第5話 兄妹 -3
アルベルトは再びラルフを抱えそれをギリギリで避ける。
すると黒い塊はその周辺にあった墓地をひとつ丸呑みしてしまった。
「惜しい。あと少しだったのに」
モニカが指を鳴らし舌打ちする。
「もう、面倒だからさっさとやられてくれないかな。その少年は僕が大切に飼ってあげるからさ」
「それは無理な相談ですね。ところで、君はどうして短期間にあんなに沢山の人間を殺してまで魔力を欲しがるのです?生きていくだけなら必要ないでしょう。それどころか魔力の摂取し過ぎで体調を壊しかねない」
何だか糖分の摂取し過ぎで病気になる、みたいな話だなぁ、とラルフはぼんやり考えた。
「それなら大丈夫。回収した魔力はとある所に貯蓄しているんだよ。ある人の命令でね」
「ある人?」
その話はアルベルトも初耳だったようだ。
「そこまでは教えてあげないよ。いいからさっさと死んじゃいな」
モニカは大きな黒い剣を頭上高く持ち上げる。
「君の様な小物から詳しい話が訊けるとは僕だって思っていませんよ」
アルベルトはそう言うとラルフの体を強く抱きしめた。それから先ほどよりも深いキスをしてラルフの生気を奪う。
そうしてアルベルトは不敵に笑うとその場にへたり込んだラルフを置いて、上空高く舞い上がった。
その刹那、蒼い炎が稲妻の様にモニカに向かって走り、ラルフの頭上でモニカの断末魔が響く。
アルベルトの攻撃でモニカの体はあっという間に灰になってしまった。
それから間もなく。
ラルフとアルベルトは教会の暗い地下室に立ってた。
彼らの目の前には黒く不気味に輝く大きな卵型のオーブが地面から数センチ浮いて聳え立っている。
「これは魔力の塊ですね」
「何だか見てると気持ち悪くなってきた」
「それはそうでしょう。これほどの魔力を前にして人の身で在りながら立っていられるだけでもすごいですよ。しかし、これ以上魔力にあてられるといくら君でも倒れてしまいます。少し離れていなさい。今日は少し無理をさせてしまいましたしね」
そういうとアルベルトはオーブに軽く手を触れる。
「これがモニカの言っていたあの人が求めている物。そして恐らくはシャルロッテの」
ラルフとアルベルトが任務を終えて家に帰るとリリィがキッチンから駆け出してきた。
「お帰りなさい」
と言ってアルベルトとラルフを抱き締める。
その健気な姿にラルフは思わす涙を零してしまった。
「何を泣いてるんです。仕方のない人ですね」
アルベルトの嫌味がいつもより柔らかく感じる。
キッチンの奥からはパンケーキの甘くて優し
い匂いが漂っていた。
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