第7話

前回迄のあらすじ


櫻木さんが俺の家へ引っ越しをして来てから早1週間が経過した。

相変わらず色々とあったけど、状態はそれだけでは無かった。

ある日の朝、学校へ行こうとした直後、玄関先に雫さんの姿が!?

一体どうやって家を突き止めたのだろうか!?

そんなこんなで怒濤の予感がしていた俺に更なる試練が降りかかるのだった!?

学校へ着いた俺は、いつもの様に真木谷たちと話をしていたが、朝礼が始まった時、クラスのいつもの野太い熱苦し、いや、熱血教師の姿は無く、非常に綺麗な女性の声で教室へ入って来た先生!?

俺は嫌な予感がしたので耳を塞ぎ下を向いて座っていた。

すると真木谷が口をパックリと開いて茫然としていたのだ!?

そう・・・声からして誰が入って来たのか本当は俺は知っていた。

担任の井塚先生は急遽入院する事になり、代理としてあの人が!?

そうです・・・雫さんです。櫻木さんの従姉妹であるあの変態、いや、妖艶さを漂わせていた痴女・・・では無く、大学院生の麗しき女性?・・・

どうやらこの学校、雫さんの家系と深い繋がりがあるらしく、急遽入院する事になった井塚先生のピンチヒッターと言う訳で呼ばれたみたいだ!

色々と面倒な事になってしまったと思いきや、雫さん、そして櫻木さんや真木谷も空気をしっかりと読んでいるのか特にその後問題が発生する事は無く、風谷さんに限っては本当に冷静でいつもの通りのオーラを出していた!(あっ!?前回風谷さんはほとんど出番がありませんでしたm(_ _)m)

ふと雫さんは、俺たちの通う学校の言い伝えの様な事を教えてくれた。

彼女もまたこの学校の卒業生・・・校庭にある大木の下で告白をしてOKをくれたらお互い幸せになれると言うものだった。

雫さんは、実際に自分がその木の下で幼馴染の男の子に告白してOKをもらいその後付き合う事になった2人だったのだが・・・幸せな日々はそう長くは続かなかったと言う。

大学3回生の時にその雫さんの幼馴染が不治の病に冒され、この世を去ったのだ!

じゃぁ、どうしてその言い伝えを俺たちに伝えたのだろうか?

雫さんは後日俺に自分はそれでも幸せだったと告げた。

病気になり入院生活をしていた彼氏の元へ看病の毎日。

ある日の事、危篤状態に陥ってしまった報せを聞き急いで病院へ駆けつける。

病室へ辿り着いたが、既に息を引き取っていた・・・

だが!!奇跡的に雫さんがベッド越しに大泣きをしていた時に、彼は一時的に息を吹き返す。

色々と本心を息を切らせながら雫さんへ伝える。

そして、自分がこの世を去った後も、自分の事だけでは無く、自由に考え行動する様雫さんに告げる。

間に合わなかったと思っていたのにこうして一時的にでも息を吹き返してくれた事に対する想い、そして彼が自身へ告げた本当の想い、そして自分が亡くなった後の事まで考えてくれていた・・・その全ての気持ちを彼女は受け取り、心の底から幸せなのだと悟ったのだ!!

けれど・・・最後に俺は、本当は雫さんは幸せだとは思っていても寂しい、悲しい・・・この世の誰よりも大好きで大切な人を失ってしまった・・・そう言う想いが手に取る様に分かったからだろうか?・・・泣いても良いですよと声を掛けていた。

すると雫さんは俺の胸に顔をうずめながら大泣きしていた。

やはり、雫さんは強いのだなと改めて感じた。

真木谷とは教師と生徒の関係となってしまった為、彼女は別れる事を決意し真木谷へ伝えた。真木谷は相当なショックを受けてしまっていた。

けれど、彼女の本心を聞いた俺はそっと真木谷へ雫さんの本心を告げた。

亡くなった彼氏の事は勿論俺の口から伝えるべきでは無いけど、雫さんは遊びや軽はずみな意味で真木谷と付き合った訳では無いぞと・・・・そして、本当に好きなら教師と生徒との関係じゃ無くなった時に改めて付き合えば良いだろうと・・・雫さんはその頃には気持ちが変わってしまっているだろうからと真木谷には伝えていたらしいが、恐らくそれは無いと俺は思っている。

実は、あの後、雫さんから俺は「私は本気だったの・・・」とはっきりと聞いていたから。

あの言葉を発した時の雫さんの目は嘘を付いている目では無いと俺は確信した。

真木谷も俺の説得に納得してくれたみたいで落ち着きを取り戻した。











放課後・・・




「おい、浩輔!?今日はどこ行く?」


「そうだな・・・久しぶりにゲーセンでも行くか?」


「いいな!じゃぁ早速・・・」


「真木谷君?ちょっといいかしら?」


「しず・・・紅先生?何かあったんですか?」


「うん・・・ちょっと手伝ってもらいたい事があるの?直ぐに終わるから・・・」


「分かりました・・・」




まだ言っていなかったけど、雫さんの名字は「紅」(くれない)・・・紅 雫(くれない しずく)凄く風情のある名前だな・・・

まぁ、それは良いんだけど、真木谷に手伝わせる事って?重い物でも運ばせるのだろうか?だったら俺も・・・




「あの、人手が必要なら俺も行きますけど?」


「あぁ・・・大丈夫よ?ありがとう、中城君は悪いんだけれど、少しだけ待っててくれないかしら?ちょっと真木谷君に来てもらうから・・・」


「分かりました・・・」




何だろう?何かあったのかな?

って言っても皆もう帰ったし、俺たちしかいないもんな・・・

っと俺は気楽に待つ事にした!!・・・すると!?




「ちょっと中城!?あんた放課後の教室で何してんのよ!?」




あちゃー!!やって来ましたよ!!一度教室から出て行ったはずなのに一体何故!?




「いやぁ・・・真木谷が先生に呼ばれて出て行っちゃったから待ってるんだけど?・・・・1人でリラックス出来るなと思ったんだけど?・・・」


「何よっ!?・・・あんた私が来たらリラックス出来ないって言うの!?本当失礼な奴よね!?それにまだ数名の女子生徒が教室内にいるけれど?あんたの目って節穴なの?風穴でも開けてあげようかしら?」




どこぞのツンデレキャラクターみたいな事言っちゃってるよ!?・・・

確かに数名の女子生徒が教室内には残っていた。




「ちょっと櫻木さん?どうしてそんなに中城君に突っかかるの?」




あれ!?・・・いつも何も言わなかった五条さんだ!?




五条 奏 (ごじょう かなで)・・・浩輔のクラスメイト。ごく普通の女子高生ではあるが、周囲の状況を読み取りしっかりとした性格を持っている為、地味に人気が高い。




「五条さん?・・・べっ!?別に突っかかってる訳じゃないわ!?・・・中城は・・・そう!!マゾなのよl?こうやっていじめられるのが大好きなドマゾなの!!だから私はこうやって毎日いじってるの!!」




いや、それ自分の事では!?・・・まぁ、演技だって分かってるから俺も最初の頃みたいな感情は無いには無いけどさ?・・・それにしても演技達者の割に言い訳染みたセリフは今一つ?・・・随分と見苦しい・・・




「随分と見苦しい言い訳ね?・・・」




いや・・・ごめんなさい、そのセリフは俺の脳内再生されていたはずなのですが?・・・




「言い訳じゃないわ!?・・・中城は本当に・・・本当にドマゾのド変態なの~~~!!!!!!!!!!」




止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

もうそれ以上俺のイメージを損なう恐れのあるデマを流さないでぇぇぇぇぇ!!!!!!!!




「本当酷いよね?中城君って凄く優しくて私、良いなって思ってるくらいなのに・・・櫻木さんの目って節穴?いっその事風穴でも開けてあげようか?」




うん!聞いた!!確か櫻木さんが俺に突っかかって来た時に言ったセリフだ!!

流行ってるの?




「何よっ!!急に出て来ておいてあなたに中城の何が分かるって言うのよっ!?」


「急に出て来たからと言ってもずっとあなたたちの行動を見ていたら分かるわよっ!!」




あ・・・あの・・・俺の事でそんなに揉めないでくれませんか?・・・大変心が痛むので・・・




「真木谷君、ありがとう。おかげで助かったわ?男子生徒がもう見当たら無くて、やはりこう言う作業は男子生徒にお願いした方が良かったかなって思ったから・・・」


「いいえ!また何かあったら遠慮なく言って下さい!」




良かった!!丁度良い所にこの険悪なムードを阻害してくれる2人が戻って来てくれた!!本当タイミングが絶妙だよな!!




「悪ぃ・・・浩輔!待たせたな!行こうぜ!?・・・っておい?どうしたこの異様な空気は?」


「ふふっ♪・・・あっ・・・ごめんなさい!どうしたの?櫻木さんと、五条さん?何かあったのかしら?」


「いいえ・・・少し頭に来ただけですから・・・失礼します。」


「・・・・・・・何でも・・・・無いわよっ!!」




気まずい・・・そのまま2人は帰ってしまった。

何が気まずいのか・・・俺が自宅へ帰った時が一番気まずい・・・

いや、どうして五条さんが急に突っかかったのかと問われると言う訳では決してないのですよ!

俺が一番懸念しているのは、今の一件でむしゃくしゃしてしまった櫻木さんがですよ?

俺がこの後真木谷と遊びに行って帰りますよね?

帰った時に勿論いつものデレの櫻木さんがお出迎えしてくれます!

そして俺はいつもの様に、お風呂に入ったり櫻木さんの作ってくれた晩御飯を食べますね?

一日の流れは無事に終わる訳ですよ!

問題はその後なんですよ!!

さっきも心の声でツッコミを色々と入れさせてもらいましたが、俺に降り掛けられた誤解・・・全て自分の事だった訳ですよ!

だとすれば・・・賢い読者様ならもうご理解頂けるかと思いますが、その全ての性癖がストレスとなって俺に降り掛かって来る訳なのですよ!!

もう理解した!もうはっきりと、明確に!!

絶対にストレスを性癖で発散しているんだ!!どうしよう・・・今回は少々止められないかもしれない・・・だって・・・だって・・・帰り際に見せた横顔・・・そう・・・アヘり掛けていた!!目がハートになっていた!!

真木谷・・・今日、お前の家に泊めさせてもらって良い?




「中城君?・・・色々と大変ね?・・・今日の夜・・・♪」


「先生?ここは学校です・・・公私混同しないようにしてもらえませんか?」


「浩輔?・・・思いきり発散して帰ろうぜ!?」


「あぁ・・・こうなりゃヤケだ!!」




思いきり遊び倒してやった!!

ゲーセンで!!

クレーンゲームの様な悠長なものじゃなく格闘ゲームやらパンチングマシーンやら色々とアクション染みた方向でただひたすらに・・・




「あぁ~!!すっきりした!!俺も最近色々あっただろ?おかげでしばらく耐えられるぜ!!」


「あぁ・・・あまり気にしないでよ?雫さん、本当に真木谷の事を大切に想っているからな!それは俺は保証するから!!」


「おぅ!!色々と聞いてくれたんだな!サンキューな?お前も櫻木さんとはどうなんだ?」


「えっ!?・・・いや・・・俺は別に・・・さっきも変な突っかかり方をされて逆におかしくなって来て・・・」


「あぁ・・・櫻木さんって妙にブレるよな?」


「そうだよな・・・どうしてあんなに・・・」




ブレる?・・・確かに妙な感じでブレを見せる時はあるな・・・

演技だろう?・・・それって良く無い事?




「じゃぁ、俺、ここだから、今日は悪かったな!手伝いで遅くなっちまって!」


「あぁ!俺は大丈夫!また明日?」




真木谷の家の近くになり俺たちは分かれた。

そして1人でしばらく歩いていると・・・




「あれ?・・・もしかして中城君?」




歩きながら正面から声がした・・・五条・・・さん?




「五条さん?買い物?」


「うん♪夕食の買い出しだったんだ?中城君ってこの辺なの?」


「いいや?真木谷がこの辺りだったから遊びの帰りで分かれた所だよ!」




私服姿で買い物の帰りの様だった。

髪の毛は学校とは違ってストレートに降ろしていて、少しだけギャルっぽさも出ているけど家庭的な子なんだろうな・・・

一緒に歩きながら近くにあった公園のベンチへ座って少し話をしていた。




「放課後はごめんなさい・・・」


「いや・・・俺の方こそ色々と気を遣わせちゃったみたいで・・・」


「櫻木さんって・・・中城君の事が好きなんでしょ?」


「えっ!?・・・それは?」




女の子の勘と言うやつだろうか?・・・鋭過ぎる!!

あれだけツンケン突っ掛かって来たらかえって不審がられるかもしれないな?




「櫻木さんは皆の憧れ・・・本当は私も彼女に憧れを抱いている部分もあるの・・・」


「どう言う所?」


「クラスであなたに突っかかっている彼女は嫌い・・・」


「まぁ・・・結構な程、ツンケンしてるもんな・・・」


「そうじゃないの・・・ツンケンしているのは特に嫌いでは無いかな・・・ただ・・・」


「ただ?・・・」


「自分に嘘を付いている姿で本当に大好きな相手に何か理由があったとしても接する事に慣れちゃってるって言うか・・・それが当たり前みたいな感じで自分を偽っているのは私は許せない・・・」


「五条さん・・・・・」


「ごめんなさい・・・あくまで私の見解だから本当に櫻木さんがそう思っているのかどうかは彼女次第だけど・・・ただ・・・」


「ただ?・・・」


「帰る時に櫻木さん、物凄くアヘ顔になってて・・・目がハートになってたから・・・恐らく間違い無いだろうなって・・・」




うんうん!!よく見てるよ!!間違いナイス!!

流石五条さん!冷静に人の様子を見ていますとも!!




「五条さんは色々としっかりと見ているんだね・・・俺、凄いなって思う!」




うん!!怒って帰る時に相手の表情や目まで見られるなんてそう無いだろうな!?

帰ったら注意しておく事にするよ!!アヘ顔&ハート目禁止だって!!




「私ね?・・・櫻木さんが羨ましいなって思ってた・・・」


「どうして?」


「毎日・・・一緒にいるでしょ?」


「あぁ・・・確かにそう見えちゃうか・・・」




うん・・・毎日、一緒に・・・大正解!!

一つ屋根の下に暮らしている事を一瞬悟られたのかと思ったよ!!

でもそうじゃない、学校での話だろうね!そう思っていると彼女の口からとんでも無い発言があった!?




「うん・・・羨ましい・・・ねたましい・・・あの女!?・・・浩輔君の・・・浩輔君の家にまで押しかけて!?・・・一緒に暮らしているなんて!!私!!私も!?・・・」




ちょっと待て?・・・今、とんでもない事を隣の美少女が発言した様に思えたけど?・・・

俺、疲れてるのかな?最近本当バタバタし過ぎていたから・・・

もう一度、再生してみようかな?うん!いや、再生って言うよりもう一度聞き返してみる事にしようかな?2度同じような幻聴は流石に無いだろうな?




「えっと・・・ごめんね?ちょっと俺、考え事していたから直前に話をしてくれた言葉をもう一度聞かせて欲しいな?」


「うん・・・分かった!・・・櫻木さんが、羨ましいって言ったの!」




そうだよね!皆の憧れの的だし色々と凄いもんな・・・分かるよ!俺が女子として生まれて来たとしても憧れると思うよ!・・・一部の変態性癖以外は!!だけど・・・




「あの女!!浩輔君の家にまで押しかけて!!一緒に暮らしているとか許せない!!私も浩輔君の家で暮らしたい!!」


「・・・・・・・・・・・?」




ん?・・・2度目だけど1度目に聞いた言葉と同じ様に聞こえるぞ?

俺、耳がおかしくなったのかな?

う~ん・・・何だろう?この嫌な予感は・・・




「中城君?・・・ううん!浩輔君?どうしたの?ボーっとしちゃって?」


「うん・・・俺、耳がおかしくなったみたいなんだ!今、中城君って呼んだ後、浩輔君って言った?」


「うん、言ったよ?なんだ!ちゃんと聴こえてるじゃない!良かった♪」




うん!耳はおかしくないみたい!

って事は・・・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




「さて・・・俺、そろそろ帰らないといけないんだった!!」


「あの女の元へ?・・・だったら私も!!」


「いやっ!!心配には及びません!間違いだけはあり得ませんので!それ以前に間違いになる前に俺が確実に止めますので・・・ではこれで・・・」


「あっ!!浩輔君?・・・じゃぁ、また明日学校で!!」


「うん・・・学校で・・・学校でね!バイバイ!!」




うん・・・ここは冷静に逃げよう・・・

そう思いながら五条さんと分かれた!いや「別れた」と表記しておく事にしよう!!




帰宅・・・・・




ダメだ・・・俺、本当に疲れきってしまいそうだ・・・

先ずは、俺の家に櫻木さんが住んでいる件についてバレてしまっていると言うのが1点目。

そして・・・櫻木さんが俺の事を好きだと気付かれているのが2点目・・・

この危険な状況が及ぼす影響を考えてみた・・・




1つ目・・・五条さんが誰かに告げてしまい状況がバレる。

2つ目・・・櫻木さんが隠し続けようとしている事がバレてしまい櫻木さんが・・・!?

3つ目・・・五条さんが脅迫的に何かをして来る可能性が!?




何れにしても俺たちの生活環境に多大な危機が及ぼうとしていると言う事だ!?




「櫻木さん?・・・大変なんだよ!!」


「・・・・・五条さんの事でしょうか?」


「流石だね・・・実は・・・う~ん・・・これは櫻木さんにとっては酷な話になってしまうかもしれないし・・・俺にとっても・・・」


「彼女は私が浩輔様の事を愛していると言う事について悟っている・・・と言う事でしょうか?」


「そうそう!櫻木さんが俺の事を愛して・・・・・っていやいやいや!!愛してるじゃなくて、好きだって事について知られた訳で・・・」


「えぇ・・・存じ上げておりますわ!」


「そうか・・・でももっと大変な事実を彼女は・・・」


「浩輔様と私が愛の巣で同居生活をしている事についてですわね?」


「一々ツッコミ入れないといけないのかな?・・・愛の巣じゃないよ!完全にここごく普通の俺の家だから!!」


「あんっ♡一度言ってみたかっただけですわ?」


「どうしてそこまで知ってるの!?」


「1つ目の私が浩輔様をお慕い申し上げているオーラは女子なら誰でも気付いているはずです・・・です。一部の男子生徒も大体分かっていらっしゃるはずですが・・・直接的に言っていないので根拠は無い訳です!私はずっと浩輔様にその様なオーラを出しながら浩輔様とお話させて頂いておりましたが・・・お気付きになられない殿方が目の前に・・・」


「あ・・・あはは・・・それは確かに・・・ごめん・・・」


「そして2つ目のご不安については、私もこちらの家にお邪魔してから直ぐに彼女がストーキングしている姿を見ておりましたわ!」


「だったら直ぐに止めれば良かったはず・・・」


「大丈夫です!彼女は空気はしっかりと読む方です。」


「いや・・・でも、ストーカー行為をする様な子だよ?信じられる訳が・・・」


「放課後、私たち言い合いをしていましたよね?」


「うん・・・喧嘩し出したからどうしたら良いのか戸惑ったよ!!」


「喧嘩ですか・・・ふふっ♪・・・確かに周囲からするとその様に見えてしまいますわね♪ですが、あれは喧嘩ではありません・・・」


「えぇっ!?喧嘩じゃないの!?・・・でも結構強い言い合いだった気がしたけど・・・?」


「あれは、確認のし合いです!ああやって言い合いをしている最中、お互いに浩輔様への想いが強いのかどうか・・・」


「いや・・・あのセリフの中からそこまで深い内容が示されていたなんて俺には・・・」


「さりげなく彼女は浩輔様の事に恋心を抱いている事を認めましたわ?」


「いや・・・そう言う言い回しだったとしてもそこまで深く思えなかったけど・・・」


「彼女が浩輔様へ対して抱いていた気持ちは本物と私は感じ取りました。ですので帰り際私は・・・♡」


「いやっ!!そこで表情だけ再現しなくて良いから・・・そんなアヘ顔ハート目なんて誰も・・・これ一般作品だから・・・」


「あら?何の事でしょうか?私は彼女に対して認めたと言う事ですわ?」


「それで公園で・・・」


「あら?浩輔様、公園で五条さんとお会いに?」


「いや・・・真木谷と遊びの帰りに偶然真木谷の自宅近所で出会っちゃって・・・そのまま少し話をしていたんだ!」


「そうでしたか・・・ではそろそろでしょうね?」


「そろそろ?」


「まぁ、時が来れば分かる事ですわ!?私は、極力お断り申し上げたい所ですがこればかりは浩輔様のご意志次第ですので・・・」




何だろう?もう嫌な予感満々なんだけど!?・・・

とりあえず櫻木さんの時が来ればと言うのを待つ事にしてみた・・・




翌日・・・学校にて・・・




「浩輔?風谷さんはどうなんだ最近?」


「えっ!?・・・いや、どうなんだと言われても・・・特に何も・・・」


「私がどうかしたんですか?」


「風谷?浩輔とはどうなのかなって思ってさ?」


「そうですね・・・特に進展はありませんが・・・」


「そうか・・・そろそろ何か動かしてみようか?」


「おい、真木谷!?・・・一体何を!?・・・」




真木谷が急に変な事を言って来た・・・すると!?




「じゃぁ、折角ですので週末にまた以前の様にデートなど如何でしょうか?」


「あぁ!それ良いんじゃないのか!?」


「おい、真木谷!?お前なぁ・・・」




何故だ!?真木谷・・・今それを言うべき時じゃないだろう!?

雫さんの件以降妙にテンションが変なんだよな・・・




「あの・・・デートって?」


「いや・・・それがさ、真木谷が唐突にデートすれば?みたいに言って来て困って・・・って五条さん!?」




俺たちが話をしていると突然五条さんが入って来た!?




「デートなんだ・・・いいなぁ♪私も行きたいな・・・」




うん・・・この間の一件はどうやら夢では無かったみたいだ!

夢だったらいいなと微かな希望で今日まで来たけど・・・現実は残酷だったみたいだ!!




「おっ!?・・・五条も浩輔の事を?」


「うん・・・もうこれ以上自分を抑えるのは無理!!大好きなの!浩輔君の事が!!」




何と言う事でしょうか!?・・・こんな皆のいる所で何の躊躇いも無く平然と自分の想いを告げちゃったよ!?・・・いや、何と言うかもうこのクラスには変わった人たちしかいないのだろうと確信したよ・・・ひょっとしてですが五条さんの家も豪邸とかなのかな?だとすれば俺に好意を持ってくれている子は皆お金持ちって事になるけど・・・流石に無いよな?




「おい浩輔お前スゲーよな!?お前に好意を持っている子って皆大金持ちの子ばかりだしさ?」




ほら見てよ!?五条さんも大金持ちのお嬢様だったらしいよ!!

俺、一体何者なんだよ!?どうして俺なの?

いや、こんな名誉な事は無いと思います・・・神様がいるとすれば、非常にあり難い状況にして頂けたと思います。ですがね?・・・皆俺の意志は無関係なんですよ!!

確かに最近ようやく櫻木さんに対して色々と感情を持ち始めてはいますけど・・・

だからと言ってこんなに俺に集まらなくても良いではないですか!?もっとですね・・・心の底から欲している男子も絶対にいると思う訳です!ちょっと変わったツンデレっぽいけどそんな事は無かった子とか・・・ストーカーされてみたい男の子とか・・・変態な超絶美少女?・・・あっ!これは今俺が色々と考えている最中なので無しで・・・

いやいや待てよ?・・・それ以前に俺の記憶を取り戻す事が先だよな!?

きっとその記憶には隠れた事実が沢山あって・・・櫻木さんの事がかなりのシェアを占めているみたいな話になっているみたいだし・・・




「それでさ?どうすんだ?休日デート行くのか?行かないのか?」


「ちょっと何勝手にデートの話を決めちゃっているのかしら!?」




はい出ました!絶対に出て来ると思ったよ!

これだけそこそこ大きな声で周りの人にも聴こえるくらいのボリュームで話をしていれば俺が関わる事に対して必ずしゃしゃり出て来る訳です!注目の変態ツンデレ演技派女子高生が!!




「おっ!?櫻木さんも来るか?浩輔とハーレムデートに!」


「おいちょっと何勝手に決めてんだよ!!俺は・・・」


「行かないのか?・・・勿体無いよな?こんなウハウハな状況もう二度と訪れないだろうな?」


「・・・・・・・・」


「今ちょっと勿体無いって思ったか?」


「いや・・・そうじゃなくて・・・」


「私がどうして中城なんかとデートしなきゃいけないのよっ!?・・・でも・・・中城がどうしてもって言うなら・・・別に考えてあげても・・・良いけれど・・・?」




いやぁ・・・・どちらかと言えば思いきり突っかかって来てデート中止くらいの勢いにしてくれるのだろうと思っていたのに・・・予想外の回答で俺も驚いたよ!!




「じゃぁさ?俺は監視として当日皆の近くで観察しておく事にするよ!」


「何が監視?何が観察なの!?・・・本当真木谷、最近様子が変だぞ?」


「そうか?・・・お前の方が変だと思うが?皆お前にゾッコンだぞ?それなのにお前は誰1人手を付けようとはしない・・・どうしてだ?」


「真木谷君?ちょっといいかしら?・・・大事な話があるの・・・」




真木谷が俺に対して変だと言った直後櫻木さんは真木谷を連れて外へ出て行った。一体何があったのだろうか?




「浩輔君?・・・・・デート・・・ダメ・・・かな?」


「私も・・・そのハーレムデートでも良いからデートしたいな?・・・」


「う・・・あの・・・ごめんね?ちょっと俺、ここの所真木谷が言っていた通り変なのかもしれない・・・色々とあり溢れすぎて上手く許容出来ていなくて・・・その・・・気持ちは凄く嬉しいし、ありがたいんだけど・・・本当にごめん!!」


「そうか・・・うん!浩輔君がその様に言うのなら仕方が無いよ・・・また今度にしましょう?」


「そうですわね・・・浩輔君が主役なのに乗り気になれないのでは致し方無いと言うもの・・・次の機会に致しましょう。」




2人共ごめん・・・俺は、やっぱり・・・






「真木谷君?中城の事についてあなたにはそろそろ伝えておくべき事があるの・・・」


「どうしたんだ?急に表情が険しくなったぞ?浩輔が何かあったのか?」


「この事は特定の人物しか知らない事だから他の人たちには知られたくない事なの・・・誰にも決して言わないって断言出来る?」


「・・・・・・そんなに重要な事を俺に?・・・あぁ!あいつとは親友だと思っているからな!約束するよ!誰にも俺は言わない!」


「先ず、あなたが付き合っていた・・・今も気持ちは変わらない雫、いえ、紅先生の事から・・・」


「おい、それどうしてお前が!?・・・」


「紅 雫・・・彼女は私の従姉妹・・・」


「嘘だろ!?・・・雫さんが櫻木の従姉妹!?」


「そして私、私は既に気付いていると思うけれど、中城・・・いいえ、浩輔君の事が好き。」


「あぁ・・・それは以前から態度を見ていて何となく分かってた・・・」


「どうして私が浩輔君を好きになったのか・・・」


「あぁ・・・どうしてなんだ?」


「私は彼に命を救われたの・・・それによって彼は記憶の断片が抜けた状態になった・・・」


「それは本当の話なのか!?」


「今の浩輔君は私に対しての記憶がほとんど無くなってしまった状態・・・」


「だとすればあいつは部分的に記憶喪失と言う事なのか!?」


「そう・・・でも様子を見ている限りでは私や雫に対しての記憶だけが無い状態・・・他の記憶は割と残っているみたい・・・でも所々思い出せていない部分があるの・・・」


「そんな状態だったのかよっ!!・・・それなのに俺は・・・」


「あなたは知らなかったから仕方が無い・・・今、浩輔君は失っている記憶を取り戻す為に前向きになって来た所なの!この気持ちを大切にしたい・・・」


「だが、どうやって記憶を取り戻させるんだ?」


「色々と思い出せそうな状況を作ってみたりしたのだけれど、やはりまだ一気には無理で、少しずつなら許容し掛けているわ。私も色々とやっているけれど、他にも刺激が必要なのかもしれない・・・例えば・・・さっき他の子とデートって言ってたでしょ?あんな風に色々と動いてみて逆に私や雫から少し遠ざけて様子を見たり・・・」


「そうか・・・分かったよ!俺も協力する!あいつが本当の自分を取り戻せる様に俺には俺に出来る事を精一杯やって見せる!何か俺にも手伝えそうな事があったら言ってくれないか?俺もあいつには色々と助けてもらった事もある!」


「えぇ!ありがとう・・・凄く助かるわ!」


「それから・・・雫さんの事なんだけど・・・浩輔だけじゃなくて雫さんとも関わりがあったのか?」


「えぇ・・・私たちが幼少期の頃に雫とも接点があるわ・・・ただ、私も実の所少し記憶が曖昧な所があるの・・・恐らく浩輔君に助けてもらった時に一緒に記憶の一部が欠けてしまっている状態みたい・・・」


「そんな・・・櫻木もなのか!?・・・だが命の恩人だって言ってたくらいだから相当な怪我だったんだろうな?」


「うん・・・私は全く外傷は無かったけれど、浩輔君は生死を彷徨う状態だった・・・2度助けられたの・・・」


「そうか・・・それだったら尚の事、浩輔を振り向かせなきゃな!!応援してる!!」


「うん・・・ありがとう・・・あの、真木谷君?雫の事なんだけれど・・・」


「どうかしたのか?」


「雫は、安い女じゃない・・・一度決めて付き合った人は本気で大切に想っている・・・だからその事だけは信じてあげて?」


「あぁ・・・俺もショックだったけど浩輔から事情を聞いたりそして今、君から聞いた事で確信出来たよ!ありがとな!状況が変わったら再度・・・」


「うん・・・」






「櫻木さんと真木谷遅いな?」


「そうですわね・・・どうかされたのでしょうか?」


「櫻木さんが真木谷君を連れ出すなんて見た事が無かったから驚いちゃったけど!!」




流石2人だな・・・櫻木さんが真木谷に恋心を抱いていたと言う展開へは考えていないんだな・・・やはり櫻木さんの出していたオーラと言うものが俺にだけは伝わっていないって言う事なのだろうか?




「おぉ!悪ぃ!さっきのデートの話の続きだけどさ?」


「いや、それ今回は無しにしたんだよ!真木谷が勝手に決めちゃったからさ・・・」


「いやいやいや、引き続き決定事項の方向で!」


「はぁ?・・・」


「私も・・・参加してあげるんだから!!感謝しなさいよっ!?」




うわぁ・・・上から目線だし・・・行かない方向で上手く話が進んだのに・・・




「って事で浩輔のハーレムデート!!一度話が終わっちゃったみたいだけどさ?2人も来るよね?」


「はい♡勿論です!!」


「私も行きます♡」


「だとよ?櫻木さんも参戦だからお前は当日ウハウハしてれば良い!俺は監視してるから!」


「そこのハーレム状態の集団さん?何を話しているのかしら?」




うわっ!!大物が登場したぞ!?

下手な事言うと面白がってついて来るだろうし・・・




「は・・・はい!!・・・ちょっ・・・ちょっとテスト勉強について話をしていました・・・」


「そう?テスト勉強について?何か難しい事があるなら相談に乗るわよ?」


「だっ!?大丈夫ですからぁ・・・はい!!俺たちだけで解決出来ますしぃ・・・」


「そう?・・・なら良いけれど・・・何か困った事があったら言ってね?手取り足取り教えてあげるから♡」




何をさらっととんでも無い事言ってるんですか!?「♡」マークまで付けちゃって!?

何とか率先して俺が喋り出した流れでその場をごまかす事に成功!!

週末は大変だぞ!?




帰宅後・・・




「♪~浩輔様とデート♡・・・♪~浩輔様とデート♡」




あの・・・はっきりと歌にしないでくれませんか?とてつも無く恥ずかしいですから・・・




「それにしてもよくやるよ・・・」


「えっ!?・・・何がでしょうか?」


「だってさ?普通デートって1対1でするものでしょ?それなのに男が俺だけで女の子が3人もいて・・・それでも良いの?」


「男の子がどの様な感覚なのか私ははっきりと分かりませんが、女として生まれ育った私としては、大好きな殿方と一緒に居られる時間だけでも十分なのです・・・恐らく残りのお二方も・・・」


「そう言うもんなのかな?・・・俺だったら独占したいと思うけどなぁ?・・・」


「そ・・・そそそ・・・・それは・・・つまっ・・・つまり、私を独占されたいと言う事で宜しいのでしょうか!?」


「いや・・・例え話って事だよっ!!特に櫻木さんを独占したいと断定した話と言う訳では・・・」




まぁ・・・最近ではその傾向も否定出来なくなって来たけどね・・・




「何だ・・・残念・・・ですが浩輔様?私を独占したいのであればいつでも仰って頂けたら私の身も心も既に浩輔様のモノですから♡」


「あ・・・あはは・・・うん・・・ありがとう・・・気持ちだけ・・・ほんの気持ちだけで十分満足です・・・」




デート当日・・・




「さてと・・・時計台の下だったよな?あの・・・一応2人だけじゃないもので・・・腕にしがみつくのは止められた方が宜しいかと?・・・」




待ち合わせ場所の時計台の下へ到着した俺たち・・・

櫻木さんは一応同居が他の学校関係者や生徒たちにバレない為に時差で集合する事にした。到着すると同時に俺の腕にしがみついて来た。

他のメンバーはまだ来ていないみたいだ・・・

腕から離れてもらい少し待つ事数分が経過・・・




「おはようございます・・・風谷ですわ・・・」


「おはよう♪風谷さん、今日は名前に見合って涼し気な格好で似合ってるね?」


「はぁ♡・・・あっ!!ありがとうございます・・・流石浩輔君ですわ♪少し青色を強調してみました・・・」


「中城!?・・・私のお洋服は?・・・お洋服はっ!?・・・」


「う・・・うん・・・櫻木さんの私服姿も新鮮で可愛いと思う・・・よ?」




無理矢理言わされてる感満々なんだけどな?・・・櫻木さんは言わずともいつだって綺麗・・・だよ・・・あの変態性癖だけ無ければパーフェクトだったのに・・・勿体無い・・・




「おはよう?浩輔君?それに皆も!」


「おはよう♪五条さん!・・・五条さんは逆に暖色系な感じで統一したんだ!?」


「うん!私、こう言う格好の方が似合うかなと思って・・・どうかな?」


「バッチリだと思うよ!うん!可愛い!!」




うん!100人が100人見て、誰1人ストーカーだって思わないよ!きっと・・・




「ムスッ!!中城?どう?私の髪型?」


「う・・・うん・・・いつものツインテールをポニーテールにチェンジしたんだね!大人っぽくなって素敵だと思うよ!」




朝出て来る前に散々褒め千切ったのにここでも?




「中城?喉が渇いたからジュース買って来て?」


「えっ!?・・・もう?・・・分かったよ・・・えっと君たちは何飲む?」


「えっ!?・・私はまだ大丈夫ですわ!!それより櫻木さん?本日の主役の浩輔君にパシリ扱いですか?それって・・・」


「いいの!中城は女の子にこう言う事されるの好きだから♪ねっ?マゾ男君?」


「え・・・あは・・・あはは・・・そうだね・・・俺・・・行って来るよ!!五条さんは何飲む?」


「いいえ!私もまだ大丈夫だよ?後で一緒に買いに行こうね?」




俺は何かあるんだろうなと思って櫻木さんに言われた通りジュースを買いに行った。




「えっと・・・ジュース俺は・・・これ、櫻木さんは・・・あった!これだな!」




あれ?俺どうしてこれだって分かった!?

櫻木さん、何も言わなかったよな?どれが飲みたいかって・・・

一先ず2本買って俺は直ぐに戻った。すると・・・




「あの・・・どちら様でしょうか?」


「えっ!?・・・あぁ・・・私は気にしないで?通りすがりのうら若き乙女なので・・・」




うら若き乙女が自分でそんなセリフ言わないと思うけど?・・・




「そして、一緒にいるそこの男は誰?」


「あはは・・・俺も通りすがりの美少年って設定で・・・」


「言わされた感丸出しじゃないか!!監視か?観察なのか!?人のデート風景を!?」


「いや・・・俺はそうだったんだけどな?・・・紅先生が近くを本当に通り掛かってさ?それで・・・」


「本当に通り掛かったのか疑わしいものですが?」


「もう~・・・そんなに怒らないの!こんな楽し・・・いえ、こんな大切な事担任として見過ごせるはずが無いでしょ!?」




あぁ~・・・楽しんでるんだ!?やっぱり・・・

面白半分って事ですね!?分かりました。それならそれで俺たちは・・・




「3人共走るよ!?ついて来て!?」




俺は真木谷と雫さんから離れるべく櫻木さん、風谷さん、五条さんと走って逃げて行った。




「あの・・・雫さん・・・俺・・・」


「・・・私もまだまだね・・・和君?今日だけ・・・あの子たちの事は大丈夫みたいだから・・・私たちも・・・デートしましょ?」


「は・・・・はいっ!!俺・・・頑張ってエスコートします!!」






「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・皆、大丈夫?・・・この辺りまで来れば流石にもう追って来ない・・・はず・・・?・・・あれ?どうしたの?皆、顔を赤くして?やっぱりかなり疲れちゃったかな?ごめんね、無理に走らせちゃって・・・ん?どうしたの皆?そんなモジモジして?」


「そんな・・・浩輔君ってだ♡い♡た♡ん♪」


「まぁ、確かに急に走らせちゃったのは謝るけど、そんなに大胆かな?俺?・・・」


「ハーレム状態でしたいだなんて♡私も初めてですので優しくリードなさって下さいませ♡」


「いやいや・・・どうしちゃったの?本当に!!様子が・・・」


「もう~♡我慢出来ませんわ!!浩輔様♡私も素を出しちゃいます♡早く行きましょう?」


「皆、ちょっと待って?何その変な状況・・・俺、確か真木谷たちから逃げようとしてここまで走って来たよね?・・・これからデートするんだよね?それなのにその展開って・・・」




3人「♪~♡♡♡」




待てよ!?落ち着け?3人が下の方をモジモジとさせながら顔を赤らめつつ目がハートになっている?・・・その様子から察する事が出来る今、俺たちの置かれている状況を推測してみる事にしよう!




「ホテルじゃないかぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!」




はい!解決しましたよ!!

こんな状況と言えばホテル街へ入っちゃった訳です!

無論、ここで言う所のホテルとはただのホテルではありません!!

大人の男女が愛する為のホテル・・・自宅では騒音がマズイ方たちの憩いのオアシス的な場所だろうと思われます。

勿論、元より健全な高校生たる者たちがやって来て良い場所では基本!!基本無い訳で、本日の俺の状況からしても決してここへ足を踏み入れてはいけない場所である事を察しております。察しておりますとも!!ですが・・・想定外の状況に置かれる事もあるでしょ?

例えば、今俺が置かれてしまったこの状況ですよ!誰かから必死に逃げて来て何処とも知れぬ場所へ辿り着いてしまった事、きっとこれを読んで下さっている読者の皆さんもあると思います。共感して頂けるはずです!理解して頂けるはずです!!




「何ボヤッとしてんだよっ!!さっさと入るぞ?マゾ男が!!」


「へっ!?・・・今何と?・・・」




五条さんのドスの効いた声が響き渡りふと我に返った俺・・・既に五条さんたちは入る気満々のご様子でそのホテルの入り口へと向かってしまっていた・・・




「ダメダメダメ!!そこは入っちゃ・・・」


「はぁ?・・・テメェ女3人連れて来ておいて逃げんのか?男なら女を引っ張ってでも連れ込むんだろうが!!」




ドキッ!!!




何だ?今凄く胸が高鳴った気が・・・

五条さんたちが入って行くのについて行く形となってしまったが、この後どうすれば良いのだろうか!?




「さぁ、皆、シャワーを浴びましょう?」


「五条さん、随分と乗り気ね?怖く無いの?」


「へっ!?・・・そんな事ないよ?だってここに入ったからって特にする事って1つとは限らないでしょ?」


「あぁ・・・そう言う事か!分かった!それじゃぁ私たち一緒に入ってるから浩輔君は逃げちゃダメだよ?」


「いや・・・逃げる逃げないじゃなくて・・・その・・・やっぱりこんな所は出た方が・・・」


「うっせぇんだよ!!だいの男がウジウジウジウジ!!私らだってこんなとこ初めてだっての!!それでも好きな男の子がいるから頑張ってんだよ!!お前だって少しは空気読んで場のムードを盛り上げろって言ってんだよ!!」


「・・・・・・・・・・」




何だろう?俺、本当にマゾなの?何故か五条さんの言葉責めみたいなのがドキドキして来たんだけど?・・・あれ?・・・確か俺って・・・何だ?何か今頭の中に・・・

でも直ぐに消えてしまって思い出せない・・・何だ?懐かしい様な・・・






(ほら、お前変態なんだよ!!分かってんのか?私がこうして言葉責めして悦ぶ変態野郎だってんだよ!!)


(俺は変態なんかじゃない!!・・・至ってノーマルだ!!)


(だったらどうしてお前の顔アヘってんだよ?気持ち悪いんだよっ!!)






「って事が過去にあったんだけど・・・それ以来私どうしても好きな男の子に対していじめたくなってしまうの・・・」


「へぇ~・・・殿方は、やはり女性に支配されたいのでしょうか?」


「そうだなぁ・・・人によると思うけど多分それって包み込まれている感じがして安心してるからじゃないかなって私は思うんだ・・・だからああやって怒鳴りつけている様にしていても心底からはあなたの事が大好きなんだよ・・・って、どこかオーラを出してやると伝わるかも・・・」


「五条さん・・・ありがとう・・・さっきの状況で浩輔君、少し良い刺激になったと思う・・・」


「ジュース買いに走らせた時に真剣な表情をして話をして来るから何があったのかと思ったけど・・・そんな事ならもっと早く言ってくれれば私たちも協力したのに・・・まぁ、根がマゾなのかノーマルなのかは置いておいて・・・今はその記憶ってのを取り戻さなきゃだよね?」


「私も僭越ながらご協力致します!何でも言って下さい!!」


「2人共・・・ありがとう・・・頑張って早く浩輔君の記憶を取り戻しましょう!!」


「でも・・・この後どうしましょうか?記憶を取り戻す為にあらゆる「刺激」を与える方が良いと言われましたが・・・私たちに出来る事と言えば・・・」


「さっきの私みたいに言葉責めしてあげれば良いかも!?・・・結構浩輔君悦んでいたみたいだったし♪」


「それ良いかも・・・」


「じゃぁ、琴音ちゃんの許可も出た事だし・・・皆?私みたいに出来る?」


「私もツンデレやっていた身!言葉責めならお手のモノですわ!!」


「私も・・・出来る・・・と思う・・・」


「琴音ちゃんはちょっと厳しいかもね・・・無理しなくても私らだけでも大丈夫と思うから出来そうなら参加してよ!」




3人でシャワー室使うのって狭すぎる気がしませんか?

って俺何やってんだろう?こんな所で1人で・・・

でも、流石にここにいるのは居心地が・・・

やっぱ俺帰ろうかな・・・手紙を残して・・・




「ごめん3人共・・・俺は、やっぱり無理です。帰りますね・・・そ~っと・・・足音立てずに・・・」




よし!後1メートルで扉だ!!鍵を開け・・・あれ?後1メートルなのに人の気配が!?




「な~にしてんのかなぁ?こ♡う♡す♡けく~ん?」


「い・・・いやぁ・・・これは五条さんじゃないですか!!そんなバスローブに身を包んでセクシーな姿で・・・着替えないと風邪引きますよ?」


「ん?・・・あぁ!大丈夫大丈夫♪ここ、そう言う場所だから♡・・・それより浩輔君はどうして扉に手を掛けようとしていたのかなぁ?」


「あ・・・あぁ・・・そうだ!!鍵を閉めたかどうか忘れてしまったから確認しようかな?って・・・あはは・・・」


「ふ~ん♪鍵が・・・ねぇ・・・ここって自動で鍵がロックされるから特に閉める必要なんて無いんだけどなぁ?・・・♪」


「えっ!?・・・そっ!?・・・そうなんだ・・・それは進化しているよね・・・最近のホテル事情って・・・」


「ねぇ?浩輔君はホテル・・・来た事あるの?」


「い・・・いやぁ・・・記憶に御座いませんですねぇ・・・あはは・・・」


「ねぇ?奏ちゃん?浩輔君はね?本当は来た事あるんだよ?」




ちょっと待とうか!?櫻木さん!!下手に今口出ししたら漏れなくとんでも無い事になっちゃうかもよ?俺が・・・




「ふ~ん・・・嘘付くんだぁ?・・・本当は来た事あるんだぁ?誰と?」


「1人でだよ?」


「1人で!?・・・嘘っ!?・・・1人で何しに来たの?」


「いや・・・俺は来た事なんて無いよ・・・」


「私がね?襲われそうになったんだ♪」


「えぇっ!?・・・琴音ちゃんが襲われそうに!?・・・そうか・・・浩輔君ってオオカミさんだったんだぁ♪凄いね・・・てっきり童貞さんなのかとばかり・・・♪」


「違うの!!浩輔君が私が襲われそうになっていた所を助けてくれたんだ♪」


「えっ!?浩輔君が琴音ちゃんを助け出したの!?」




あぁ・・・あの時の話か・・・てっきり別の話なのかとばかり・・・




「あぁん♡浩輔君って逞しいんだ♪凄いね・・・襲われそうになっている所を助け出したんだぁ♪王子様ってやつ?」


「いや・・・覚えてないんだ・・・」


「覚えて・・・ない?」


「途中までは確かに櫻木さんを追って来たんだけど、その後急に意識が飛んでしまって、気が付くと中に入って相手の男が気を失っていたんだ・・・だから俺がそうしたと言う確証は・・・」


「あるよ!!・・・だって私がちゃんと見てたもの・・・浩輔君はちゃんと私を助けてくれたの!!強くて逞しくて格好良かった・・・間違い無く私を助けてくれたあの浩輔君だったよ?・・・」




何だ!?・・・頭が・・・うぐっ・・・

確かにあの日、あの後意識が飛んだけど、うっすらと何かが浮かんでいるみたいだ・・・

確か・・・思い出せ・・・確か俺はあの時、櫻木さんの・・・




琴音の悲鳴が聴こえた・・・

琴音を助けなきゃ!!琴音が汚されようとしている・・・早く、このドアをぶち破らないと!!

そうだ!!俺、琴音を・・・琴音を助けようとして・・・あいつに・・・




「浩輔君の様子が・・・どうなさいました?浩輔君?」


「あぁ・・・ごめん・・・ちょっと記憶が・・・この間の事を思い出したみたい・・・だ・・・」


「浩輔君!!」


「ごめん・・・全部と言う訳じゃないんだ・・・だけど、この間俺が意識が飛んだ時の事はっきりと思い出せた!!俺・・・琴音を助けたいって思って鍵が掛かっていた扉をぶち破ったんだ!!それで榊川が琴音を汚そうとしていたからぶん殴った。色々と言い逃れしやがったから俺頭に来て・・・それで・・・」




バタンッ!!!




「浩輔君?・・・浩輔君・・・!!?」


「やっぱりまだ早かったかもしれない・・・2人共ごめんなさい・・・浩輔君・・・昔は私の事こんな感じで・・・呼び捨てで・・・」


「ううん・・・私たちも焦り過ぎちゃったかもしれないわね・・・ごめんなさい・・・少し休憩しましょう?」


「浩輔君も色々と頑張っているのですね・・・私たちも彼に精一杯協力して差し上げなければなりませんわね・・・」


「浩輔君・・・ごめんね?・・・私が至らないばかりに・・・本当に・・・本当に・・・」


「琴音ちゃんは頑張ってると思うよ?だからこうして浩輔君だってついて来てくれているし・・・あなた自身も記憶の不十分な部分を取り戻さなきゃね・・・私たち協力するからさ?」


「奏ちゃん・・・」


「そうですわ!この様な事実を知って黙って見過ごせるはずがありませんもの!」


「栞ちゃんも・・・本当に・・・本当にありがとう・・・」




浩輔君の記憶が少しずつではあるけれど、元に戻りつつある・・・けれど、やはり相当な負荷が体や精神に掛かってしまっている様子が伺えた。

やはり自然に記憶が戻るのを待つしか無いのだろうか?

それでも、1度取り戻した記憶はしっかりと元の枠の中へ収まっているはず・・・

この間の件の記憶がたった今戻った浩輔君・・・その後意識を失ったけれど、次に目が覚めた時にはきっとその記憶は確立されていて、過去の2つの失われたとされる記憶の断片はもう少し時間を置いて少しずつ探して行けば良いのかもしれない・・・



























第7話 新たな浩輔の想い人はストーカー?それともS女様?浩輔の一部の記憶が鮮明に!?・・・一方、雫と真木谷の様子は!? Finish

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