第3話 何処かの暗い部屋


ジメジメしている部屋で薄暗くて何があるかわからない空間で座っているのは嫌だが、動いてから動かなきゃ良かったとか、よく見ておけば良かった何て公開するのは嫌だからこの部屋で使えそうなものを探そうと思う。

召喚されたとかそういうことはとりあえずどうでもいい。

いつまでもここに居るとやばいというような気がするからだ。

もしも自分が招かれた存在だったとしても、怖くなって錯乱していたとか言えば済む話で、怒られるのが嫌だからと言って最悪の状況に備えて動かないというのも馬鹿馬鹿しい話だ。

格好つけているのは物語だけで結構。

奪ってもドブを這いずり回っても必ず生き残ってみせる。それが自分の信念というやつだ。

大変になるということはざらにあるのだからと、今すぐ動きたい気持ちを抑えてそう自分に言い聞かせた。

まずは状況確認だ。

分かる情報を断片的でもいいからまとめて行こう。長いもやばいが、焦るのは持っとよくない。

なんか床が光って異世界召喚、いやクラス召喚か。現実ではあり得ないというかオタク心くすぐる展開だったが、今は少し後悔している。

まさかあんなに人がいたというのに自分一人でこんな暗い部屋にいるなんて考えもつかない。

咄嗟のことで逃げられなかったのは仕方がない。トラックが突っ込んできても華麗なバックステップで回避してやるぜとか思っていたがうまくいかないものだ。

失敗だけじゃない、一つ学べた、良しとしよう。

だが、つまり何にもわからないということだが、これだけ分かっているのと何にもわからないのでは大きな違いだ。

あの現象が発生した要因は3つだ。

そう考えながら誰もいないのに指を三本立てみる。

埃を払うようにしてズボンを払ったあと、床に散乱した物体を踏まないようにしながら、歩き始める。

なんとなく歩きながら考えた方が思いつくし、探し物も同時にできるからな。


いじめられっ子がいじめられる要因が存在するのと同じで何ことにも要因が存在する。はずだ。あくまでもてんしでも自論。ジローでも太郎でもない。


タイミング的に見れば要因らしきものは二つだ。一つは、三崎萌香と俺が目が合ったこと。"目と目が合う瞬間♪"この音楽が頭によぎった俺は重症かもしれない。

一つ目はただ可能性としてあげたまでであり本命はこちらだ。

チャイムが鳴ったことが関係しそうだと考えているが、だからどうしたとか問題が解決したわけではない。


ああ、やっぱり2つだった。

3つ目が思いつかなくて左手でつい癖で頭をかいていた。


少ないといいなかれ。

ここが何処だとか他のやつが何処に行ったのかなんて後で探せば分かる話だ。

2つ要因的なものがわかったのはいいことだ。心理学的にも何もわからないより下らないことでも何か分かっている方が精神の安定につながるという論文がある。ジム・シェイナー准教授が書いた論文だったかな。

それにあのクラスメイトにわざわざ迷子になったような奴らを探しに行くまでするような価値がある人間は一人たりともいないわけで、その前に自分の身の安全から確保したいというのも当然ある。


自分の中で考えをまとめながら部屋をざっと見たが大したものはなさそうだ。

それこそ謎の言語で書かれた本とかメモだとか、開いたら呪われそうな黒い本が本棚にあったし、変な器具が机の上に配置されていたのは、変わった点と言えるがパッと見て違和感とかは感じなかった。

こんな場所だから隠し扉とかあるかと思ったが正直ガッカリだ。

薔薇とドラゴンの装飾のされた額、中には暗くて見えないが風景画的なものが書かれているらしい。

壁にそうように配置された背の低い棚の上にはこれ見よがしに石膏像があったが、首も倒せないし、回らないし、変な鍵穴も目に何か入っている様子も下の棚に隠されている様子もなかった。ダミーか?

その他に細かい刺繍のされた布が壁に飾らせている。キルトだったっけ?日本でもバブル期に金持ちがそういうのを作るのが流行ったらしい。

ここが何処なのか見当もつかないが、とりあえず家主は金持ちそうだ。

それに蝋燭に火が灯っているし、壁は苔が生えているというのに床は綺麗だし、家具は埃一つないし、こんなジメジメした環境に絵が放置されているというのに綺麗な状況を保てているということはだれかが管理していること他ならない。

もっと注意深く見る必要があるだろう。

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