第20話 次の委託先

個別指導解除後の少年を待っていたのは、お決まりの集団生活だった。

最初に入所していた際の面々は、既に退所しており一人もいなかった。


真面目な入所態度で少年は生活を送った。

なぜなら、職員から一保出戻り組はあまり良い目では見られないからだ。

模範的な生活を続けていると職員から感じる、監視の目が緩くなる事に少年は気が付いた。

その気付きは少しだが、少年の心に余裕を与えた。


そんな保護生活を半月程送っていたある日、少年は児相職員に呼ばれ打合室に通された。

どうやら次の委託先が決まったらしい。

少年は不安と希望が入り混じった感情に駆られた。


「次の候補は里親さんだ。」

職員はそう言うと少年に目を向ける。

「ようやく希望が叶うのか。ありがとう。」

少年は笑顔で応える。

「だが一つ言わなくてはならない事がある。」

職員は目を落としながら言った。

「もしそこで決まれば今までと違う土地に行くことになる。次の候補先は宗教家の夫妻で神職をしている。住む場所は教団本部がある市町村だ。」

少年の笑顔が瞬時に固まる。なぜならその宗教の本拠地があるのは、隣県になるからだ。

「それは県を跨げという事か?」

「そうだ。最大限、要望は考慮したがこれで限界なんだ。」

これ以上求める事は、無い袖を振る事と同義だと瞬時に思い、職員を追及しなかった。


その後は顔合わせの日取りを伝えられた。

どうやら児相で顔合わせをした後に、相性が合えば1日体験宿泊を里親宅でするらしい。

その結果を基に双方の合意を得れば、正式に里親委託になるという仕組みだ。


少年はまるでお見合いのような仕組みだと感じた。

それならば児相職員はさしずめ仲人といった所だろうか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る