12月29日 記入: 馬鹿

 何だこれ。

 適当に色々書いてもいいのか?


「適当に置いてみただけなので、常識の範囲内でなら何でも書いてください」

「俺達に常識なんてあるのか?」

「では人間における常識の範囲内で宜しくお願いします」

 そう言われても、人間の常識なんていつか忘れちまった。

 俺は削られた鉛筆を手に取り、白紙の真新しい頁に筆を走らせる。


 料理が旨かった。ありがとう。


「これだけですか……」

 閉店後の店内で独りごちる。

 あのバカらしいと言えばそうだ。

 鉛筆を削り、帳面を閉じた。

「いいんじゃないの。あの子とはこれだけで通じる仲でしょうに」

「つうかあ程では無いよ」

「何言っているのよ。唯一の友達でしょ」

「言わないで」


«聴こえますか……聴こえますか……»

「脳内に直接話し掛けて来ないで!」

«黙ってお聴きなさい。ただでさえお友達が居ないんだから、交流は本当に大事にしなくちゃ»

「……いや、本当……止めてください。どうかお願いします」


「──と言う夢を見たのですよ」

「夢かい!」

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