其の弐 ぱぱん
数日後、僕は再び衆煎寺の裏の池に来ていた。
「あーらサトシじゃないのー、あーた一人でいる事が多いわねー、友達いないの?」
ステファンが池のゴミを拾いながら、僕に声をかけてきた。
「い、いいじゃないか僕はここが、一人が好きなんだから」
「ふーん、まあいいわ。しかし全く! 最近はゴミが増えて困るわー、人間は自然をもっと大切にしなさいよー」
「そんなこと僕に言われても困るよー」
僕にそんな難しい事は分からないよ。
「アンタもどーせ、道端にゴミをばんばん捨ててるんじゃないんですかー?」
「う……」
「図星じゃない」
たまーにお菓子のゴミを捨てちゃうかなぁ……
ん? あそこの木に誰かが登ってるな、誰だろう?
僕が木の上を気にして見ていると、ステファンがその事に気付いたようで答えてくれる。
「ああ、ここ最近よく木に登ってるおじさんね。どうやら、帰りの女子高生を見てるみたいなのよ……きっと変態よ」
「そうなのかなぁ?」
僕にはおじさんが変態には見えなかった、何かを心配してるようなそぶりをしている、そこが気になって仕方がなかった。
「おじさん! そこで何を見てるの?」
「ちょ! 馬鹿! アンタ何声かけてるのよぉー、本当に変態で襲ってきたらどーするんですかー」
「ん?」
おじさんは僕の声が聞こえたのか、反応し木から降りてきました。
「おじさんかい? 私は自分の娘を見ていたんだよ」
おじさんは降りて来てそう答えてくれたよ。
「娘ねぇ、父親が木に登って娘の姿を見るって何か変だしー」
「何を言うんだね、親が子の心配をするのは当たり前じゃないか」
娘を心配したお父さんが、娘を心配し木に登って見てたって事かな?
「ま、まあ。最初はやり過ぎてしまってね、娘と揉めたこともあったけどね。隣町の教会のシスターに諭されてしまって、今ではこうして少し距離を開けて見守ることにしてるんだよ」
「教会ねぇ」
おじさんの答えに何かを思ったのか、ステファンが呟いていた。
「おじさんは娘さんが大切なんだね」
僕がそう言うとおじさんは、当たり前じゃないかといった顔をして答えてくれました。
「当然だよ、娘は大切な存在だよ。それこそ、お尻の穴に入れても痛くないくらいさ」
「そっか、お尻の穴に入れても痛くないとか凄く大切なんだね」
「……アンタら何言ってるんですかー?」
ステファンが僕とおじさんの会話の何かにツッコミを入れてるけど、何かおかしなことを言ってるかな?
おじさんは腕時計を見ると、いそいそと荷物をまとめ始めたよ。
「おっと、いけない。そろそろ仕事に戻らないと、娘も無事に家につくころだしねぇ」
「おじさんはもう帰るんだ?」
「そうだよ、坊やもそろそろ遅いから帰りなさい、親御さんが心配しているはずだ」
僕も時計を見るといつの間にか五時を超えていた、これと言って何かしていたわけではないけどいつの間にか結構時間が経っていた。
「そうだなぁ、僕もそろそろ帰らないといけないな」
僕は時計を見ながら呟いた。
「ああ、そうするといい。おじさんはもう行くよ」
おじさんは何故かダンボールを被ってスニーキングしながら帰っていった。
「あれー、逆に目立つって言うか―。流石におかしくね?」
「うん、僕もアレは流石に無いかなって思うよ」
「あんたはあんな親父さんになっちゃダメよー」
「でも、悪い人じゃないよ」
「悪い人じゃなくても変態じゃないのー」
変態には生きづらい時代なんだなぁ、そう思う僕であった。
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