第23話 海軍兵学校のような校舎
転学試験の朝を迎えた。
朝食を済ませた後、官品作業服からフォーマルな服装に着替える。
自前の制服は規定上着用が認められない為、児相職員の物を借りた。
ブラックシャドーストライプのスラックスとホワイトの半袖ボタンダウンシャツは学生服の代用品というより、クールビズのサラリーマンのようだ。
着替えた服装を見た5歳の保護児からも
「これからお仕事に行くの?」
と言われる始末だ。
少年は児相の公用車に乗せられて学校へ向かった。
「一応、形式的な試験だがちゃんと対策はしたのか?」
運転をしている児相職員が話を振る。
「先方の夫妻の面子があるから、できる範囲で勉強はしたさ。」
少年は窓に目をやりながらこたえる。
一保内では日に3時間しか学習時間がない。周囲の中学生は日に6時間授業を受けているのにその半分では、当然ながら差が開く。
その上、ほぼ自習なのでプリントをこなすだけだ。
そんな劣悪な就学環境で対策の有無を聞くなど失礼千万であるが、少年は長くなると思ったので何も言わなかった。
しばらくすると学校の校門前で停車した。
少年は車から降ろされた。
「それじゃ、試験の終わりに迎えにくるから。いってらっしゃい。」
少年を置いて走り去って行った。
少年は大きく伸びをすると、校門横の守衛室で受付を済ませた。
しばらくすると、校内から若い女性の学校職員が迎えに来きた。
「お待ちしてました。暑かったでしょう。」
気さくな笑顔で話しかけてきた。
「ええ、8月も半ばですが残暑はまだまだこれからですね。」
軽い話を学校職員と交わしながら、試験会場である応接室へ通された。
校舎は内外共に夫妻の礼場とおなじ造りだ。
だが、礼場よりサイズが大きく、まるで旧日本海軍の兵学校を思わせる雰囲気だ。
少年は試験官が来るまでの間、出された麦茶で喉を潤わせた。
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