甘くないラスク

mo_modoki

1枚目



お母さんが会社の人から貰ってきたラスクを食べている。

時刻は午前11時。

僕にとっては遅めの朝食で、ブランチって言うのかな。

まぁラスクなんて大して腹に溜まらないんだけど。

僕にとっての朝食は、何かを口にする、という儀式でしかない事が多いから、ラスクは、うん、そういう意味では最適な食べ物だったりする。

あんまり好きじゃないんだけどね。


午前11:37。お母さんが起床してきたのでおはようと言ったが聞こえているのかどうか定かでない。

返事が返って来なかった事だけは確か。


相変わらずお酒くさいその女(ひと)は、僕の横を真っ直ぐに突っ切って冷蔵庫に一直線。

何か大事な約束でもあるのかな、スマートフォンをずっと見てる。

いつもそう。

だから僕もあまり気にしていない。


12:17。僕の存在にたった今気付いたようにお母さんが学校へ行けと怒鳴り出したので家を出る。

お母さんが僕に声をかけてくれるのはこの瞬間だけだから、実はわざと待ってたりする。

いつも午前中の授業は受けられないけど、それでもお母さんに行ってきますって言いたいし。

ランドセルの準備はいつもちゃんとしてあるから、お母さんも実は気付いているのかもしれないけど、とくに何も言わない。

たぶん気付いてても何も言わない。

そう思うけど。


13時過ぎに登校したら給食はもう終わってて、みんなは休み時間を思い思いに過ごしているようだった。

おはよう、そう声をかけてみたけど誰もこっちを見ないから見えていないのかも。

お母さんからも僕は見えていないのかなって思うけど、でも学校に行くよう言う時は目が合うし、どうなんだろう。その時だけ見えるのかもしれない。


13:40。5時間目が始まる。

僕にとっては今日初の授業だけどみんなにとってはそうじゃないし、寝ている人も多い。

算数だったので僕は運がいい。

僕は算数が好きだけど、なぜだか水曜日しか午後にないから、大体受けれない。

この間よりだいぶページが進んでいて苦労したけど、言っている内容はわからなくなかった。

この辺りまでは家で自分でやってきたところだったから。

先生も僕を見ない。

いつものことだけど、算数は好きだから、僕もみんなみたいに当てられてみたいなってちょっと思う。

ちょっとだけね。

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