第14話
久々に自室でゆっくり出来た気がする。
明日の晩はパーティーだけど、用意は家の者に任しているので、のんびりしている。
ーとはいえ、アリスにどう言おうか……今回のてんまつ。
結局、銀行と取引先を抑える事は容易かったのだが、あの業突く張りの親族のうちの数人は、行方が分からなくなっていて……。
パーティーの時に何かしかけてこないとも限らない。
いっそ、騒ぎでも起こしてくれたら、一気に片が付くかな。
コンコン。
椅子に座って、考えごとをしていると、アリスの部屋につながるドアからノック音がした。
「どうぞ」
ドアから、ぴょこんと顔を出す。こういうところは、変わらないなぁ~。
「ノックなんかしなくても、入ってくればいいのに……」
「え?だって、着替え中とかだったら困るから……」
「そう?
ーで、何か用?」
ドアを閉めてアリスがこっちに来た。
「……なんか、する事無くて……。お勉強もマナーのレッスンも終わってしまって、先生からものんびりしてなさいって言われたんですけど……」
「じゃぁ、のんびりしたら良いのに」
俺はアリスの手をとった。
「まだ、俺といるのは緊張する?」
アリスは、フルフルと首を振る。
「ご両親が生きている時は、どういうふうに過ごしてたの?
まさか、あんなに忙しく家事にいそしんでたわけじゃ、無いだろう?」
「家にいる時は、宿題してたり、家事を手伝ったり、お友達と遊びに行ったり……。
ボーっと本読んだり」
「ああ…。本…小説とか?欲しい本あったら用意させるよ。それとも、一緒に買いに行く?」
「え?でも…小説ってあまり良い顔されないって…」
「遠慮しないの。変な遠慮はストレスになって、結局、一緒に暮らせなくなるから……。
俺も、これからは遠慮しなくなるだろうし……」
「はい。そうですね」
「敬語もやめよう。
俺たちは、恋人同士なんだから……。なんか、他人行儀だ」
「え…え……っと……」
俺は、繋いでる手の甲にキスをした。
「それとも、そう思っているのは俺だけ?」
「そ…そんな事……無い…です。でも……」
アリスは、言いにくそうに下を向いた。
「なんか…癖になってて…」
……なるほど。
まぁ学校でも、家庭でも、大人の人への態度としてそう教えるよな。
きちんとした態度と言葉づかいでいなさいって。
「それじゃ…おいおい、慣れてもらうとして。
パーティーが終わるまでは、それでもいいか…。それより、明日のパーティーの打ち合わせをしようか…」
「何かあるんですか?」
「うん。ちょっとね……」
俺は、アリスを引き寄せて、事のあらましを話しだした。
パーティー当日、早々と到着するお客様の対応に、使用人たちは右往左往している。
身内なので、遠くから来られているお客様の希望によっては、客間にお泊り頂いているので、その対応に追われているんだ。
さすがにお部屋に案内された後、屋敷内を無用にうろつく不作法者はいないので、一通りお客様が到着した後は、また、いつもの静けさを取り戻した。
でも、アリスには、昨日説明しておいて良かった。
夜会パーティーなので、夜始まるのだけど、アリスは夕方からやれメイクだの髪のセットだので、担当の女性たちに連れていかれてしまった。
それに比べて男の方の準備は、簡単だ。
俺は世話をされるのをイヤがるし、1人で出来るので、誰も付かない。
今日の打ち合わせを、ルフォールとあと古くからうちと付き合いのある警察関係の方々としていた。
何も無ければ、こちらからは何もしない。
だって、遺産関係も何もかも、今日全て片が付くから。
彼らに、何か思惑があっても…。例え、アリスや俺達を殺しても、今日の婚約パーティーが終わったら、もう遺産はエルヴェシウス子爵家ではアリス以外の人間が継ぐ事は出来なくする事が出来る。
エルヴェシウス子爵家の方々も、殆どの親族はもう丸めこめているのだけど、どこにでも、金に執着する人間というのはいるもので…。
そして、アリスには悪いんだけど、こちら側の人間が、目の色を変えて欲しがるほどの金額の遺産ではないので、残った方々さえ引いてくれれば、普通に暮らせるようになるんだ。
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