第6話 友達 -1
その日は雨上がりの爽やかな休日だった。
にも関わらずその少女はどんよりとした表情
で、所々に水たまりが散らばる街路地をとぼとぼと歩いていた。
「ああ、どうして私ってこうなのかしら」
少女は自分の不甲斐なさに頭を抱え、その場に座り込む。
「ちょっと買い物を頼まれて外に出ただけなのに、近所の犬に追いかけられて、その間にペンダントを落としてしまって、漸く見つけたと思ったら、今度は鳥さんにペンダントを持っていかれてしまうなんて」
何てついていない日何だろうと少女はしくしくと泣き始めた。
しかし、いつまでもそんな事をしている時間は少女にはなかった。ペンダントに付いている青い石。それと一定距離、離れてしまうと少女は死んでしまうのだ。
少女は疲れてふら付く足で何とか立ち上がり再び走り出そうとするが、十歩も行かないうちにまた倒れてしまう。
「私はもうここまでなのかしら。ごめんなさい、兄さま。何の役にも立たないまま逝く事をどうかお許しください」
などと少女が呟いていると、その背後から
「大丈夫?」
という優しい声が聞こえてきた。
少女が振り返るとそこには金の髪ので色白の綺麗な少女が立っていた。
「貴女、大丈夫?具合でも悪いの?」
金の髪の少女が尋ねてくる。
「もう、死にそ……いえ、大丈夫。ただちょっと探し物を……」
「探し物?」
「ええ。青い小さな石の付いたペンダント何だけど、少し前に鳥さんに持って行かれてしまって」
少女は涙ながらに金の髪の少女に訴える。
「そんなに大切な物なの?」
「ええ、とっても」
すると、金の髪の少女は何かを考えていたが、すぐにいい事を思いついたかのように瞳を輝かせた。
「分かったわ。その探し物私が見つけてあげる。貴女、立てるかしら?」
そういって少女の手を引き歩き出した。
二人が着いたのは、小高い丘の上にある大きな木の下だった。
「ちょっとこれを持っていてくれる?」
金の髪の少女はバケットの入った袋を少女に渡すと、スルスルと華麗に木の上を上っていく。
見た目の可憐さとは裏腹のお転婆な姿に少女 は呆気にとられるしかなかった。
暫くすると金の髪の少女が碧い枝葉の間から顔を出す。
「あったわ。探しているペンダントってこれじゃないかしら?」
金の髪の少女は右手に持った青い石のついたペンダントを少女に見せた。
「そう、それです」
その答えを聞いて金の髪の少女はにっこり笑うと、登った時の様にスルスルと木の枝葉を伝い地面に降りてきた。
そして、手に持っていたペンダントを少女に渡す。
「ありがとうございます。助かりました。でも、どうしてここにあるって分かったんですか?」
「この木に住んでいる鳥は青い物が大好きなの。私もよく取られたわ。ガラス玉とかネックレスとか。」
「貴女はずっとここに住んでいらっしゃるんですか?」
「ええ、もうずっと。生まれた時からよ。でも、探し物がすぐに見つかって良かったわ。もう無くさないようにね」
そういってさっさと去って行こうとする金の髪の少女のスカートの裾を少女は思わず引っ張っていた。
「きゃっ」
下着が見えそうになり、金の髪の少女はスカートを抑え赤面する。
「何をするの?」
「ご、ごめんなさい。あ、あの私リリィって言います。ペンダントを見つけてくれた
お礼に、何か出来ることはありませんか?」
「そんなの別にいいのに……」
「それじゃあ私の気が収まりません」
リリィは戸惑う金の髪の少女に強く言った。
金の髪の少女は暫く何かを考えていたが
「それじゃあ」
と言ってリリィの手を取った。
「私の家は花屋をやっているんだけど、休日はいつも忙しくて手が足りないの。だから、少しでもいいから手伝って貰えると助かるんだけど」
「それで良ければぜひ!」
「よかった。そうだ。自己紹介がまだだったわね。私はユリア。今日一日よろしくね。リリィ」
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