2枚目
水曜日は6時間目がないから、5時間目で放課になる。
僕は理科室掃除の当番だったけど、サボって図書室に行った。
誰も咎めないし、みんなは僕には関わってはいけないと思っているみたいだ。
話しかけてみても、あんまり嬉しそうにしてくれないし、僕としても嫌がる相手と無理矢理話したくはないから会話はしない。
それに、僕と友達になろうとしてくれた彼がどうなったかはもう、知っているし。
図書館はがらんどうで、誰もいなかった。
いつもそう。
僕はいつもの席で、昨日の本の続きを読もうと、本棚へ向かう。
お目当ての本を見つけた。
と、その時
「こんにちは」
振り返ると、僕と同じくらいの背丈の男の子が、すごくにこにこしながら立っていた。
人から笑顔を向けられたのは久しぶりだし、そもそも人と話すこと自体久しぶりだから、僕は面食らっちゃって
「だ、だれ」
挨拶も返さず質問してしまった。
質問というか、もはやなんだお前、に近い感じだったから、たぶんすごい失礼だったと思う。
「あはは。ごめんね、驚かせちゃったかな」
そいつは気を悪くする風でもない。
僕は奇妙な生き物を見つめるようにまじまじとそいつの顔を見た。
見たことない顔だ。
「えーっと、僕はこの間こっちに転校してきたの」
そういった無遠慮な視線には慣れていないのか、少し居心地が悪そうにそいつは言った。
転校生。
なるほどね。
「....僕には話しかけない方がいいよ。それじゃ」
それだけ言い残してその場を去る。
後ろであいつが何か言っていた気がするけど無視だ。
転校生。なら知らないだろうな。
この学校では僕に話しかけたりられたりするとバイキン扱いされる。
見たところ雰囲気のいいやつだったし、たぶん僕なんか相手にしていなくたってすぐ友達もできるだろう。
「あいつ、本好きなのかなぁ」
チラッと見えたあいつが持っていた本は僕がこの間読み終えたファンタジーの長編で、もう関わることはないであろうあいつに、少しだけ、親近感が湧いた。
びっくりして本、持ってきちゃったけど、まぁ明日返せばいいかな。
今日は帰ろう。
それから一旦今日に戻って,誰もいなかったから少し勉強をした。
15時過ぎ、僕は学校を後にする。
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