3枚目
16時前。家に帰ると、お母さんはいなかったので、宿題を始めた。
今日の宿題は算数と理科。
帰る直前に担任の先生が目を逸らしながら、プリントを数枚、僕にくれた。
算数は好き。
黙々と進める。
いつも通りならたぶんお母さんは明け方に帰ってくるので、部屋の掃除をして簡単なご飯を作っておく。
たまに食べてくれて、大体捨てられている。
今日は食べてくれることが多い卵焼きにした。
お母さんはたぶん卵焼きが好きで、それもうんと甘いやつが好き。
昔、まだお父さんがいた頃に、よく作ってくれていたやつはしょっぱいやつだったけど、なんでかお母さんはお父さんがいなくなってからあの頃作っていたものを嫌いになっちゃったらしいから、たぶん甘い方がいいんだと思う。
一度しょっぱい卵焼きを作ったらひどく怒られた。
17時半。甘い卵焼きでカピカピのご飯を頬張る。
炊飯器のご飯は、数日前に僕が炊いたものだけど、もうカピカピに黄色くなっていて、たぶんお母さんは食べないので僕が食べる。
僕にとって朝ごはんは何かを口にする儀式だと言ったけど、基本的にごはんは全部そうで、味がよくわからなくなってからは特にその気が増したように思う。
お風呂掃除をしながらお風呂に入る。
お風呂は、僕の背では届かないあたりの壁から上がひどくカビだらけで汚くなっているけど、まぁ仕方ないのであんまり気にしてない。
ささっとシャワーを浴びるだけだしね。
19時を過ぎた頃、お風呂を上がって歯磨きをしているところで、今日持って帰ってきてしまった本の存在を思い出したので、行儀は悪いけど歯磨きしながら読み始めた。
今回のお話は人魚姫のおはなし。
人魚姫のおはなしではないのかもしれないけど、とりあえず主人公は人魚姫の絵本の話をしながら物語を進めて行っている。
叔父さん、という人がどういう人なのかがキーになるみたいだ。
物語に夢中になっていたら20時を過ぎてしまったので、慌てて布団に入った。
布団に入って電気を消したけど、やっぱりおはなしの続きが気になってこっそり電気を付けてしまった。
物語は、叔父さんの急死から始まって、そこからどんどん色々な謎を深めていく感じで進んで行く。
結局、叔父さんはどういう人だったのかよくわからないまま終わってしまったので、よくわからない話だな、と思って本を閉じた。
こういう釈然としない話もままあるけど、まぁそれもひとつの終わり方で、本は読むことに価値があると思っているから僕はあまり気にしない。
時計を見たら21時に差し掛かりそうだったので、僕は今度こそ電気を消して、目を閉じた。
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