第3怪 鼓動
森の中に入ると、入り口から見た雰囲気とは全く違って、とても静かで薄気味悪い場所だった。
さらに、暫く森の中を歩いていると、神社と思わしき建物が見えてきた。
鳥居も見えて来たので入ってみると、意外に広い。しかし、長年人が来ていないのか、苔や草が
外観は何処にでもある拝殿とあまり変わらないが、苔や草が鬱蒼としているにも関わらず、参道横には綺麗な灯篭が配置してあった。
そして、真っ直ぐと参道を突き進み、御賽銭箱の前に行き、財布から二十円を取り出しお賽銭を入れ、上に吊るされている、本坪鈴ほんつぼすずをガラガラと鳴らし両手をパンパンと鳴らし参る
昔から私は神社に来るとお参りしたくなるのだ。
そして神社を少し見て回っていると、チリンと言う鈴の音が聞こえて来た。
音が聞こえた方へ行くと、神社の裏の方に赤い着物を着ており、また茶色い髪で、麻呂眉まろまゆの女の子が座っていた。
その子を見た瞬間昔に一度あったことのあるような感覚に駆られたあと、何故か心臓がドクンと大きく鳴ったが、気にせずその子の側に行く。
歳は十歳程だろうか、とても可憐で、美しく、そして幻想的な女の子で今にも消えてしまいそうな雰囲気だったので
私は気になって話しかける事にした
「こ、こんにちは。」
―――「ん……人間?……なんの用?」
その子は少しムスッとした態度で答え、私は事の経緯を教えた。
するとその子は
「あっそ……」とだけ言って目を逸らした。
このまま引き返しては後悔しそうだったので名前を聞く事にした。
「君、名前はなんて言うの?」
「名前……?普通そっちから名乗るものだと思うけど……?常識……知らないの?」と目を合わせずにふてぶてしく言った。
そして私は
「そうだよね。ごめんね……私の名前は
―――「そうじゃな……我の名前は天狐……姓も名も無い唯の天狐じゃ」
天狐か……この子もきっと妖怪なんだろうな。しかも、語尾が可愛すぎる!
「……天狐ちゃんよろしくね!」
そう言うと天狐ちゃんはどこかへ行ってしまった。
時間を確認すると、朝になろうとしていたので私は急いで帰る準備をした。
もう一度天狐ちゃんを引き止めて、森の入口へ行く近道を教えて貰った。
神社の裏の細道が近道らしいので、細道を通っていると、目の前にいきなり靄もやがかかる。
ヤバいと思い走っているといつの間にかアパート裏の空き地に立っていた。
さらに私は、山があったであろう場所を見ると本当に消えていたので少し驚いていた。
「……眠いし早く寝よ」そう独り言をしながら家に入ると、リビングに何故か天狐ちゃんが座っていた。
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