第8話
夏休みにするはずの、婚約パーティはさすがにすぐと云う訳にはいかず、夏休みが終わるギリギリになりそうだ。
アリスが、夏休みに入ってから、俺は事業の営業業務をルフォールに任せて家にいる事にした。
正確には、2人で遊びまわっているのだけど……
ルフォールは、俺が物心付く前から、うちで働いてくれていて、業務のほとんどを把握している優秀な社長秘書だ。
本家の事業の仕事を一手に担っている彼には俺の代理など、片手間にでも出来るだろうが……今回は、ちょっと事情が違っているので、かかりきりになってもらっている。
俺はと云うと、アリスが、宿題や家事をしたりしている間だけ、携帯電話と言う名の魔法具で仕事のやり取りをしていた。
俺としては、会社に行ってるより健全なんじゃないかと思うほど、規則正しい生活をしている。
昼間、海や町に繰り出して遊ぶので、夜はあっという間に寝てしまって、気付いたら朝って感じだ。
今日なんか、遊園地に来ている。
……10数年ぶりかも。
「マルセルさん。今度は、あれ乗りましょ」
アリスが、指をさした先を見ると、ローラーコースターがあった。
なんか、最近出来た人気のアトラクションらしい。
返事を待たず、連れて行かれそうになる。
「ち…ちょっと、待って。さっきから、絶叫系ばっかりで…少し、休憩しようよ」
おじさんは、付いていけないです。
「あ……ごめんなさい。つい、久しぶりで…」
あはは……。
アイスクリームを買って二人で食べて、休憩して、また乗って…って、そういえば、こんなデートした事無かったなぁ~。
アリスも、ここ数日で打ち解けてくれてる分、ついって感じだけど我儘も出るようになって、よかった。
結局、夜の花火が上がる時間まで、遊園地に居続けた。
「綺麗でしたねぇ~花火。」
「そうだね。花火なんて見たの、何年振りだろう……」
「マルセルさんは……」
「ん?」
「あ……いえ、何でもないです」
アリスが、うつむき加減に言うので、わざと明るく。
「明日は、どこに行こうか……。
映画?それとも少し遠出してみる?」
「……どこでも、良いです」
「そう…か。連日出てると、疲れるよなぁ。さすがに…」
「そんなんじゃ……。
ただ、私に合わせてたら、マルセルさんつまんないんじゃないかって。
私が、子どもだからこんなところにしか連れて来るしかなくて…」
ああ……なんだ、そんな事……。
「アリスが、背伸びしてみたいのなら、そういうところに連れて行くけど。
俺の事を、気にしてるんなら、無理しなくて良いよ。
結構、面白いし、アリスと一緒ならどこでも良し」
アリスが、え?って感じで顔を上げる。
「どうせ、あと数年もしたらイヤでも大人になるんだし。子どもの時にしか出来ない事をすれば良いんじゃない?って思うんだけど。
俺の歳になっても、アリスが子どもだから、遊園地で一緒にはしゃいでられるんだし……ね」
大人2人で、はしゃいでたら馬鹿だろう……周りから見たら……。
「でも、そうだな。着飾って、ホテルのレストランで、ディナーくらいは良いかもね」
どう?って、アリスを見たら、微妙な顔をしてうなずいてた。
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