第4話 普通の本棚

本が詰まった本棚を見る。

アーチ状の窓をした扉をした棚で透明なガラスがハマっている。

ガラスの中には気泡が入っていてそれが蝋燭の光を吸ってオレンジ色の輪を作っている。古いのか、それとも"ここ"ではガラスの製造の技術が低いのか。

鍵はかけられいないようなので開けてみる。

紙の本がこんなに……。ガラスの製造の甘さや蝋燭、植物性の紙をみるにそんなに技術は高くなさそうだというのに綺麗に製本された本がこんなにたくさん。

少し変だな。

ギュウギュウに詰まっていて取り出し辛い本を一冊抜いて中をペラペラとめくると手書きのされた筆記体の文字が羅列されている。相変わらず文字は不明だ。

本を戻し棚を揺すってみる。

動かない。まあ当然か。

中がくり抜かれていて何か入っているかもしれないが流石に100個以上ある広辞苑じみた本の中を探るのは骨が折れる。

蝋燭から引火させて本棚ごと燃やして中に何か入っていないかと簡単に調べられる方法があるが、このような密室で焚き火をするのは自殺行為だ。

何もないならさっさとこの部屋から出たいところだがなぜかこの部屋には扉がない。じゃあ家具はどうやって配置したのだとか、蝋燭は誰がつけたのかと疑問が残る。それこそ魔法だなんて言われたらいい返しようがないが人がいて蝋燭が半分になるまで燃え続けているということは外とつながる空気孔くらいはある可能性が高い。

とりあえず一番通気口がありそうな天井を見てみるが何もなかった。

いや撤回しよう、謎のモザイク画があるがその他はないらしい。

学芸員志望としてこのモザイク画は大変気になるわけだし、本を一冊拝借してスケッチさせてもらおうか。

さっと描いて本を閉じる。本棚ごと隠し扉になっているものが中世では流行ったらしいが、この本棚は違うらしい。

どうやって脱出しろって言うんだ。

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悪虐の絡繰館〜屍人形と幻牢迷宮 ぺよーて @GRiruMguru

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