第9話
今日は、久々に家にいる。
夜にデートする事にしたので、昼間はのんびりだ。
………仕事はあるけど。
アリスは、掃除や洗濯をやっていて、慌ただしく働いている。
コンコンっと、ドアを叩く音がした。
「どうぞ。」
カチャッと少しドアが開いて、ひょっこり顔だけ出す。
「あの、お昼の買い物行ってきます。」
「あ? ああ。
ちょっと待って、俺も付いていくから…」
「へ?でも、すぐ近くだし、1人で平気ですよ。」
「ダ~メ。
何のために俺が会社休んでまで、ここにいると思ってるの。」
少し怖い顔で、言う。
「あっ。そうでした。
じゃぁ、お願いします。」
エヘッて感じで、言った。
夕方、ディナーの予約時間には、かなり早い時間から家を出た。
女性をトータルでコーディネイトできる店を何件か知っているが、その中から少しだけ大人向けのところを選んでおいた。
アリスは、男性にこういうところに連れてこられるのは初めてなんだろう、少し戸惑っていたけど。
服や靴等の小物を先に選んで、それに合わせてメイクとヘアーを整えてもらう。
スタッフに、少し年齢より上に見えるように頼んだ。
しばらく用意された椅子に座って、他のスタッフと
「ベルトラン様。お待たせいたしました」
と、担当のスタッフがアリスを連れて来た。
つい、見惚れてしまった。
普段は、背はあまり高く無く、顔も幼く見えるアリスだが、
身体の線に沿った柔らかな生地の少し色を抑えた赤いワンピースに少しかかとの高いパンプス。
普段は降ろしてる肩までの髪も、少しルーズに上げられてうなじにかかる髪も計算されたように色っぽく見える。
お化粧は、薄くしているだけで、赤に近いピンクのルージュをして無ければ、素顔かもって思ってしまうほどなので、やっぱり幼さは残っているものの。
いや、幼さが残っているゆえに、何か危ういような色香が見え隠れしていた。
「やっぱり、変かな?」
あまり俺が黙っているので、誤解を与えたらしい。
「いや。驚いてただけだよ」
言いながら、そばによって耳元にささやいた。
「きれいだよ」
ーって。
ホテルでのディナーは思いのほか楽しかった。
他の女性と何度も来た事があるところだったが、予約なしで入れる場所ならいざ知らず、信用できないところは選べないので…。
それでも、アリスも楽しそうに、そしてとても美味しそうに食べてくれる。なので、テーブル担当のウエイターも微笑ましくこちらを見ていて、料理を運ぶ度に、彼女に分かりやすく料理の説明をしてくれていた。
俺達の話している話題が、主に学校の事という色気の無さだが、まぁ、仕方ないだろう。
最後のデザートが終わって、食後のコーヒーを飲んで、さあ出ようかって二人で席を立ったら、アリスがふらついた。思わずという感じで、しゃがみ込んでる。
「大丈夫?」
俺の問いに、アリスも自分の身体の状態に戸惑っているようだった。
「あ…あれ?なんか、ふわってなって……立てない」
ウエイター達も慌ててやってきた。
「大丈夫ですか?ベルトラン様」
アリスの様子を見てて俺は
「心配ないようです。彼女、少し酔ったみたいで…」
食前酒と、ワインを一杯だけ飲ませたっけ。
ずいぶんお酒に弱いんだな、気を付けないっと。
「きゃっ」
俺がお姫様抱っこすると、驚いて小さく悲鳴を上げる。
どうしょうかな。
ルフォールをプライベートで使うわけにはいかないし、馬車で揺れたら吐いてしまうかも知れないから、論外だし。
この分じゃ、夜空を見ながらアパートメントまで歩いて帰るのも無理そうだ。
「すまない。フロントに部屋が空いてるかどうか、聞いてもらえないだろうか」
ウエイターは、一瞬ビックリしたような表情をして、それでもすぐに戻し。
「いつものお部屋なら空いておりますが…」
聞くまでも無く、とは言外に言った。
「いや、いつものでは無くて、スイートルームを…」
「かしこまりました。聞いて参ります。
少々、お待ち下さいませ。」
一礼をして、さっと居なくなる。
スイートルームなら、とりあえず部屋数もあるし、なんとかなるだろう。
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