2月8日 記入: 糸

 今月は猫づくしの料理がおすすめですので、是非食べていってください。

                by 店主


          *


 二月下旬に猫の日なるモノがあると耳にして、幾つか試作品を作っていた昼下り。

 何故自分で食べる心算であったモノが、今客の口に入っているのか、不思議で仕方がなかった。

「糸! 旨いなこれ」

「猫……猫が可愛い」

 定休日の札を戸口に掛け忘れた私も悪かったが、居座る方々もどうかと思う。

 正直に言って、試作品を作者が食べる前に客に食べさせたくない。

 喜んでいるならそれでいいが、非常に複雑な気分だ。

 まるで悪寒と高熱が繰り返している様な感覚に襲われる。

 店内に居るのは池鯉鮒ちりふさんと、その連れである茉莉マリーさん。それと馬鹿ましかだ。

「姐様、そっちも少し分けてください」

「いいよ~♪ 何なら全てあげちゃうよ? 可愛い茉莉のお願いだもの~」

「いいえ姐様。茉莉は姐様と同じモノを共有したいだけですから」

「お前もこっち来て喰えよ! どうせ試作品だろ?」

 頭が痛くなってきた……。

 馬鹿ましかの言葉を無視し、私は手を動かし続けるが、それでも尚しつこい声に折れるほか無かった。

「えぇえぇ今すぐそちらに行きますよ。少々お待ちください」

「あと追加でお茶と何か持って来てくれよ」

「この野郎」

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