第4話 協定 -4

「本当にあの教団の調査をあの二人に任せるつもりなのかい?」


ラルフ達が去った屋敷の客間のソファに腰かけ、ライナーはシャルロッテに問う。


「ええ、そのつもりよ。貴方は何か不満でもあるのかしら?」

「別に。ただあのオッドアイの悪魔は確かに強いが、あまりにも不安定。あの謎めいた教団の調査中に何があるか分からないよ。」

「その時は貴方にサポートして貰うわ、ライナー。それにこれは神王のご意思なのよ」

「君がアルベルトに執着していたのそれが関係しているのかい」

「ええ、そうよ。アルベルトを封印する一年ほど前に、アルベルトと言う悪魔を見張っていろと、夢で神王から告げられたの。個人的に彼に興味を持ち始めたのはそれからよ。あの伝説のオッドアイの悪魔が実在するなんて、それまでは思わなかったもの。それにしても、神王が何故アルベルトを見張っていろと仰ったのか、これで漸く理解できたわ」

「と言うと」

「英雄アルバンは貴方も知っているわよね。」

「名前だけなら」

「まあ、聖戦の物語を貴方は読んだことがないの?」

「生憎、本には興味がないんだ」

「まあ、いいわ。オッドアイを持つ人間は英雄アルバンの末裔と言われているの。アルバン自身も見事な金と銀のオッドアイだったそうよ。そしてそんな彼の側にはいつもオッドアイの悪魔が控えていた」

「つまり君は彼らが英雄アルバンと彼に仕えていたオッドアイの悪魔の再来だと思っ

ているわけだ」

「神王のお告げと合わせて考えるとそうとしか考えられないわ。そしてもう一度あの最悪の悪魔と対峙し、封印などという生ぬるい物ではなく、今度こそ完全に消滅させろと、神王は仰っているんだわ。その為には一人でも多くの味方が必要になる。それこそ、人間か悪魔かを問わずにね」

「それをはっきりとアルベルトに伝えればいいのに」

「伝えた所で素直に協力してくれるか分からなかったよ。私は一度失敗しているから」

「君がアルベルトを封印した事かい?」

「ええ。天使として仕方がなかったとはいえ、本当に間が悪かったわ。そしてあの封印で私は彼の信用を完全に失ってしまったのよ」

「君がリリィをせめてもの贖罪として協会に入れた事も、アルベルトは協会がリリィを騙して利用していると誤解している」

「ええ、本当に。頭の痛い事だわ。今回リリィを利用してアルベルトを協会に入れた事で、ますます溝は深まりそうだわ」

「君は色々と不器用なんだよ。僕も器用な方じゃないけどさ」

「よく言われるわ」


そこでシャルロッテは「はぁ」と深いため息を吐いた。


「ところで」


ライナーは姿勢を正してソファに座り直し、シャルロッテをみた。


「君がアルベルトを封印した理由は何なんだい」


すると、シャルロッテは徐に窓際へ移動すると、ガラスに映る自らの瞳を見つめた。その眼にはあの日の光景が焼き付いていて離れない。


「簡単な事だわ」


シャルロッテはポソリと呟いた。


「彼が沢山の人間を惨殺したからよ」

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