ハロウィンの前になるまで

 大したことをするつもりもなかった。

 裁縫は多少できたが、最近の本格派を見ていると、そんなことをしても仕方ないと思うのだ。女子は化粧でゾンビや化け猫になるのだろう。どうしたものか。

「お前、ランタン作る役な」

「役ってなんだよ。割り振りって言えよ」

 黄色いかぼちゃを渡されて、少し引く。

「お前手先器用で、力もあるだろ。立派なジャックを待ってるぜ!!」

「やめろ。ハードルあげんな」

 はぁ、とナイフを手に取った。ガリガリ削り出して、中身を取り出していく。

「かぼちゃプリン食べてぇ」

「それで出来ないかなぁ」

 女子が乗ったが、首を振る。

「これで作ったら不味い」

「えーでも、なんか食べたくなっちゃったなぁ。ねぇー作ろー」

 女子同士で盛り上がり始める。うちの女子は、手作りが得意で嬉しい限りだ。クッキーやら、今言ったプリンやら、思っただけでヨダレが出そうになる。

「どうしたもんかなぁ」

「なぁ、ネタで行く?俺バットマンしようと思ってんだけど」

 アメコミ好きな友人に、あぁと納得した。

「お前がバッドマンなら、俺スーパーマンするわ」

「絶対に合わないからやめてくれ」

「お前もたいがい酷いやつだよな。でもバッドマンいいんじゃね?」

「骸骨の全身タイツとかもありだよなー」

 混ざる友人に、馬鹿言うなと反論する。

 かぼちゃの中身は空になり、目と口をくり抜く暖になった。

「そうだな。俺は鴉にでもなろうかな」

「それ仮装になんの?」

「墓石に止まってそうなやつ」

「凝り性かよ」

 笑われて、俺も冗談だよと笑った。特に思いつかなったから、かぼちゃおばけになることにした。

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