3月17日 記入: 茉莉
ここに書き込むのは初めてですが、まずこれだけは云わせてください。
ご馳走様でした。
今日のお彼岸限定デザートは本当に美味しかったです。
それにしても今日は客入が随分と多かったですね。
*
開店してまだ一刻も経過していないと言うのに、糸猫庵の両の指に入る席は満席だった。
店の外にまで列が出来る程だったことを憶えている。
漏れ聴こえる会話に耳を澄ませると、孫がどうのだとか、お宅の家族はどうだ、うちのは云々、などと言い合っていた。
「姐様。あの人達は、ニンゲンではありませんが、ニンゲンの気配がします」
「そうやねえ。あの方々は確かにニンゲンだけども、とうの昔に肉の器を捨ててはるんやよ」
「……?
傍目にはとてもそうとは思えないが、姐様が言うのならそうなのだろう。
「今はお彼岸やから、皆さん孫の顔でも見に来はったんやろうねぇ」
納得して辺りを見舞わすと、仏様一向は同じモノしか食べていない事に気付いた。
葛餅の様な、水羊羹の様な──
存在があって、存在が無い様な、兎に角不思議なお菓子の様だった。
「あれは現世への定着剤みたいなモノや。とても食べられへんよ」
「そんな凄いモノもここでは提供しているのですか?」
品数の多いのが糸猫庵の売りの一つと聞いたが、誰もここまでするとは思わないだろう。
「でも、ここ最近は時代なんやろなあ。来る人も少のうなって、こう言う場所がいつか必要無くなるかもしれへんのや」
それは、遺族に忘れられたから来られない、と言う意味だろうか。
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