔法で対応できるようにしておきました。


静かに部屋の中に入って、覗いてみると男女が抱き合っていました。

なんてことでしょう。私はデバガメをしてしまいました。恥ずかしいです。気づかれないうちにすぐに出なければ!と踵きびすを返したところに、男性の声が聞こえてきました。


「いいだろ?君が俺を見ていたのは知ってるよ。そのつもりでついてきたんだろう?」


ピタっ!と足がまとまります。


ダメです。そのまますぐにその部屋から出なければなりません。そう思うのに足がすくんで動いてくれないのです。


声の主は我が婚約者のジオ様でした。


女性が言いました。

「でもギーシュ様は婚約者がいるではありませんか」


ジオ様はフッ!と笑って女性の胸に手をやります。

「我が婚約者は俺の事が大好きでね。浮気しても結局は許してしまうんだよ。だから一緒に楽しもうよ」

女性の下品な笑い声が耳の中に響きます。



気づいたら私は2人の前に出ていました。

怒りで目の前がよく見えません。

急に出てきた人物に2人は息を呑み、慌てて離れました。

「あなたは何度私を裏切れば気がすむのですか」


ジオ様が慌てて私に近寄ろうとします。

私は雷の魔法をジオ様の足元に落としました。

女性が悲鳴をあげて部屋を出て行きましたが、私は気がつきませんでした。それほど心の中は荒れていました。怒りと悲しみと絶望で。


当たらないにしても、自分に魔法を打たれた事に唖然としているジオ様は

「おまえが俺に攻撃魔法を.......?」

と呟いていますが、私はその言葉で再びカッとなりました。


「むしろなぜ攻撃されないと思ったのですか?殺されないだけマシだと思ってくださいませ。婚約は解消致しましょう。もう2度と私の前に現れないで下さい!」


「ま、待て!シーノ!」

「触らないでっ!!」

そのまま部屋を出ようとする私の腕をジオ様が掴みますが、私はそれを全力で振り払います。


「なっ!」

なぜかショックを受けているようですが、お構い無しにドアの方へと足を向ける私の前に、ハッとしたように回り込みドアを背にとうせんぼされました。

自慢に思っていたジオ様の運動能力を、今回ばかりは恨めしく思います。


「どいてくださいませ!」

「ど、どかない!」


なんですって?!

今の私には怒りしかありません。


「どきなさい!!今度は確実にあてますよ!」

と右手を前に出し攻撃魔法の構えをします。


「待て!は、話を!話を聞いてくれ!!」

と手を伸ばしてきますが、触れられないように一歩下がります。


「私に触らないでと言ってますでしょう!?」

他の女に触れたその汚い手で気安く触れないで欲しいのです。ああ、嫉妬と怒りでどうにかなりそうだわ。早くここから出なければ。


再度触れるのを拒否されたジオ様はなぜか傷ついた顔をしました。

「なぜあなたがそんな顔をするのです!!傷ついたのは私の方です!!」

「愛しているんだ....シーノ!頼む」

私は目を閉じて耳を塞ぎます。

ここでまた【真実の目】であなたが本当の事を言っていると分かってしまったらまた揺らいでしまう。


「あなたの愛など信じません!」

ジオ様の言葉に被せるように言い放ちます。

「私はあなたに何度裏切られたでしょう。もう限界なんです。疲れ果ててしまいました。どうかもう私を解放してください」

ジオ様は顔を歪めながらも頑としてそこから動こうとしません。

「だめだ!」

「お願いですからそこをどいて下さいませ」

「だめだっ!」

「何故ですか!!」

1歩詰め寄る。

「今行かせたらもう2度とシーノは俺のところに戻ってこないだろう」


本当に泣き出しそうな顔をして訴えてきます。

ああ、やめて。

私はいつもあなたのその顔にほだされてしまう。

けれど、もう無理なんです。


「だから何故あなたが傷ついたような顔をしているんです!!」

右手に雷の魔法を纏わせます。

「どいてくださいませ!!」

今度は脅しではありませんよ。


「い、嫌だ!」

魔法にひるみながらも頑として退こうときません。

「何故ですか!早くどいてくださいませと言っているではありませんか!!」

ジオ様は雷魔法をまとった私の手をつかみます。

なんて事を!!

手が使い物にならなくなってしまいます。

それどころか....

「な、何をしているんか!死にたいのですか!?死なずとも、あなたは騎士なのに利き手がダメになってしまうところでしたよ!」

慌てて魔法を打ち消しますが、ジオ様の右手からは煙が上がっています。

「.....それでもいい。利き手が使えなくなったら君は優しいからずっと側に居てくれるだろう?」

額に大量の汗をかきながら、右腕を支えてハハっと笑うジオ様。


「....っ!」

言葉が出ません。

もうこんな人、嫌ですのに。

傷つくのはもう嫌ですのに。

苦しい思いなんてもうしたくありませんのに。

わたしは結局この人を愛する事をやめられないのです。


「なぜですの......何故そこまでするほど私をそばに置きたいと思っているのに浮気するのですか?!!

何度も何度も何度も!!私がどんな思いで側にいたとお思いですか?!私は人形ではないのですよ。心があるのです。傷付きもします!!もう沢山です!!あなたなんて2度と女性を抱けなくなればいいんです!」


怒りと勢いでジオ様に魔法を打ち付けてしまいました。


「ぅあっ!」

腹のあたりを抱えてうずくまるジオ様の横からドアノブに手を掛けます。


「ま、待ってくれ!頼む!シーノ」

掴まれた手を再度払いのけます。


「触らないでと申しましたでしょう。」

冷たい目でジオ様を見下ろします。

しかしながら少し後ろめたいので、利き手の傷は癒し魔法をかけてから勢いよく部屋を出ました。


走っているうちに涙が溢れてきました。

ジオ様はとても才能豊かで、見た目もとてもカッコいいのです。その地位も相まって寄ってくる女は沢山います。ジオ様は優しいので寄ってくる人をこっぴどく突き放せないのだと......

そう思っていたんです。

そう信じたかったのかもしれません。

だってあの方は私を愛しているという言葉に偽りがなかったから。

けれど違いました。

まさか私のジオ様への愛にあぐらをかいて浮気を繰り返していたなんて.........


ああ、辛い

消えてしまいたい。


それからすぐに隣国との戦争が始まりました。

怖気付いて逃げ出す騎士や魔術師がいる中、私は魔術師として国に貢献することを誓う上でジオ様との婚約解消をお願い致しました。

婚約解消が認められた旨を綴った形式的な手紙とともに、頂いた婚約指輪を同封してジオ様に送りました。その後会うのを断固拒否し、魔術師仲間やリュカも私が長年苦しんでいたのを知っていたので協力してくださいました。


ーそして


前線に立ち、我が国の勝利を確認した瞬間



ー私は力尽きてこの世を去りました。



本当は魔術師としての才能は一級ながら年齢が若いことから前線に立つのは反対の声も上がっていたのです。

ですが、私は死に場所を探していたのかもしれませんね。最後に、もうジオ様が他の女性と一緒にいる姿を見て苦しまなくていいと思うととてもホッといたしました。


私が当てつけた魔法によってジオ様は1年間女性を抱くことができない身体にしてあります。

その1年間は死んだ私を思って生きて下さいませね。

ふふふ

せめてもの反撃です。



最後に思ったのはそんな事です。

最後の最後まで想うのはジオ様の事ばかり........

私も大概大バカモノでございます。



次の世では別の人と素敵な恋愛をして幸せになりますわ。





ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




と、そう思ったのに

何でこうなるんですかーーー??!!!







2回目の生は地球という星の日本という国で生まれました。名前は、楠志乃。



子どもの頃からある男性の夢をよく見るんだけど、シルエットだけでイマイチ分からないのよね。

夢の内容も起きたらほとんど覚えていなくて、男の人が出てくるってだけ。

何か凄い悲しい夢を見ているようで、顔が涙で濡れている。両親や弟はそんな私を心配して何度か病院に連れて行ってもらったりしたんだけど、全然原因が分からなくて.......


特に、弟の龍が本当に心配性で、学校で虐められてるんじゃないか、とか色々聞いてくるんだけどそんな事全くないんだけどな〜

寝てる時よくベッドに潜り込んで抱きしめてくれてるみたい。


うちの弟、めっちゃ可愛いでしょ〜♪


いつか反抗期が来てクソババァ!とか言われるんじゃないかな〜って心配したりもしたけど、全然そんな気配もなく。

そんなこんなで高校生になっても弟とラブラブしてます(笑)


両親が共働きで不在がちなのもあって私たち姉弟は本当に仲良く育ったと想う。

私、龍がいないとほんとダメダメで.....たまにはお姉ちゃん風を吹かせたいんだけどなぁ。




そんな弟ラブ!な私を心配されてたりもしたけど、ついに!!彼氏ができたのです!!

高校2年になってやっとできました〜!わーい!

同い年で近くの男子校に通う神王ジオくんっていう子なんだけど、これがまたビックリするくらいカッコよくてね〜!ふふふ

それにとっても優しくて、毎日連絡くれるし、放課後校門前まで迎えに来てくれるからみんなに羨ましがられるのです〜。



ーそんな浮かれてる時もありました。



今日は神王くんが用事があるようで放課後デートができなくて、龍も委員会があるから一緒に帰れないとかで、一人寂しくぶーぶー言いながら帰っているところ。

歩道橋の階段を登っている時に、なんか上から男女の言い争う声が聞こえてきた。

なんだろ〜

こんなところでよくやるなぁ〜

なんて思っていたら、


え?


あれ神王くん?......だよね......

すっごいスタイル良くて美少女が腕に絡みついてる。


な、なに?


胸の中がザワザワする......


いやいや、ただの友達かもしれないじゃん!

って自分に言い聞かせてみるけど、自分の中で疑念が渦巻いてしまう。


足がすくんでその場から動けないでいる私の目の前で女の人が神王くんの首に手を回して


ーキスをした。


持ってた荷物全部が手から滑り落ちる。

ドサドサっとした音に男女は反応してこちらを見る。

神王くんがビックリした顔で私の名前を呼んだ。


私はとっさに踵を返して逃げた。

いや、逃げようとして歩道橋の階段を踏み外し宙を舞った。

「志乃っ!!」

後ろから神王くんの声が聞こえる。



落ちる瞬間、スローモーションのように感じた。

そして前世を思い出した。



ーぁあ、神王くんはジオ様だったのね。


私はまたあなたを愛して

裏切られたんだわ。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




そして3回目の生を生きております。


中世ヨーロッパのような様式で、魔法を使える事から考えると、ここは地球ではないのでしょうね。

前回では死ぬ間際に記憶が戻りましたが、今回は5歳くらいの時から夢を見るようになり、徐々に思い出し始めて今では前世と前前世の記憶もあります。

そこで得をしたのは、この世とは違う魔法技術の記憶と前世の科学の記憶。

これは上手く使えればきっとチートなんでしょうね。

魔法技術は問題なく使いこなせました。

しかしながら1度目の生は戦死したことから、あまり魔法で目立つのはやめておこうとおもいます。

まぁ、自分で前線を希望したのですけどね。

今生は幸せな結婚をして長生きしようと思います。

そのためにも、男選びは肝心ですわ!

わたしは前世も前前世も同じ人を好きになって破滅したので、今世ではもしジオ様(神王くん)を見つけても関わらないでおこうとおもいます。

まぁ、そんなに頻繁に巡り合うとは思えませんけどね。だってここは地球ではありませんし〜。




ーなんて思っていた自分を殴りたいです



よく考えてみてたら、前世は地球の日本という国でしたけど、前前世は古代ギリシャのようなところで魔法も使えたし確実に別の星ですよね。



そして今日17歳のデビュタントのパーティで声をかけられた人物を振り返って絶句してしまいました。







「シーナ・オリビア嬢!私と踊って頂けませんか?」




唖然とその方を見上げます。


.......まさか。

まさかそんな偶然があるものですか。


他人の空似です。


いいえ、わたしがあの方を見間違うはずがないわ。



顔には出てないはずですが、内心大パニックです。



私がなかなか返事をしないので目の前の男性は眉を下げて悲しい顔をしました。

「私ではお相手になりませんか....?」


「....っ!」


ず、ずるいです!反則です!そんな顔するなんてー!

それに周りの目もありますしね、その手を取るしかありませんでした。


「はい、喜んで」

にこやかな顔を作る。



それと同時に手を引かれホールの中心へと歩いて行く。



どどど、どうしましょう〜!

オッケーしてしまいました。

いや、あれ以外の返事のしようがなかったんですがね。


とにかく冷静に!

絶対に今世ではこの人を好きにならない!!

それは絶対だわ!!

今世では私だけを愛してくれる男性と長生きするのよっ!!それには男前はダメなの。

そう決めたんだから!



ホールへ着くと腕を引かれ男性の腕の中へと導かれる。



ちっ近いっ!!!近すぎません〜?!!



「硬いですね。緊張されてますか?」

「え、ええ。少しだけ。あまり人前で踊ることなどありませんので.......」

ダンスは得意なんですけどね。

最初の生では貴族に生まれたというのもありますが、2度目の生ではダンス部に入っていたので。

まぁ、ダンスはダンスでもジャンルが全然違いますが.....



「あ、あの.....少し近すぎではありませんか?」


と遠慮がちに言ってましたが、

「そんな事ありませんよ」と笑顔でかわされました。


あの耳もとで話さないでください!!

息がっ!息が耳にかかります!!


私がかつて恋い焦がれた人がまた目の前にいる。


抵抗しなければいけないのにどこかで喜んでいる自分がいるのが嫌になります。


あなたは唯一私を傷つける人

そして唯一愛した人


でも今世ではあんな想いはゴメンです。


ダンス中はステップだけに集中することにしました。

何か話しかけられても当たり障りのない答えを返す様にします。


1曲終わったら、次もいかがですか?と誘われたけれど足が疲れたのでとやんわりお断りをしてその場を後にしました。


私はとにかくここから離れなくては!としか考えられなかったので、足が痛いと言った割にはしっかりとした足取りで素早くその場を離れたのでした。




.

庭園に出ると息を止めていた事に気づき、ぶはぁ〜!と貴族らしからぬ声を上げてしまいました。

どうも前世の影響が強いようで時たま言葉や行動が粗野になりがちですね。

気を付けなければ!

と、先ほどあったことから気をそらしてみるけれど、それはあまり上手くいっていない。



「シーナ!」

後ろから呼ばれる声にギクッ!と大げさに飛び上がってしまいます。


「な、なんだぁ〜リューイかぁ〜」

ホッとすると同時に、名前を呼んだ人物が幼馴染である事に残念な気持ちが湧いてくるのを気づかないふりします。


「なんだとはなんだ!心配して来てやったのに」

リューイは心外だとばかりに、鼻をフンっとならします。

「心配?」

首をかしげる私にリューイはハぁ〜と息を吐きながら肩をすくめます。


欧米かっ!


つい突っ込みたくなってしまうわ。


「お前がまた何かやらかさないかこっちはヒヤヒヤしてたんだぞ!」

と半分笑いながら頭を撫でてきます。

なんだか子ども扱いされてるような気がしますが.....

まぁいいでしょう。お陰でなんだか気が抜けて楽になりました。リューイ様様ですね〜。


「ふふふっ、リューイありがとね〜」

と言うとリューイは別に!とそっぽを向きます。

ツンデレさんですね〜

本格的に笑い出す私を睨みつけるリューイ。


何がおかしいんだかわからずに、最後には一緒になって笑ってました。

後からジッと見られてる事に気付かずに..... 






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



後書き

シーナは最初の生では育ち方もあり、生真面目な性格。2度目の生では周りの影響で真面目だけどお気楽な性格。どっか抜けてたりします。

それらの前世の影響もあり、3度目の今世では頭の中でも口調がコロコロ変わります。


読んで下さってありがとうございます〜!!

とっても嬉しいです。

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