第6話

前回迄のあらすじ


特に・・・ありません・・・

嘘です!本当は色々とありました。この数日の間で・・・

櫻木さんが突然俺の家に上がらせろと言い寄って来たので致し方無く・・・

週末に来ると言って来た。週末?いいえ、俺にとっては終末かもしれません。

仕方無く週末櫻木さんが来るのを待っていた俺だったけど・・・あれ?俺櫻木さんに家の場所伝えたっけ?

俺は櫻木さんに肝心な家の場所を告げていなかった。どうしようかと悩んでいたら櫻木さんが来てくれた。

それも大きなトラックに乗って・・・

どうして友達の家に来るのにトラック?

するとトラックの中から大量の荷物らしき物を次々と運び出し俺の玄関先へと置いて行くのであった。

そしていつもながらSP(セキュリティポリス)の方が・・・

そんな事はさておき、櫻木さんは自宅の自身の荷物を持ち込んで来た。

一体何のつもりだ!?と思っていたら、どうやら俺の家に住む事に決めたらしい。

そんな事をいきなり決められても・・・困っている俺に櫻木さんは、俺の両親に話は通していたらしく、俺の両親は櫻木さんに招待された海外の櫻木財閥が経営しているホテルへ当面の間暮らす事になったらしい・・・

色々と意味が分からない・・・

そもそも俺の両親と櫻木さんの所と何か関係があるのだろうか?

それも俺の記憶と何か大きな関わりがあるのだろうか?

ドタバタで・・・と言っても俺の頭の中だけの話だけど・・・

一つ屋根の下で年頃の男女が共同生活する流れとなってしまいました。

俺・・・くどい様だけどこれから先どうなってしまうんだろう?











櫻木さんとの共同生活が始まって早1週間・・・この1週間、かなり俺は緊張感のしっぱなしで・・・それはそれは、俺たち高校生だって言うのに赤の他人がこうやって同じ場所で生活している訳ですから・・・

いや、ね?かなりの綺麗好きな櫻木さんは休みの日には日に2度もお風呂に入るそうで、まぁ、流石に寝泊りするのに同じ部屋って訳にもいかない訳ですから無理矢理隣の部屋に暮らしてもらう様にあれから説得しましたよ?

ちょっと俺が櫻木さんに用事があってノックすると「はい♡どうぞ?」

と言ったから・・・って「♡」は何だろう?と一瞬頭を過ったけどどうぞと言われて入らない訳にもいかないから俺は普通にドアを開けて入ろうとしたんです、すると・・・




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「?・・・どうなさいましたか?浩輔様?」


「・・・・・・・・・・・・・・ごめんなさいっ!!!!!!」




バタンッ!!!!!




もうお分かりですよね?そうです、櫻木さん・・・着替え中だったんです!!いや、直ぐにドアを閉めたから凄く大きくて綺麗な胸や、パンティーが黒だったと言う事は見ていませんよ?すると・・・




ガチャッ!!




「浩輔様?如何なさいました?入って来て下さって構いませんけれど・・・」


「いや、どうして着替え中に鍵閉めないで男が入ろうとしているのに「どうぞ」ってOK出してるのさ!?」


「えっ!?・・・別に不思議な事ではありませんよね?・・・」




可憐な美少女は不思議そうな顔を俺に向ける。




「いや、そこは「きゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!あんた何勝手に入って来てんのよっ!?この変態ぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!」って言うべき所でしょう!?」


「ですが・・・どうぞと私は申し上げましたけれど?・・・」


「はい・・・そうでした。俺が間違えているみたいな展開でした。」


「いっ!!いいえ!とんでもありません・・・ご主人様が申し上げた事は全て正しい・・・私とした事が、大変申し訳御座いませんでした。どうか・・・どうか私の様な不躾な奴隷を捨てないで下さいませ!!お願いです・・・お願い致します・・・何でも致します。ご主人様が足を舐めろと申し上げるなら悦んで舐めさせて頂きます。ご主人様が舐めろと仰るなら私はこの世にも無い悦びに見舞われて一生懸命ペロペロとアレをお舐め致しますわ♡はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




ですよねぇ~・・・結局こう言う展開に話が反れちゃう訳ですよ!!

それでですね?もっと困る事と言えば、やはり年頃の男女が共同生活している訳ですから、お風呂やトイレなどの問題があるんですよ?分かりますか?お風呂やトイレって無防備な姿で要件を済ませる場所じゃないですか?

俺もですね・・・確かにこんなに凄い美少女が隣にいる訳ですから確かに不快と言う想いは一切無い訳ですよ!

ですが・・・ですが、やはり俺たちはまだ高校生、健全かつちゃんとした青春を送るべきじゃないですか!?それなのにですよ?




「浩輔様?お湯加減は如何でしょうか?」


「えっ!?・・うん、丁度良い感じだよ!ありがとう!」




ガラガラガラ・・・




もうお気づきですよね?この「ガラガラガラ」・・・家のお風呂場の構造上扉がこの様な音を立てる訳ですね・・・俺は丁度湯船に浸かっている訳ですから扉なんて開けられません。割と広めのお風呂なものですから・・・




「いっ!?いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


「あっ!?浩輔様!?如何されました!?」


「いや、如何も何も、どうして入って来てるの!?今、俺が入ってるよね?」


「えぇ・・・そうです!ですからお背中お流ししようかと・・・」


「えっ!?・・・背中を?だっ!!大丈夫だからっ!俺1人で出来るし・・・」


「遠慮なさらないで下さい♪昔はよく・・・」


「えっ!?」


「いっ!?・・・いいえ!何でもありません。それよりお背中を・・・」


「いや、本当に大丈夫だから!!それより食事の準備中だったよね!?そっちの方を・・・」


「そうですか!?・・・残念です・・・では、浩輔様のご命令ですので私はお食事の準備を引き続き・・・」


「う・・・うん!・・・宜しくお願い致します。」




思わず敬語になっちゃったよ!!

まぁ、よくあるラブコメ的展開だとお風呂でラッキースケベ的な何かが起こったりするんだろうけど、そんな事起きてしまってはR-18まで展開してしまうのが櫻木さんだろうし・・・

まぁ、お風呂はこんな感じだったんですよ!?それで、その後がまた大変だったんです・・・




「浩輔様、お風呂はもう宜しいでしょうか?」


「うん!ありがとう、凄く気持ち良かったよ♪」


「では、続いて私が入って参りますね!ついでにお掃除も済ませますので少しお時間を頂戴致しますのでお食事を先にどうぞ♪」


「えっ!?・・・そんなの悪いよ待ってるから一緒に食べよう?」


「浩輔様♡・・・わっ!!分かりました!!では、私、早く済ませますね!!」




そう言って俺は櫻木さんがお風呂から出て来るのをひたすら待った・・・




1時間・・・

まぁ、仕方無いよね!?女の子だもん!!それに掃除もするとか言っていたし・・・




1時間半・・・

流石に遅すぎないか!?・・・少し様子を見に行ってみようか!?もし倒れていたりしたら大変だし・・・




「櫻木さん?大丈夫かな?結構時間経ったみたいだし・・・」




そうしてお風呂場の近くへ辿り着いた時に物凄い声がしていたのに俺は耳を傾けた・・・




「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・浩輔様の残り湯・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・私・・・遂に浩輔様と1つになれるのですね!?・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




いや、この場合の「はぁ・・・はぁ・・・」と言うのは勿論お風呂を掃除して息遣いが荒いと言う訳では無く、完全に悦に入っちゃってると言う意味での「はぁ・・・はぁ・・・」である!まぁ、倒れていた訳では無かったので良かった。一安心だ。さて・・・ここで普通なら声を掛けて止めようとするのが一般的な男子の行動だろうと思うでしょうが、お気付きかもしれませんが、只今お風呂で欲情まっしぐらのまさに「雌犬」と化している櫻木さんへ俺がツッコミを入れようものなら裸のまま扉を開けて俺を風呂の中へ引きずり込んでとんでもない結果が待っている事を俺は考慮し、あえてここでは何も言わず彼女がどう言う動きを見せるのか警戒しているんです!そう・・・警戒です!!




「あぁ・・・♡浩輔様の温もりが伝わって来る様です・・・私、幸せです♪」




えぇ!今、あなたが俺の「温もり」だと思っている「温もり」の正体はただの「お湯の温もり」です。あたかも俺が発する様な言い方しないで頂きたいものです・・・




「折角ですからこのお湯を口に含ませて頂きましょうか・・・はぁ・・・はぁ・・・」




ガラガラガラッ!!!!!!!!!!!!!!




「止めるんだ!!!!!!!!!!!!!!!!」




しまった!!思わず扉を開けてしまった!!!チクショー!!!!!!




「うふふ♡引っ掛かりましたわね?浩輔様♡」


「えっ!?・・・お湯も・・・無い?」


「えぇ!もうお掃除も終えてそろそろ出る所でした♡・・・後30分程早ければ色々と面白いものが見られたかもしれませんわね♪」


「あぁ・・・何だ・・・そうか・・・良かった・・・」




そう、櫻木さんはバスタオルを身にまとい、既に掃除を終わらせた状態だった。うん、今回に関しては俺が悪い!徹底的に俺が変な妄想をしたからこう言う恥ずべき結果が生まれた訳だ!!よし、もう変な事を考えるのはよそう・・・

無事に何事も無く夜を迎えたのであった・・・だが、夜を迎えて寝る前には勿論トイレに行く訳ですよ!寝ている間に起きるのは面倒だし・・・

そしてですね、俺がトイレに行った訳ですが・・・




「今日も散々だったな・・・まぁ正直に言って母さんが作るご飯より美味かったし、それに、さっきお風呂場入ったけど、それどころじゃなかったからちゃんと見ていなかったけど明らかにピカピカになっていたよな?・・・本当櫻木さんって完璧超人なのか?」


「あら?私がどうかなさいましたでしょうか?浩輔様?」


「ひぎぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


「あらあら♪そんなに驚かなくても宜しいのではありませんか?ご主人様の身の回りのお世話をするのは当たり前の事ですし♡」


「出て行ってよ!!出るものも出なくなっちゃうからぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」


「これはこれは、大変な粗相を・・・お許し下さいませ。直ぐに出て行きますのでどうぞごゆるりと♪」




何をお世話するつもりだったんだ!?

本当これはきちんと口酸っぱく言っておく必要があるようですね!!

翌日、これでもか!?と思われてしまう程俺は止める様に彼女に言い聞かせた!!

まぁ、櫻木さんは頭が凄く良いしもう同じ様な事はしないだろう・・・




登校時間・・・




「あの・・・浩輔様?大変心苦しいのですが・・・」


「あぁ・・・一緒に登校するのはご法度なんだよね!?俺は大丈夫だから先に行っててよ!いつも櫻木さん先に登校してるでしょ?」


「はい・・・ありがとう御座います。では、先に私は行ってますので浩輔様はもう少しごゆっくりなさっておいで下さい。では、行って参りますね!」




そう言いつつ櫻木さんは少しだけ寂しい表情をして玄関を後にする。

まぁ、終末、いや、週末だったし櫻木さんとずっと一緒だったもんな・・・




「どう?琴音とは上手く行ってるかしら?」


「いや・・・上手くと言われれば上手くなのでしょうけど色々と大変だと言われれば色々と大変な訳で・・・って雫さん!?どうしてここに!?・・・って言うかどうして俺の家を!?」


「あら?そんなに驚かなくても良いじゃない?知らなかったと思うけれど私あなたの大ファンだからストーキングしているのよ?」


「あははっ♪俺もストーカーが出来る程人気が出て来たのか!自宅には変態彼女、外ではストーカー痴女・・・いやぁ!たまらないですねぇ~♪・・・・・・・・って言う訳ないだろうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!」


「あらあら♪随分とノリが良いのね!これも琴音のおかげね♪これなら私も一緒に住めそうね♡」


「ははははは♪いやぁ、本当変態ツッコミ入れるのは疲れますよ!最後の「住めそうね♡」と言う所は聞かなかった事にしますね♪」


「んもう~・・・意地悪ね?こんな美人でスタイルの良いお姉さんと一緒に生活出来るって言う絶好のチャンスなのに♪」


「真木谷に知られたらとんでも無い事になりますよ?」


「あぁ・・・彼なら大丈夫よ?私の言いなりだから私が指摘したら何も言い返せないわよ?」


「いや・・・そう言う問題じゃないんですよね?・・・」


「私の魅了魔法が完全に効いているから大丈夫♡」


「サラッと中二病みたいな事言いますね?」


「中二病?ふふふ♪そうかもしれないわね?でもあなたには効かないのよね?どうしてかしら?」


「あはは・・・はぁ・・・どうしてでしょうね?」




適当にあしらいながら俺も登校時間になったので鍵を閉めて雫さんと分かれて学校に向かった。




学校に到着。




「よっ!浩輔!おはよう!」


「おはよう!真木谷!」


「今朝雫さんそっちに行っただろ?」


「へっ!?・・・どうしてそれを!?」


「あぁ、何だか雫さんお前に会いに行くって喜んでたみたいだったから・・・」


「そ・・・そうなんだ!?・・・あぁ、来たよ・・・俺の家の真ん前に・・・」




そうか、真木谷が元凶だったのか!?どうして俺の家を教えたんだ!!両親がいない今、俺の家を教えられては俺に身の危険が降りかかるだろうが!?




「言っておくがお前の家を教えたのは俺じゃないぞ?」


「そ・・・そうなの!?・・・だったらどうして雫さんは!?」


「あぁ・・・そう言えば雫さんお前の大ファンだからとか言っててよくお前の様子をストーキングしていたみたいだったぞ?」


「ははは♪・・・やっぱり本当にストーキング行為してたんだ?・・・って真木谷止めてくれよ!!!!!!!」


「今日のお前はノリがいいな!・・・って別に構わないだろ!?あんな綺麗な人がファンなんだぞ!?凄い名誉だろ!?」




うん、ストーキングだけじゃないよね!?魅了魔法もちゃんと効いているみたい!

中二病とか言っちゃってごめんなさい。本当にあるんですね!魅了魔法って・・・




「中城!?・・・何鼻の下を伸ばしてるのよっ!?」


「えっ!?・・・伸ばして無いよ?」


「何か女の人にストーキングされて喜んでるんでしょっ!?」




いや、今突っかかって来るのはいくら演技でも色々とマズイ気が!?・・・




「あぁ!俺の彼女が浩輔の家の前に行ったって話なんだ!」


「えぇっ!?・・・どうして真木谷君の彼女がこんなドスケベド変態の中城の自宅の前に!?・・・ってどう言う事よそれ!?」




いや、どう言う事?櫻木さん?「ドスケベド変態」って?どさくさに紛れてとてつも無く酷い事言ってない?




「ちょっと何ぼさっとしてるのよっ!?どう言う事なのよ中城!?教えなさいよっ!!」


「え!?・・・俺が!?・・・」




「雫」と言う名前が何度か俺と真木谷の間に飛び交っていたけどそこは聞いていたのだろうか?とりあえず話をややこしくしたくないし適当に話をしておく事にしよう・・・

ややこしいとは、この場合雫さんが櫻木さんの従姉妹だと言う事がバレてしまう恐れの事。

帰ってからこの事についてはじっくりと話をしようと思った。とりあえず今は適当に言葉を並べて・・・




「いや・・・よく分からないんだけどストーカーが現れてしまったみたいだね・・・」


「ふんっ!!心の中では「俺にもファンが現れたんだ♪これでお前なんてどうでもよくなるな!」とか思ってるんでしょ!?本当最低ねあんたって!?」




えぇぇぇぇぇぇ~!?勝手に俺の心の中を捏造されたぞ!?・・・俺そんな事これっぽっちも思っていないのに・・・




「まぁ、大変だろうが頑張れよ中城!お前は隠れたモテ男と言う訳だな!はははははっ♪」




何が「隠れたモテ男と言う訳だな!はははははっ♪」だよっ!!こっちの苦労も知らずに・・・その内本気で雫さん奪ってやるぞ!?寝取ってやるぞ!!




「はい、皆席に着いて?」




チャイムが鳴って先生が入って来た!?・・・あれ?いつもと全く声が違うぞ!?凄く綺麗な女性の声だし・・・先生どうしたんだろう?




「突然の事で驚いたでしょうけれど、担任の井塚先生は週末に意識を失われてしまい急遽入院する事となりました。命に別状はありませんが当面入院生活を送る事になってしまいました。」




そうか・・・井塚先生は色々と熱い男だったけど、入院生活か・・・頑張り過ぎだったのかも!?・・・それにしてもこの声、何処かで聴いた様な気が・・・いやいやいや、まさかね・・・あまり顔とか見るのは失礼だから下を向いて・・・と言い訳を考えてはいるけど・・・

本当はそうじゃない!本能が顔を見るなと言っているんだ!!




「私の名前は・・・〇〇〇」




俺は無意識で耳を塞いでしまった。すると真木谷が固まったままぽかんと口を開いて茫然とした表情をしていた・・・この辺りで、もう薄々勘付いているのである・・・




「おい・・・浩輔!・・・俺たち大変な状態に・・・」


「いや、今は黙っておこう・・・知らない振りだ・・・うん・・・きっと空気だけ読める人だと俺は信じてる・・・うん・・・ストーカーするくらいの人間だけど・・・」




「えっと、名前を全員覚えました。今日は全員出席の様ね!今日から宜しくね。」




覚えたの!?・・・ストーキング行為で?・・・いや、急遽のはずだったと思うけど・・・

やっぱり院生なだけあって相当頭の回転が早いのだろうか?




「じゃぁ、早速1時限目は現代文ね、井塚先生が担当だから私になるから引き続き宜しくね!」




そうだった・・・熱い男のしょっぱなの授業は月曜日の1時限目だった!!

引き続き苦しい時間が俺たちを襲った・・・

いや、それ以前に従姉妹がいるクラスに赴任ってアリなのか!?って彼氏もいるのに!?

まぁ、彼氏は秘密でと言う流れなら分かるけど、従姉妹は良いのかな?




「えぇ・・・私はこの学校の関係者の家庭にいます。」




嘘やろ!?・・・何でもアリですか!?アリなんですか!?あなたたちの家系は!?・・・




「とは言ってもあなたたちにはほとんど関係無い話だけれど・・・まぁ、だからと言って気を遣う必要も無ければ、この学校の教師の中では恐らく私が一番年齢的にあなたたちに近いと思うから気軽に接してくれると嬉しいわ?」




そんな前振りされて「気軽に」とか言われてもな・・・

とりあえず、あまり関わらない事にした方が良さそうだね・・・うん!前々から本能がこの人には関わらない方が良いって教えてくれていたから!!




「えっと・・・私もこの学校を出ているから何か面白い話とか皆とも共有したいし逆に聞きたい事とかあれば遠慮無く言ってね!」




うん!あなたの狙っている人や俺に対してして来た行為より面白い話は無いですよ?

はい、俺以外からすれば面白い話でしょう!!

俺にとってはたまったものじゃありませんが・・・




「えぇっと・・・例えば・・・校庭の右端に大きな木があるでしょ?あれに関しての伝説って知ってる?」




「あの木の下で告白したカップルは結婚し幸せな家庭を築き・・・子宝に恵まれ、人生を満足し、全う出来る・・・」




初めて聞いた・・・それを淡々と答えたのは櫻木さんだった・・・




「えぇ!その通りよ!流石ね・・・」




「素敵です!!私、初めて聞きました!!」




続いて応答があったのは風谷さんだった・・・




「そうよね・・・折角の学園生活だものね・・・好きな相手に告白して幸せになりたいじゃない・・・」




あれ!?・・・結構何度も会っているのに初めて見る表情だ!!

とても例えにくいけど凄くはかなげで綺麗で・・・絵になる様な・・・雫さんって本当に美人だな・・・




「でも、そんな素敵な話があるのに私たち初めて聞いた!!」




釣られて他の女子生徒も話に参加して来た。




何だかんだ言いながら1日が無事に終わり、雫さんも空気を読んでいる大人だった・・・




「浩輔!?・・・俺、ちょっと雫さんと・・・」


「あぁ、でもバレるとマズイと思うから学校では他人の振りしていた方が良いんじゃ?」




無事に終わったけど、真木谷は色々と落ち着かない・・・まぁ、この一件に関しては聞かされなかったのだろうな・・・




帰宅・・・




「はぁ・・・色々と大変な1日だったな・・・真木谷大丈夫かな?」




櫻木さんはそろそろ帰宅して来るはず・・・




「只今戻りました!」


「おかえり!あっ、櫻木さん?ちょっと後で話があるんだけど・・・」


「えぇ!分かりました。それでは、先に夕飯の準備などしてしまいますね?」


「うん、ごめんね!疲れてるのに・・・」




こうして夕食の時間になり、俺は櫻木さんに例の事を告げる事にした・・・




「・・・と言う感じなんだ!ごめん、もっと早くに伝えておくべきだったよ。」


「浩輔様?・・・すみません、私の方こそ、実は浩輔様の今のお話は以前に雫から伺っておりました。」


「へっ!?・・・そうだったの?・・・」


「大変申し訳御座いません。最初に雫が浩輔様と真木谷君に声を掛けたあの日に少し予感がしていたのですが・・・」


「あぁ・・・そうだったね・・・あの日見ていたんだったね・・・」


「真木谷君は雫と私が従姉妹だとは存じ上げない・・・」


「そうなんだ!伝える事は無いだろうと思って・・・」


「そうですね・・・伝えない状態でここまで来て良かったかもしれません。雫が私たちのクラスに赴任して来た経緯もありますし・・・あまり彼に負担を掛けてしまうのも大変でしょうし。」


「あぁ・・・そうだね。あまり周りの人たちに負担を掛けるのも良く無いかもしれない・・・」


「それはそうと、朝、真木谷君とお話をされていらしたストーカー女の事なのですが・・・」


「えっ!?・・・あぁ・・・あれは・・・その・・・」


「雫ですね?」


「うん!・・・それにしてもどうしてここが俺の家だって知っていたんだろう?」


「私も浩輔様の自宅までは流石に教えていません・・・きっと雫は・・・」


「だよね・・・真木谷も教えていないとか言っていたし・・・本当にストーキング行為を!?」


「・・・だとすれば少々厄介なライバルが現れてしまったみたいですね・・・」


「ん?・・・何か言った?」




櫻木さんは真剣な面持ちで片手を顎に添えながらその様に静かに口にした。




「それにしても、まさか担任が雫さんになるなんて!?・・・雫さんって確か院生だよね!?」


「はい・・・雫は教員免許を持っているのです。ですので雫の家系で私たちの通っている学園の関係者が井塚先生が倒れられた事を知り急遽呼んだのですね・・・」


「やっぱり櫻木さんたちの家族って凄いんだね!!」


「いえ・・・それ程のものでは・・・」




いや、それ程のもの以上だよ!!どれだけ大物揃いなんだってくらいに!?




「さて・・・お夕食も終わった所で、デザートなど如何でしょうか?」


「デザートか・・・夕食自体が既に毎日最高なんだけど・・・更にデザートなんて出してくれるの!?」


「はい・・・・もじもじ・・・デザートは・・・わ♡た♡・・・」


「さて、お風呂に入ってそろそろ寝ようかな・・・今日は、かなり大変だったし!!」


「そんなぁ・・・デザートは?・・・」


「ごめん、急に疲れが出て来ちゃって・・・」




うん・・・もう回避する策を俺は覚えたぞ!!

さっ!お風呂に入ってさっさと寝よう・・・






「雫は・・・」




どうしたんだろう?櫻木さん、少し寂し気な顔をしているけど・・・

そろそろ寝る準備に入ろうとした時に扉の前で櫻木さんが俺に静かにその様に一言話を掛けて来た。




「どうしたの?雫さんが?」


「朝、学園の木の話をしていたでしょ?」


「あぁ!告白したら・・・って話だよね!それがどうしたの?」


「雫は私たちの学校に通っていたって言ってたでしょ?」


「うん!OBだよね!言ってた!」


「ある日あの木の下で告白したの。」


「えっ!?・・・雫さんが?」


「えぇ・・・それで相手もOKを出したの。それで2人はその後付き合い出して大学3回生になったの。」


「あぁ・・・経験談も踏まえた話だったのか・・・」


「けれど・・・その幸せだと思われた時間はそう長くは続かなかったの・・・」


「それはどうして?・・・」




そのまま息を詰まらせ掛けながらも櫻木さんはゆっくりと雫さんの過去について話を続けてくれた。




「3回生になったある日の事、雫の彼氏は病気に掛かってしまい入院生活を余儀なくされたの・・・」


「・・・・・・・・・・」


「雫は毎日彼の元を訪れ看病もしていた・・・」


「うん・・・・・・・」




俺もいつの間にか真剣な表情を浮かべ、櫻木さんの話を聞いていた。




「4回生になる前に・・・・・・・」


「そうか・・・雫さん・・・頑張っていたんだね・・・」


「でも・・・雫はそれでも幸せだったって言っている・・・今日、私があの木の話を雫がした時私が何故それを答えたのか分かってくれたかな?」


「うん・・・分かったよ・・・痛い程に・・・」




そうだ!幸せになれたと言う実績は雫さんの中では事実として、経験者として強く言いたかったのだろう・・・

でも、その後の過程が雫さんには訪れなかった・・・




「ねぇ?浩輔君・・・雫があの木の下で告白したらと言う話について、どう思う?今の私の話を聞いてどう思った?所詮ただの言い伝えだとか信憑性の無い話だとか思っちゃったかな?」


「どうだろう?・・・俺って占いとか見ないって言ったでしょ?・・・そう言うのって結局は人それぞれの価値観みたいなものじゃないかなって思うんだ!誰を好きになっても誰と一緒にいたいと思っても結局は本人の意志、お互いの気持ちだからどこで告白したってお互いが大好きでずっと一緒にいたいと思えば結ばれるんじゃないかな?でも・・・少し肩を押してくれる理由があれば、素敵なんじゃないかな?」


「ふふ♪・・・」




俺がそう言うと櫻木さんは凄く嬉しそうに笑顔で少しだけ笑った。




「覚えていないかと思うけれど、そのセリフ、一言一句そのまま昔私に言ってくれたんだよ?」


「嘘っ!?・・・流石にそれは無いでしょ?」


「いいえ!私があなたが本心から述べた言葉を忘れるはずがないわよ?」


「う~ん・・・本当に一言一句そのまま言っていたのかな?」




だとすると俺は記憶がある、無いに関係無く考え方自体は変わっていないのだろう・・・




♪ピンポーン




櫻木さんとその様な話をしているとインターホンが鳴った。




「誰だろう?・・・はい?どちら様で・・・はい、セールスはお断りしていますので・・・」


「ちょっと!!冷たいんじゃないの?」




そうだった・・・朝、家のアジトを突き止められていたんだった・・・




ガチャッ!!




「もう~!!うら若きレディーがドキドキしながら意中の男の子の家のインターホンを押したのよ!?もっと優しく出迎えてくれても良いんじゃないの?」


「いや・・・その意中の男の子の家をストーキングして特定した様な人が言うセリフじゃないと思いますけど・・・?」




いつものテンションで俺の家を訪ねて来たのはそう・・・雫さんでした。

本当、たった今、あなたの感動的な話をあなたの従姉妹さんと話をしていたのですが・・・

台無しですね・・・本当に・・・




「あぁ!折角来たから入れって?・・・そうよね!流石浩輔君だ♪お邪魔しま~す♡」


「待ちなさいよ!!どうして雫がここへ!?」


「あら?ちょっと色々と手ほどき、いや、お話をしたくて寄らせてもらったのだけれど?」


「いや、その・・・人ん家 (ひとんち)でいきなり火花を散らす展開ってどうなんだろう?と・・・」




険悪なムード・・・と言っても櫻木さんの一方的な感じだけど・・・

一先ず玄関先で泥沼化した三角関係染みた展開に人様が見ると思われてしまうだろう状況だったので無理矢理2人を家の中に入れて話を進める事に・・・




「お茶で良いですか?・・・安物ですが・・・」


「あら!?良い香りね!浩輔君が煎れたのかしら?」


「えぇ!まぁ、香りに関してはお茶の本来の香りでしょうが・・・」


「うん!ありがとう。頂くわ!」




落ち着いた面持ちで俺が煎れたお茶を飲む雫さん・・・

険悪な面持ちでマジマジと雫さんの表情を見つめている櫻木さん・・・




「うん!!美味しい!あなた、きっと良い「主夫」 (しゅふ)になれるわね!どう?家に嫁いでくれないかしら?」


「あ・・・あの?一体何を仰っているのでしょうか?・・・」


「ダメよっ!!浩輔君は渡さないから!!」


「えっ!?・・・櫻木さん?・・・」




恐らくジョーク染みた意味で言ったのだろうと思ったけど櫻木さんは真剣な表情で雫さんの言葉を真っ向から否定した!!




「あらあら!冗談よ!・・・それはそうと、今日からあなたたちの担任を引き継いだ事についても少しお話をしておいた方が良いかもしれないなと思ってね・・・まぁ、賢いあなたたちには特に伝えなくても良いだろうと思ったのだけれど・・・」


「えぇ!私たちの関係よね!?・・・分かっているわよ!!同じクラスに従姉妹がいたり恋人やら知られてしまっては色々と厄介だもんね・・・」


「そう・・・一応話は通しているけれど、あくまで従姉妹である事については学校側も理解出来ている。私を任用してくれたのも琴音の成績が上位に位置していたり特に私の手をかりずとも上手くやって行けるだろうと踏んでいるからよ!ただ、あなたの恋人や私の・・・あの子との関係性が知られてしまっては今後あなたたちも厄介になってしまう・・・」




どうしてだろう?真木谷の事を・・・

雫さんは真剣な表情でその様に話をしていた。

確かにこの関係を学校側に知られてしまっては雫さんだけじゃなく、血縁関係である櫻木さん、それに真木谷にも少なからず反動が押し寄せて来るのは間違い無いだろう。

兎に角今の関係を誰かに知られない様にしないと・・・




「ねぇ?琴音?・・・まだ、私に対しても演技で接して来るの?」


「演技!?・・・櫻木さんが!?・・・雫さんに対しても?・・・」


「えぇ・・・今のあなたには荷が重い話になってしまうから下手に言えないけれど・・・この子・・・」


「どうして?・・・どうして浩輔君が側にいる時にそんな事を言うの?」




櫻木さんは抵抗していた・・・でも少し悲しそうに、いつもの様な強い口調では無かった・・・




「そうか・・・あなたも・・・だったわね?・・・ごめんなさい。本当はここへ越して来ようかと相談しに伺ったのだけれど、今のムードじゃとてもそう言う状況を受け入れてはくれなさそうね・・・分かったわ!私は帰る・・・でも・・・本当に今のままで良いの?浩輔君は記憶を取り戻そうと頑張ってる・・・あなたはそれで・・・良いの?」




何だ何だ!?・・・一体どう言う事なんだよ!?これじゃまるで櫻木さんも何かあったみたいじゃないか!?

気になる一言を告げた後、雫さんは帰って行った。

ただ、玄関先で最後に話をしていた事が俺の頭の中にずっと残ってしまう・・・

送り出す時、櫻木さんは部屋の奥にいた。

俺だけが外へ送り出した時の事だった・・・



「では、私はこれで帰るわね!?・・・浩輔君?色々とあなたにとって大変な事が訪れてしまうかもしれない・・・けれど忘れないで?あの子は・・・琴音は、本心からあなたの事を・・・」


「はい・・・俺の記憶の事ですよね?・・・櫻木さんは本当に俺の事を!?・・・それは伝わって来ます・・・ですが完全に俺の記憶の中にはまだ櫻木さんが甦っていないんです・・・だから真実を全て揃えた後で俺の想いを彼女に伝えようと思います。」


「そう・・・なら問題なさそうね?・・・でも、もし・・・その真実の中に私の存在が少しでもあったら・・・?」


「えっ!?・・・どう言う事ですか!?それは?・・・」


「だから♪今はあなたに告げるべき時じゃないって事!これも時間が来たら分かる事よ!」




その後、眠る時も雫さんの言っていた事が頭から離れず俺はずっとベッドの上で考え込んでしまった。




翌日・・・朝・・・




「おはよう!」


「おはようございます。浩輔様♪」




うん・・・いつもの朝だ・・・櫻木さんもご機嫌・・・?

いや、何か違和感が・・・




「どうかなさいましたか?浩輔様?」


「うん・・・ねぇ?櫻木さん?怒ってる?」


「へっ!?・・・どうしてですか?私は別に・・・」




いや、どうしてだろう?特に怒っているそぶりすら見せない櫻木さんが俺にはどうしても怒っているとしか思えなかった・・・きっと雫さんの事だろうな・・・俺は雫さんの事には触れずに櫻木さんに少し話掛ける事にした。




「櫻木さん?もし何か困ったり嫌な事や辛い事があったら俺に相談して?俺、櫻木さんの為に何かしたいんだ!」


「えっ!?・・・あっ!?・・・はい・・・ありがとうございます・・・」




何を言ってんだろう?と言う面持ちに見えたが俺には何故か物凄く嬉しいと思ってくれている様に見えてしまった。どうしてだろう?10人が10人絶対にそう思わないと断言されてしまう程の演技力だろうけど・・・ん?・・・演技力?・・・そうか!?・・・やっぱり彼女は演技をしているんだ!?・・・じゃぁ、素の彼女は?・・・

いや、恐らく使い分けている!!今の嬉しいと思ってくれていると俺が思った時、恐らくそれは素の彼女なんだろう・・・何だか少しだけ櫻木さんの事が見えて来たかもしれない!!

そう思えてくると何故か俺は凄く気持ちが楽になり、嬉しくもあった・・・




学校にて・・・




「おはよう!真木谷?・・・どうした?グッタリと机に伏せて・・・何かあったのか?」


「・・・・・もう・・・終わりだ・・・」


「何がだよ!?」


「振られたんだ・・・」


「振られたって・・・まさか、雫さんにか!?どうして!?」


「今の関係・・・教師と生徒だろ?それが知られるとまずいからって言ってだな・・・俺はそんなのバレなきゃ良いですよね?って言ったんだよ!そうすると・・・」




(あなたはこれから先が長いし今、ここで退学になったり周囲に冷たい視線を向けられでもしたらそれこそ人生を棒に振るってしまうわ!)




「だってさ・・・だったら「卒業するまで待ってくれませんか?」って言ったんだよ・・・そうすると・・・」




(ごめんなさい・・・その頃に私の気持ちが変わってしまっていると思うから・・・ごめんなさい・・・)




「だって・・・俺、本当に・・・本気で雫さんの事を・・・うぐぅ・・・」


「そうか・・・真木谷も色々と大変なんだな・・・今日は俺のおごりで食べに行こうか!!」


「良いのか!?・・・あぁ・・・思いきり食ってやる!!」


「うん・・・予算内で頼むよ・・・」




でも、昨日来た時は恋人関係の事が知られては困るとか言っていたよな?・・・

一体どう言う理由で真木谷を?・・・

もしかして遊びだったのか?・・・

放課後、真木谷に付き合った俺だったけど、解散後俺は雫さんに連絡を入れようと思った。




「しまった!!連絡先聞いて無かったぞ!?・・・って言うか櫻木さんの連絡先も!?・・・」


「あら?そんなに私の連絡先を知りたいの?言ってくれれば教えてあげるのに♡」


「きゃぁっ!!!」


「何?今の可愛らしい悲鳴♡そんなに可愛い悲鳴聞かされたらもっと可愛がりたくなっちゃうじゃない♡」


「ちょっ!!どこからついて来てたんですか!?・・・」


「まぁまぁ、それはそうと、少しだけお茶しない?聞きたい話もちゃんとするから♪」




仕方無い・・・俺は渋々琴音さんの話を聞きたい為つき合う事にした。




「3度目ですね・・・俺がここに来るのは・・・」


「そうなるわね?その内の2回は私と一緒だ・か・ら♪私の方が多いって事になるわよね?」


「回数の問題じゃないですよね!?・・・って今日は余計な事言うマスターは・・・いないですね!!良かった・・・」


「でも、奥の部屋にしましょうか?」


「いいえ、ここで結構です!!」


「んもう♪折角特性カフェをご馳走しようと思っていたのにぃ♪残念・・・」


「余計な話は良いですから肝心な事だけ話して下さい!!真木谷落ち込んでいたんですよ!?」




俺は少し怒った口調で雫さんに問い詰める様に言った。




「初めてあなたたちと出会ったのってこのショッピングモールだったわよね?」


「えっ!?・・・・あ・・・そうですね・・・俺と真木谷が遊びにここへ来ていて・・・それで正面からフェロモンムンムンに漂わせながら逆ナン状態で俺たちに話をして来たんですよね!?」


「えぇ・・・そうね・・・フェロモンムンムンで・・・って何よ!?人を痴女みたいに・・・まぁ、あれじゃそう捉えられても仕方が無いか・・・」


「まさか、そんな女性が櫻木さんと従姉妹だったなんて思いもよりませんでしたけど!!」


「ふふふ♪・・・確かにそうかもしれないわね・・・」




あれ?・・・笑い方や表情が、櫻木さんと一緒だ!?・・・初めて見た!!これって素の表情だよな?




「どうしたの?ドキッとした様な顔をして?・・・お姉さんに心奪われちゃった?」


「いいえ!決してそう言う事はありませんのでご安心下さい!!」


「あら、それは残念・・・もう少しで堕とせたかと思ったのにぃ~・・・」


「堕ちませんから!!それより・・・」


「ごめんなさい、話が反れちゃったわね?・・・「演技」・・・って言った方が良かったかしら?」


「「演技」!?・・・それって・・・」


「あの子が「演技」どうのって話がそろそろ挙がって来ていた頃だろうと思ったのだけれど・・・」


「はい・・・櫻木さんは・・・」


「あの子ね?女優を演じているの・・・まぁ、あなたが切っ掛けなんだけれど・・・ね?」


「やっぱり、俺の記憶の抜けた部分で何かがあったんですね!?」


「あなたは強い子・・・とてつも無く強い子だから・・・少しだけ話をしても良いかな?」


「俺の過去の事でしょうか?」


「えぇ・・・どう?聞きたい?それとももう少し先まで待っておく?」


「・・・・・・はい・・・・正直言って怖いんです。何がどうなっていたのかって事実を聞かされると・・・でも、俺、待っているだけでもいけない気がするんです!!早く事実を思い出してそれに相応しい答えを出さなければ・・・」


「その表現は、ちょっと間違えているかもしれないわね・・・」


「え!?・・・どうしてですか?」


「先ず、あなたは命の恩人なの・・・それからあなたはその抜けた記憶があった時に既に答えを導き出していた・・・」


「・・・・・俺が?・・・命の恩人で答えを導き出していた?・・・」


「えぇ・・・あなたは恩人・・・だから琴音はあんなに親身になってあなたに尽くそうとしている・・・演技に関してもあなたが良い方向に導いてあげたから・・・と言った方が正しいかしら・・・」


「あの・・・色々と何が何やら・・・」


「そうでしょうね・・・あなたが抜け落ちてしまっている記憶は全て私たちに対する記憶のみだから・・・それ以外は正常な程しっかりと記憶に刻み込まれている。」


「う・・・確かにそれは・・・」


「良いのよ?そんなにかしこまらなくても・・・それはあなた自身の防衛本能だからだと思うから・・・」


「ですが、私「たち」ってもしかして雫さんとも?・・・」


「今日はこの位で終わりましょう?・・・さぁ、軽食だけれど美味しいから召し上がれ?」


「あ・・・はい・・・ありがとうございます・・・」


「それから、真木谷君の件だけれど、これは私の事になってしまうけれど、食べながらで良いから聞いて欲しいの・・・」


「はい・・・一体何が!?」


「恐らく琴音の事だから初日に私が話をした木の下で告白したら・・・と言う話を私がした本当の理由を聞いたいるでしょう?」


「あっ!?・・・はい・・・確かにその日の夜に・・・」


「じゃぁ、話は早いわね・・・あの子は・・・真木谷君は、私が付き合っていた人とそっくりだったの・・・」


「そう・・・だったのですか!?・・・」


「告白をOKしてくれたその人は私と同級生だったわ・・・凄く明るくて本当に真木谷君の様な性格だった・・・告白した時、彼は占いとか信じないしこの木の下で告白されたからOKを出したんじゃない!って言ってたわ・・・でも私は・・・女の子ってそう言うジンクスって大切に思っているのよね・・・OKをくれて嬉しくてやっと幸せになれる・・・念願の想いが叶ったって思ったの・・・彼とは幼馴染でずっと一緒だった。でもある日を境にその家族みたいに思っていた気持ちが恋心に変わっていたの・・・だから残りの高校生活、そして大学も同じ道を目指して幸せになれたってそう思っていたの・・・」


「・・・・・・・・・・」


「彼と私が3回生になる直前、彼は病気で突如入院する事になったわ・・・」


「はい・・・聞きました。櫻木さんから・・・それで・・・それで・・・」


「そう・・・でもあの子はちゃんと最後まで言ったのかしら?」


「それは・・・その・・・」


「彼は不治の病で、3回生になる頃には病院から出られない程になってしまっていたの・・・毎日、時間を取って看病をしに病院に出向いていたのだけれど、日に日にやつれ果てて行く彼の姿を見ていると、あの木のジンクスなんて嘘じゃないっ!!って心底思ったわ・・・」


「確かに・・・それを言っちゃうと・・・俺もきっとそう思っちゃいますね・・・」


「そうしてしばらく時間が過ぎたある日の事、私の元に病院から電話が来たの。彼がもう・・・いつ逝ってしまっても不思議じゃない状態になったと・・・危篤状態に入ったって言う事・・・私は急いで学校にいたから病院へ駆けつけた。すると・・・丁度私が来る5分前に息を引き取った・・・そう告げられて私は彼の側で大泣きをしていたの・・・すると・・・」




(雫・・・?・・・色々とごめんなさい・・・俺はもう・・・旅立たなければいけない・・・雫があの木の下で告白してくれた時・・・・俺・・・凄く嬉しくて・・・あんな事を言ってしまった手前・・・冷静さを装っていた・・・けど・・・本当は嬉し過ぎて・・・あの後帰って泣いたんだ・・・幼馴染で俺も・・・本当は・・・恋心に変わっていた・・・んだ・・・だから・・・やっと・・・幸せになれる・・・あの木のジンクスのおかげで・・・でも・・・これからは雫?・・・俺の事は忘れろとは言わない・・・忘れられるはずがないよな?・・・小さい頃から家族みたいに一緒にいて・・・色々と怒られて・・・それでもはしゃいで・・・一緒に学校へ通って・・・遊んで・・・やっと恋人同士になれた・・・でもな?・・・人間死んでしまったら・・・相手とは何も出来なくなる・・・雫は・・・この先長い・・・随分と早いけど・・・俺は・・・もう・・・ダメだ・・・先に・・・あの世で待ってるからな・・・せめてこの世界では・・・お前が思う様に・・・幸せになる様に・・・俺の事は考えず・・・生きて行って欲しいな・・・それが・・・俺の・・・最後の・・・雫へ対する・・・気持ち・・・だから・・・雫?・・・最後に・・・無理かもしれないけど・・・あの日・・・告白をOKした日の・・・笑顔・・・・を・・・見せて・・・欲しいんだ・・・)




「そう言って彼は最後の微笑みを私に見せてくれたの・・・私も彼が息を取り戻してくれたから驚いてしまって・・・でも、ぜぇぜぇと必死に息を切らしながらも懸命に私に最期の想いを伝えてくれた・・・私はそれに応えなければいけない・・・泣きじゃくりながらも彼に・・・あの日、あの木の下で告白して彼がOKを出してくれた時の気持ちを思い浮かべながら私は・・・精一杯の笑顔を彼に見せようとしたの・・・きっと汚い顔になっちゃっていたでしょうね・・・泣きじゃくりながらだったから・・・」


「・・・・・うぐっ・・・えぐっ・・・」


「あら?・・・泣いてくれているの?・・・まだ彼が死んだとか言っていないのに?」


「えっ!?・・・死んだんじゃ無かったのですか!?」


「えぇ・・・その笑顔を何とか彼に見せる事は出来たわ・・・それを見た瞬間、彼はとても幸せそうな安らかな表情でこの世を去ったの・・・」


「そう・・・でしたか・・・きっと・・・彼氏さんは幸せだったと思います。この世で最高に・・・」


「そうかしら?・・・・そうだったら私も演技をした甲斐があったわね!」


「演技だったんですか!?・・・」


「当たり前でしょ!?・・・この世で一番大切な人が死んでしまう時にどうして幸せな表情になれるのよ!?」


「確かに・・・そうですね・・・」


「私がね?何故あの木の話をしたか・・・私は自身の経験が不幸だとも思っていない・・・あんなにも大切に想ってくれていて、死んだはずの彼が一時的にだったけれど、私に伝える為に息を取り戻してくれた・・・そう思えた・・・だから私たちはこの先もずっと繋がっているの・・・でもね?人間死んでしまうとそこまで・・・一緒に行動が出来ないし話も出来ない・・・だから彼は私は死ぬまでの間なら何をやっても良いだろうって言ってくれたの・・・だからその言葉を大切にしたいの・・・でも・・・死んだ後は、やっぱり彼と一緒にいたいな・・・」


「泣いても・・・いいですよ?・・・その彼氏さんの胸じゃありませんが、今日は・・・俺の胸をかしますよ?」




本能なのだろうか?俺は雫さんが強がっている気がしてならなかった。

本当は思いきり泣いていたかったんじゃないだろうか?

そう思えてならなかった。するとこんなセリフを言ってしまっていた。




「あり・・・がとう・・・本当に・・・うっ・・・うぐっ・・・わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん・・・・・うぐっ・・・えぐっ・・・」




雫さんはきっと今まで耐えて来ただけなのだろう・・・強い女性だと途中まで思っていたけど、本当はいたいけな乙女だったんだろうな・・・割と華奢な彼女の腕はしっかりと俺の両腕をロックする様な形で両腕を回し込み俺を抱き締める様にして顔を俺の胸にうずめながら大泣きしていた。




夜の8時半頃になり、ようやく雫さんも落ち着きを取り戻し店を出た。




「今日は・・・色々とごめんなさい・・・私とした事が・・・」


「いいえ・・・色々と大事なお話も聞けたので俺としても良かったと思います。」


「1つだけ言っていなかった事なんだけれど・・・真木谷君が彼と似ていたって事についてなんだけれど・・・」


「あぁ、真木谷には言わない方が良いですか?」


「ううん・・・それは言ってもらっても構わない・・・けれど・・・彼が本当に似ているって心底思った相手は・・・君の事・・・」


「えっ!?・・・俺がですか!?・・・」


「これは琴音にはナイショよ?」


「えっ!?・・・あっ!?・・・分かり・・・ました・・・」




と言う事は、真木谷と俺って似た所があるって事?

まぁ、類は友を呼ぶと言うことわざもあるくらいだからな・・・

雫さんが俺たちに強烈に絡んで来る理由がなんとなく分かった気がした・・・




「後・・・私の連絡先ね?・・・琴音は・・・直接聞いてあげて?じゃぁ、また明日ね?」


「はい!ありがとうございます。雫さんも気を付けて・・・」




9時前・・・自宅に到着!!すると・・・




「浩輔様!?・・・一体こんな時間までどちらへ!?心配したんですよ!?」




しまった!!櫻木さんに伝えていなかった・・・

色々とあった事を丁寧に櫻木さんに伝えた・・・すると・・・




「流石浩輔様です♡ご友人に対してとてもお優しい振る舞い・・・そして・・・雫にも会ったのですね!?・・・まぁ、今の浩輔様のお話に免じて許して差し上げますわ!!」




許すのは俺じゃなくて雫さんの方?・・・

まぁ、今喋っている櫻木さんの表情は素の表情だろう・・・

俺は安心してその日は過ごせた・・・




「あっ!そうだった、ごめんね、櫻木さん?俺の連絡先伝えてなかったね!これだから・・・」


「はい♡既にご連絡先は把握致しております♡」




えっ!?・・・既に連絡先は把握済み?・・・一体どうやって?




「あの・・・?櫻木さん?つかぬことをお伺いしますが?・・・俺の連絡先はどうやってお知りに?」


「そんな事、浩輔様のご自宅に暮らしておりますもの♪簡単な事ですわ♡」




いや・・・「簡単な事ですわ♡」って言われても?・・・個人情報的なアレがあるのではないでしょうか?




「浩輔様の事なら何でも存じております♡3サイズから体重、身長、好きな食べ物、好きな体位、好きな1人活動のおかずから・・・」


「待って待って待って待って!?・・・・前半は許そう・・・でも何だ!?後半のそれは!?・・・俺そんなの知らない!!知らないからっ!!」




何なんだ!?・・・この間の床の下のDVDの件に関してや今回の件・・・雫さんと言い、櫻木さんと言い、一体この人たちの家系は何なんだ!?もしかして本職は、ストーカーですか?




「もし、浩輔様のおかずが飽きてしまわれましたら私の事を♡」


「あぁ~・・・・・そろそろ眠いから寝ようかな・・・」


「あぁっ!!それでは、今日はご一緒におかずでも読み聞かせて差し上げますわ♪ですのでご一緒に~♡」


「いや、1人にさせて欲しいんだけど?・・・それに読み聞かせるって何を?」




しまった!!思わずツッコミを入れてしまった・・・俺とした事がまだまだだな・・・




「それはも♡ち♡ろ♡ん♪官能小説ですわ♪ほら、浩輔様のご愛用の本棚3段目の右から・・・」


「うわぁぁ!!もう良い・・・それ官能小説じゃないから!!俺官能小説なんて持っていないからっ!!」


「あら?官能小説は私が自宅から持参させて頂いた物ですわ♡」




いや・・・年頃だけど女の子が官能小説って・・・




「あら?官能小説と言っても18歳未満でも読めてしまうものですわ?」


「それ官能小説じゃないよね!?18歳未満でも読めるって!?」


「凄く大人気の女子高生作家が書かれた作品なんです!!私、大ファンで♪」


「女子高生が官能小説とか書いてんの?・・・凄い世の中になったもんだね・・・」


「八鬼人空 食多郎 (やきにく くうたろう)先生なんです♡」


「八鬼人空 食多郎 (やきにく くうたろう)?凄いペンネームだね?」


「ですが、この間の新刊からペンネームを愛瀬 瑠奈 (あいせ るな)と言う一般小説向けのペンネームに変えられて・・・これがまた一般作品が凄く素敵なストーリーでして・・・浩輔様もお暇が御座いましたら是非♪ 」


「う・・・うん・・・また時間があれば・・・じゃぁ、おやすみ・・・」




八鬼人空 食多郎 (やきにく くうたろう)とかきょうび完全に18禁的なネーミングだろ?

趣味の悪い不細工な子なんだろうな?ネーミングセンスがなぁ・・・




「ちなみにこの方ですわ♪」


「嘘やろ?・・・」




これは驚いた!!

雑誌のインタビューページを見せられてとてつも無く美少女だった事を知る!!

まぁ、でも櫻木さん程じゃないよ!




「↑あら♡私の方が・・・だなんて浩輔様♡やっぱり今夜は私と添い寝して頂けませんか?」


「だ~か~ら~!!人の心の中に入って来ないでよっ!!!!!」




こうして今日も無事に終わるのでありました・・・

無事か?・・・本当の本当に無事だったのだろうか?

後日、真木谷へは雫さんの本当の想いを伝えた。雫さんからも色々と理由を説明したみたいで、ようやく真木谷は落ち着きを取り戻した。良かったな!真木谷!嫌われたとか遊びとかで別れようとしていた訳では無かったみたいだ!

でも・・・復縁らしきものはあるのだろうか?
































第6話 雫の過去、そして真実とは?琴音の演技、浩輔と真木谷?驚くべき状況の中それぞれの想いが交差する・・・ Finish

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