願いと祈り

みももも

願いと祈り

 願いは空気より軽く、祈りは空気より重い。

 だからこそ、人の願いは空に溶け、人の祈りは地に滞留する。


 この場所には、人々の祈りが溢れかえっている。

 家族のため、友のため、はたまた見知らぬ誰かのための祈り。

 共通するのはいずれも自分以外のための祈りであるということ。


 自分のために祈ることはできない。

 祈りは常に、自分以外の誰かのためにある。

 祈りの形は様々だけど、その全ては他人の幸福のためにある。


 神に祈っているのかもしれない。

 仏教徒であればその対象は仏であるかもしれない。

 あるいは神でも仏でもない、形を持たない何かに対して。

 だが重要なのは誰に祈っているのかではない。

 何を祈っているのかだ。


 祈りが届いたからといって叶うとは限らない。

 祈りが届くのかすら、あるいは祈りが届いたのかすら、人間には計り知れない。

 だけどこうして多くの人の祈りは折り重なって堆積する。


 人は祈りを目視できないけれど。

 だけど祈りを肌で感じることができる。

 人はそれを第六感と呼ぶのだろう。

 だけどその時、確かに僕も多くの人の祈りを感じることができた。


 彼らが何を祈っているのか、神でも仏でもない僕に知る由はなかったけれど。

 だけど神でも仏でもない僕は、彼らが何かを祈っていることを、確かに感じることができた。


 人は何に祈るのか。

 その答えは案外、神でも仏でもなく、人に祈っているのかもしれない。


 あるいは人々こそが、神や仏の正体なのかも・・・しれない。

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願いと祈り みももも @mimomomo

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